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王都の依頼

 箒の上から失礼します、ヴァイオレットです。


 今日は、私が、虐げられていた少女と出会った時の話をしましょう。


 あの時の出来事は、思い出すだけで腹が立ちます。あのクズはいつまでも許す気はありません。


 あの日、私は王都マリシャスを訪れていました。


---------


「城門から既に規模が違いますね……」


 今日、私が足を運んでいるのは王都マリシャスです。王都と言うだけあって、今まで訪れた街とは、レベルが違いました。城門のサイズなんて横は2倍近くあります。栄えている国なので、出入りする人もかなり多いのでしょう。


 人がずらりと並んだ入国検査。その長蛇の列の最後尾に付いて、列が捌けるのを待つのでした。


「ふぅー、やっと入れました」


 長い待ち時間の末、ようやく入ることが出来ました。入国検査ですが、アイラは魔法で翼を隠して、使役しているトカゲの魔物だと言っておきました。案外緩いもので、あっさり通りましたね。


 さて、私が王都に来たのには理由があります。


「お金、稼がないとですね……」


 そう、金銭問題です。私の旅はそんなにお金を使っていると言う訳でも無いのですが、予算が目減りしてきたので、心配になって冒険者ギルドか何かで依頼を受けようと思いました。


 王都は貴族らの住まう屋敷が多く、貴族から出された依頼は報酬が高いものが多く、一時的な稼ぎを出すには打ってつけなのです。


 と、言うわけで王都の冒険者ギルドにやってきました。支部ではなく本部なのでやはり規模が違いました。とにかく大きいです。中の人の数も多いです。正直外に出たいです。


「なんでこんなに人が多いんですかね……」


 あ、良く考えてみると今はまだ昼前。依頼を探しにくる冒険者が多い時間帯です。こんな時間に行こうとした私が愚かでした。


 外で早めの昼食を取り、人が捌けるのを待ちました。さっきから待ってばかりな気がします……今度は席に座れているだけマシですが。


 昼食のハムサンドイッチも食べ終えたところで、ちょうど人が減って来たのでもう一度冒険者ギルドに入りました。


「う〜ん、そりゃ美味しい依頼は取られてますよねぇ……」


 皆さんが依頼を持って行った後なので、割りのいい物は無さそうです。もしくは高ランク依頼かのどちらかですね。ですが一応残っている依頼に目を通しておきましょう。


「AランクBランク……そもそも受けられません。薬草採集……常設なので労力の割に報酬が合ってません。下水道の清掃……そもそも無理ですし、アイラを連れて行けませんし預けられません。歓楽街の婦女……やる訳無いでしょうが! 貴族の屋敷の一時使用人……お? 結構いいですね」


 私は一枚の依頼書を手に取りました。内容は、ある貴族の屋敷で、一時使用人として働くと言うものです。主な仕事は屋敷の清掃など。条件は30歳未満の女性……? そして私が惹かれたのはここ、給料です。3日働くだけで金貨10枚、多少の増減あり。金貨10枚あれば、1、2ヶ月分くらいは保ちますよ!? しかも住み込みで食事付き。受けない理由がありましょうか。


「すみません、この依頼を受けたいのですが━━」


 ……この時私は気づくべきでした。労力に対する報酬の異常さと、依頼書を見せた時の受付嬢の苦い顔の意味に。


-------


「受付嬢さんが言っていたのはここですね」


 私は教えて貰った屋敷にやって来ました。門番の方に依頼書を見せればいい、との事でしたが……


「こんにちは。私はヴァイオレット、旅人です。この依頼を受けに来たのですが……」

「分かりました。確認を致しますので、少々お待ちください」


 門番を務めているのは、槍を携えた女性の方でした。依頼書の条件にも女性のみとありましたし、きっとここの使用人さんはほとんど女性なのでしょう。私としてはそちらの方が気楽でいいですが。


「確認が取れました。どうぞお入りください」


 失礼な話なんですが、門番さんの笑みがどこか張り付けたような笑顔に見えてなりませんでした。彼女に案内され、屋敷の玄関を潜ります。そこで待っていたのは、メイド服を着た女性でした。


「こんにちは、旅人さん。メイド長を務めております、カミラと申します。お仕事に関するお話をしますので、こちらへ」

「カミラさん、よろしくお願いします」


 今度はメイド長のカミラさんに導かれ、一つの部屋に入りました。内装を見る限り、おそらく客間でしょう。


「こちらへお掛けください」

「失礼します」

「ではまず、あなたはここ、バゲージ家に一時使用人の依頼を受けてきた、間違い無いですね?」

「はい、間違いありません」

「了解しました。改めまして、ようこそバゲージ家へ。これから職務に関する説明をしますね」


 それから、私はカミラさんに説明を受けました。


 まず、服装。カミラさんや他の使用人の方々と同じ、メイド服を着て行うそう。メイド服なんて初めて着るので、少しワクワクしています。 ……でも、スカートの丈が短めなのだけが気になりますね。


 次に、仕事。私の一番最初のお仕事は、この部屋の前の廊下の床、窓の清掃です。道具は貸し出してくれるそうなので、そこは問題なさそうです。


 そして、期間。今日、このタイミングから一時使用人として扱われ、今日を含めた3日間で終了。肝心の給料も最終日にまとめて支払われるとのことでした。


 屋敷は広いので骨が折れそうですが、その分やりがいもありそうなので良しとします。


 説明を終え、道具を受け取り、メイド服に着替えて早速廊下の掃除に取り掛かります。ちなみに、荷物は借りている空き部屋に運びました。


 さぁて、一人でやりくりしていた頃の掃除スキルをフル活用させていきましょう!

あまりに給料がぶっ飛んでいる理由……なんだか怖いですね。

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