中央大陸と港町
第6章です
箒の上から失礼します。ヴァイオレットです。
今日は、私が初めて船に乗った時の話をしましょう。あの時は本当にびっくりしました。巨大な金属の塊が海に浮いているのですから。
あ、そうそう。その港町を訪れた時、ちょっとした再開がありました。皆さんは、私が誰と再開したか予想してくださいね。
その港町の名は、ポートルーネ、です。
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「ん〜、旅先でこんな料理が食べられるなんて夢みたいです〜」
「ヴァイオレットさん、頬が緩みまくってますよー」
こちらヴァイオレット、現在ネールさんが作ってくれた料理に舌鼓を、打っているところです。ネールさんの『アイテムボックス』が有能過ぎて、なんと野外で暖かい料理にありつけています。腰を下ろす椅子と机も用意できて最高です。
普段は木に背中を預けながら、干し肉やパン、果実類をかじっていましたからね。まさか旅の途中でスープが食べられる日が来るなんて……
「あ、ヴァイオレットさんがまた感動で胸を押さえてます。こんなに喜んでもらえて、ネールは嬉しいです」
「コホン、そろそろ落ち着きましょうか。ごめんなさい、取り乱してしまって」
「いえいえ、むしろこんな一面もあるんだ、ってほっこりしました」
「そのコメントは逆に恥ずかしいのですが……」
この感動は、きっといつまでも忘れないのでしょう。そんなことを思いながら、再び足を進めます。
「そういえば次の目的地はどこなんですか?」
「えーっと、港町として栄えてきた、ポートルーネって場所です。ここは海に面している街で、中央大陸と定期的に行き来する船? が通っているそうですよ」
「人を乗せた金属の塊が海に浮いてる、って奴ですか? 正直信じられないですねー」
「私も同感です。どんな魔法使いでも、巨大な鉄塊を海に浮かせるのなんて難しいんじゃないでしょうか」
ここで、この世界全体に関するお話をしましょう。
この世界は、幾つかの大陸に分かれていて、それぞれに特徴があります。
まず一つ、大陸たちの中央に位置する中央大陸。そこは人間以外の種族は少なく、他の大陸に比べ圧倒的な技術力を有しているようで、銃、という誰でも扱える万能武器なんかもあるそうです。船とやらも中央大陸の技術が発端です。
次に、今私たちが旅をしている西大陸。最も面積が広く、主に人間やエルフ、獣人といった、人間に近い種族が多く暮らしています。街ごとに何かしらの特産品があるところがほとんどで、街ごとの個性が出やすいとも言えますね。
そしてここから反対側の東大陸。面積は最小で、和風と呼ばれる独自文化が栄えているそうです。他では見れない美しい景色も多いそうなので、一人の旅人として、一度が訪れてみたいところですね。
今度は北大陸。いわゆる魔族が住まうところですね。奴らは私が迫害される原因を作ったので、種族諸共許すつもりはありません。火山や砂漠といった暑い地域が大半を占め、ピラミッドなる変わった建造物もあるそうですが、あまり気は乗りません。
最後に南大陸。こちらは年中冬のような気候で、私が昔訪れたスティアのような気候の都市がほとんどだそうです。ペンギンという、可愛さを大絶賛されている生き物もいるそう。南大陸を訪れた時には絶対に見に行きます。また、特殊な自然環境が作った景色を理由した観光業が盛んらしいので、私も一度行ってみたいです。
……とまぁこんな感じです。私たちが向かっているポートルーネでは中央大陸への船が出ており、それに乗ってみようという寸法です。
「じゃ、そろそろ出発しましょう」
「はーい!」
前置きが長くなってしまいましたし、急いでポートルーネへ出発です。
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「わぁ、あれが海ですか。あれが全部塩水だというのは本当なんでしょうか」
「潮風が気持ちいいですねー。ヴァイオレットさん、あれがポートルーネですか?」
「そのようです。入り口はあっちみたいです。行きましょう」
私たちは、海の上までせりだした丘の上からあたりを見回していました。丘を下った先に街が見えたので、そちらへ向かいます。
丘には手すり付きの階段も用意されていて、この丘は絶景スポットとして扱われているのかも、と思いました。おかげさまで快適に登り降りできます。
丘を下り、門のところでいつも通り入国検査を受け、無事ポートルーネに足を踏み入れました。この度にアイラをトカゲの使い魔と説明するのが心苦しいです。もっと魔法が上達すれば、完全にアイラの姿を隠すことも出来るのですけれど、力不足を感じます。
「上から見た時も思いましたが、街全体の建物が真っ白ですね」
「本当だ! 壁一面真っ白です! 清潔感あっていいですね。汚れは目立ちそうですけど」
「後で調べてみましょうか。その前に、船が行き来している時間をチェックしに行きますよ」
「了解です!」
私たちは港の方へ向かいます。街並みを抜けると、広く整備された港が見えてきました。
「どこに行ったら船が来る時間を聞けるでしょうか?」
「あ、ヴァイオレットさん見てみて、たくさん鳥が飛んでます!」
「あれはカモメですね。海の上を群れになって飛ぶという白い鳥です」
「へぇー、ほんとにいっぱいいますねー」
「危ないですから、柵から身を乗り出さないでくださいねー!」
好奇心のままに走り回るネールさん。彼女から目を離さないようにしつつ、辺りを見渡してみます。すると、奥に『定期船案内』の文字が見えました。あそこなら聞けそうです。
「ネールさーん! そろそろ行きますよー!」
「はーい!」
何だか保護者にでもなった気分です。なったことはありませんが。『定期船案内』の看板の建物に入り、受付の人に船の来るタイミングを訪ねます。
「すみません。次に船が来るのっていつ頃ですか?」
「次のでしたら……あ、ちょうど三日後に戻ってきますね。中央大陸へ向かわれるんですか?」
「はい。何か必要なものってあるんですか?」
「そうですね。入船のチケットが必要です。隣の窓口で販売を行なっておりますので、そちらでお願いします」
「分かりました」
なかなかのお値段のチケットを、三日後の予定で2人分購入しました。これもネールさんに持っていてもらい、建物を出ました。
さて、これからしばらくは空き時間ですね。ここでしか食べられないようなお魚の料理があるそうなので、楽しみです。
街を歩いていると、誰か男性の方に声を掛けられました。
「もしかしてヴァイオレットさん?」
「あなたは……!」
振り返ると、彼の頭の上の赤いベレー帽が潮風に揺れていました。




