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今更普通の異世界転生  作者: 玉庭ひとり
プロローグ
7/185

001 世界の創り方

『あらすじ』と『はじめに』を読んで頂けると幸いです。

***


「ねぇトラミ。私のことも、手伝ってもらっていいよね?」

 談話室と思しき部屋で、ソファーに腰掛けた真紅の髪と眼のグラマラスな女性に、静かにしていれば正統派清楚系そのものの黒髪少女が声をかける。

「あら、ガイナ。やっぱり"そう"するの?」

 トラミは軽い調子でガイナに答える。

「そうなの。私もいろいろ考えたんだけど、流行ってるのは理由があるはずだし、うまくいくと思うんだ。それに、いつまでも考えるだけでそのまま消えちゃったら、元も子もないじゃない」

「そう?あんまり良い言われようではなかったと思ったけど・・・」

「そんなの、言わせとけばいいのよ!私は私で頑張るんだからっ!」


 両手で透明な球を抱えるガイナは満面の笑みを浮かべる。

 トラミはそんな彼女の顔をじっと見つめ、フゥ、と一息吐くと立ち上がった。

「いいわ。前々から私以外にも、あちこち相談してたことは知ってるもの。それに、決心してるみたいだしね」

 そう言うとトラミは部屋にある扉の一つへ向かい、ガイナはそれとは反対の扉へと向かった。


 嬉しそうな顔で歩くガイナを、いくつかの視線が追っていた。

「ガイナ、大丈夫?」

 扉の手前でガイナに声をかけたのは、銀髪銀眼の色白な幼女だった。容姿とは不釣り合いな落ち着きを備えていて、何気ない仕草すら絵になりそうな存在だ。

「ありがとうペアス。大丈夫。無茶はしないよ」

 ガイナは、それならいいんだけど、と呟くペアスにパチっと華麗にウィンクをして、談話室を後にした。



 ガイナが訪れた部屋は輪郭のはっきりしないドーム状の白い空間で、中央には水とも霧ともつかない流体が球状に浮かんでいる。中央へ進むと、今通ってきたばかりの扉もおぼろげになっていく。

 ガイナは浮かぶ流体をじっと見つめ、何度も思い描いた新しい世界をより詳細に反芻する。


 しばらくすると、ガイナの球体と同じくらいの大きさの球体を持ったトラミが現れた。

「待たせたね」

 ガイナはトラミに向けて気合と緊張の混じる表情で頷くと、持って来た球体を流体の中へとそっと浮かべた。そして球体に向け、ありったけのイメージと思いを注ぎ込んでいく。

 球体はガイナの思いに呼応するようにその透明を様々な色で埋め、次第に明確な形を見せ始めた。

 最終的には一つの星が姿を現し、一度形が定まってしまうと急速に表面の様相が推移し、やがてガイナのイメージそのままとなった時、静かに動きを止めた。


「・・・できた」

 ガイナは満足気に呟いたが、まだ終わりではないようで緊張を保っている。

「トラミ、お願い」

 ガイナに呼ばれ、トラミも持ってきた球体を流体に浮かべる。トラミの球体にはすでに一つの星が宿っている。

「私が調整するけど、選定はあなたのイメージに委ねてるからね」

「わかってる」

 ガイナは目を閉じ、再び強く念じる。

 トラミは流体に向け両腕を伸ばし、何やら力を込める。

 ・・・直後、ガイナは自分の心に響く声を聞き、心で念じることで声の主といくつかのやりとりをした。


 トラミはガイナが念じ終えるのを待って、暫くしてから一つ頷いて腕を下ろした。

「・・・終わったようね。無事に」

「ありがとう、トラミ!」

 ガイナは顔を綻ばせトラミに抱きつき、できたばかりの"世界"をそっと流体から取り出した。

「見て、トラミ!今更普通の異世界転生だなんて、みんなが言ってるだけよ!きっとうまくいくわ!」

 喜び一色のガイナに、トラミも自然と微笑んでしまう。

「そうね、私もそう願ってるわ」

 身体中で嬉しさを振りまくガイナの頭を撫で、トラミは残ったもう一つの"世界"を取り出す。

「じゃ、私はこれを返すからね」

「うん、ありがとう!トラミ!」

 そう言うと、ガイナは軽くスキップ混じりに部屋を後にしたのだった。

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