第12話『バーバレラ強襲!』
魔王城に転送された俺たちが見たのは、巨大な石板に映し出されるあわただしく動き回るどこかの野営地のような場所の映像だった。
「これは……?」
「刀夜殿、質問は明確に頼む。お主が聞きたいのはこの精神投影石のことか? それとも映像の方か?」
魔王様は少しだけいら立った声を上げた。
「映像の方で。状況はどうなっているんだ?」
前者についてはテレヴィジョン(おそらくテレパス・ヴィジョンの略だろう)という言葉から察しが付いたので、今の戦況を聞くことにする。
攻め込んできた招喚者が誰なのか、見極めなければならない。
「あれはピングー山脈のふもとに設置した野営地じゃ。敵は1人、偵察隊が包囲したところ一瞬で吹き飛ばされたらしい。わかっているのはそれだけじゃ。物見の兵が動揺していて念波が乱れておる」
確かに、石板に映る映像は暗く、にじんだ水彩画のように不鮮明だ。時折、人の叫び声のようなものが頭の中に響いてくる。
おそらく、この精神投影石は物見の兵が見聞きしたことを離れた場所に伝える魔道具なのだろう。物見の兵は複数いるらしく、石板には4つほどの画像が同時に映し出されている。
さきほどの超巨大船といい、この世界を15世紀くらいの中世ヨーロッパだと思い込んでいると思わぬギャップを見ることになりそうだ。
やがて、映像と音声が少しずつ鮮明になってきた。
『最終警告、黙殺されました! これより侵入者の排除を開始します!』
『氷結部隊、詠唱開始! 敵の足を止める!』
冷気属性と相性の良い魚人や水妖らしき種族の兵が、一斉に手を前にかざす。魔法陣が展開され、その中心に向かって空気中の水分が凝集していく。
『氷結弾撃て!』
無数の氷の弾丸が森林の一画に向けて発射された。氷塊はみるみる積み上がり、やがて棘だらけの氷山となって一帯を氷漬けにした。
『全魔術部隊、詠唱を開始しろ!』
指揮官の命令が終わらないうちに、氷山にビシリと大きなヒビが入った。
『詠唱急げ――』
氷山が爆発した。一瞬、映像が乱れるがさすが物見の兵は精神を鍛えられているらしく、すぐに映像が回復した。
もうもうと立ち込める水蒸気。その向こうから、人影がうっすらと浮かび上がる。
『撃てェー!』
絶叫と共に、無数の炎の弾が、稲妻が、闇の球が、一斉に人影に襲い掛かった。
爆煙が水蒸気にとって代わり、画像を暗い灰色に染め上げた。
『降雨!』
何人かの魔術師が天に向かって手をかざす。手の平に魔法陣が展開されると、空が積乱雲に覆われて土砂降りの雨が降り注いだ。
爆煙が鎮まる。その向こうから姿を現したのは、白いレオタードを着た桃色の髪の女性。
「バーバレラ姫!」
その手には、身の丈ほどの長さがある金色の王笏が握られている。よく見ると、姫の身体は半球状の薄い光の膜のようなものに守られており、豪雨の中でもまったく濡れていない。
「盟主自ら宣言を破りに来たというのか!?」
魔王様が驚きと怒りの混じった声を上げた。
だが、俺は気付いていた。俺たちがある致命的な誤解をしていたことに。
バーバレラ姫は、ひと月に1つ国を焼き尽くすと言った。逆に言えば、1か月の間どこにも攻め込まないとは一言も言っていないのである。
『敵、無傷です!』
『小鬼隊! 犬人隊! 雷属性を付与して突撃せよ!』
20人ほどの魔族たちが、稲妻を帯びた短剣や手斧を持ってバーバレラ姫に殺到する。
『サイクロン』
バーバレラ姫の凛とした声。
『うわあああああ――!』
兵士たちが吹き飛ばされる。それは、姫の身体を中心に駆け巡る突風だった。
それでも勇猛な何人かは風の壁を突破し、風に翻弄される仲間の身体を潜り抜けて姫のもとへたどり着く。彼らは一斉に四方八方から飛び掛かり、姫の身体を組み伏せた――かに思えた。
さらなる暴風が兵士たちを木の葉のように吹き飛ばした。
風はさらに膨張し、頭上の雨雲をも搔き消した。
『ゴアアアアア!』
凄まじい雄叫びを上げ、今度は大柄な鬼や、ゴリラやサイのような姿の獣人たちが棍棒や斧を持って襲い掛かる。それらの武器にも炎や雷の術が付与されている。
『プロテクション』
だが、振り下ろされる鈍器はことごとく姫の周りに三角錐の形に張り巡らされた魔力障壁によって阻まれた。さらに――
『ブラスト』
爆発魔法。だが、爆発したのは姫の足元だった。
「何!?」
姫は周囲にバリアを展開しながら、文字通り爆発的な推進力で敵陣に突進したのである。物理攻撃を100パーセント弾く障壁を攻撃に転用すればどうなるか。それは、数値上考えられる最強の打撃武器に他ならない。
『ゴアアアアア!』
響きは同じでも、今度は悲鳴だった。歩くだけで大地を揺るがす超重量級の重装兵たちが、小娘の体当たりに紙切れのように吹き飛ばされていくのである。
「ダメだ! あの戦力では姫には勝てない!」
俺は魔王様を見た。そこには、呆然と石板を見上げ、顔面を蒼白にした魔王様の姿があった。
「信じられぬ……」
見れば、ドクター・フロストも他の魔王軍の人たちも、一様に言葉を失っていた。
「一切の術式展開を行わずに事象を曲げるじゃと? あれは、あれではまるで、魔法ではないか!」
この世界に魔術はあっても魔法はない。魔法は伝説上で語られる存在である。
「どうなのだ刀夜殿! あ奴は本当に魔法を使うのか! あ奴は本当に魔導士なのか!」
魔王様がものすごい剣幕で俺に迫る。
「確かに、バーバレラ姫の世界では、あれは魔法と呼ばれている。でも、それがこの世界でいう魔法かどうかはわからない。クインゼルとはまったく違う系統で発展した魔術にすぎない可能性もある」
「だが、だがあれが本当に魔法だったら……妾は……クインゼルは……」
まだ短い付き合いとはいえ、魔王様がこれほど動揺するのを見るのは初めてだ。
「ふむ。百聞は一見に如かずです。私が打って出るとしましょう」
助け舟を出したのはドクター・フロストだった。
「あれが魔法であれ、我々とは別なアプローチで開発された魔術であれ、非常に興味深い」
「わかった。ではドクター、行ってくれ」
「お待ちください」
そこへ、紫色の炎に包まれた髑髏と腕だけの男、五将軍の1人エスカトロジーが現れた。
「戦力の逐次投入は愚の骨頂。ここにいる五将軍全員で向かうべきでしょう」
魔王様は一瞬考えるが、すぐに決断した。
「よし。ドクター・フロスト、エスカトロジー、ウルスラに命じる! 速やかにバーバレラを撃退せよ!」
「「「御意、魔王様!」」」
「刀夜殿もすまぬが、ウルスラたちに同行してくれ。お主が未知数と言っておったバーバレラの実力を見極め、可能なら彼らを援護してほしい」
「わかった」
足手まといにならないようにしなければ。
「あと、ウルスラと刀夜殿に言っておく」
魔王様は俺たち2人を交互に見つめて言った。
「我が魔王軍のモットーじゃ。『死ぬ前に逃げよ。捕まる前に逃げよ』」
軍隊らしからぬ標語ではあるが、彼らの歴史を考えればそれは決して命を惜しむ軟弱な発想から来ていないことがわかる。
それはむしろ、いかに敵の嘲笑を買おうと、恥にまみれようと、命ある限り戦いを止めないという悲壮な決意でもあった。
「これを持って行け。転送の術が付与された魔法石じゃ」
「……わかった」
こうして俺たちは、またドクターの口の中へ飛び込んで行くこととなった。
◇ ◇ ◇
「ふむ。これが、魔術に関しては他国より一日の長があるという魔王軍ですか。いささか期待外れですわね」
1人残らず地に伏した国境防衛部隊を尻目に、バーバレラ姫は嘆息していた。
「これでは、わたくしたちが元の世界に帰る前に、全土が焦土になってしまうのではないでしょうか?」
「あまりこの世界を舐めるな!」
そこへ、はるか上空からウルスラの黒剣が振り下ろされた。
「プロテクション」
剣と魔力障壁が干渉し合い、激しい火花が散る。
「お初にお目にかかります、ウルスラ様。バーバレラ・カイン・バニシュウィンドと申します」
「魔王様配下、五将軍が一、ウルスラ・斬屠だ! お会いできて光栄だよ! この破壊者ァ!」
ウルスラが、姫の展開した障壁を蹴って飛び退る。そこへ黒紫色をした炎の渦が突進してきた。
「キエエエエーイ! 我は魔王様配下の五将軍! エスカトロジー! 我が斬撃に耐えられるかァ!」
炎の渦に見えたのは、髑髏を中心に超高速で回転する腕の骨だった。その両手には分離した大鋏が握られている。魔力を帯びた高速の連撃に、さすがのバーバレラ姫の魔力障壁にもヒビが入っていった。
「くっ!」
障壁がガラスのように砕け散った。距離を取ろうとするバーバレラ姫だが、エスカトロジーは逃さない。斬撃を纏う黒紫の火柱が蛇のように追いすがる。
「ヒョオオオオーウ! 私は速さを極めし者! この軽量化された身体から逃げることは不可能!」
あの髑髏と腕だけの姿は軽量化の結果だったのか。
バーバレラ姫は金色の王笏を繰って斬撃をしのぐが、さすがにさばき切れるものではなかった。姫のレオタードが切り裂かれ、肌が露わになっていく。
「おおレディ、私としたことが申し訳ない! すぐに仕留めて差し上げましょう!」
エスカトロジーの回転が勢いを増した。ものすごいゴリ押しだが、案外このまま押し切れるか?
「アクセラレイト」
姫の身体が、うっすら赤く光った。
まずい! やっぱり時空魔法も習得していたか!
「今のは加速の魔法だ! 押し返して来るぞ!」
「何!? ぬ、ヌォォォォーォ!?」
姫が目にも止まらぬ速さで杖を振るい始めた。思った通り、エスカトロジーが押されていく。
「バカな! この私が! 速さだけでなく、力でも押し負けるとは!?」
うかつだった。あれは『殴り白魔』だ。
彼女の装備している金の王笏は『ゴールデンロッド』。ゲーム内においては店売りの武器だが、開発時のデータ入力ミスで物理攻撃力が異常に高くなってしまったいわくつきの品だ。
今のバーバレラの職業はおそらく白魔導士。そこに黒魔導師と時空魔導士のアビリティを組み合わせているのだろう。
クリスタルフォークロアⅤにおける白魔導士は後衛の魔法職ではあるが、実は防御力や体力は意外にもそこそこ高い。そこにゴールデンロッドというバグ武器を持たせることで攻めてよし守ってよしの万能職、『殴り白魔』が完成するのである。
「では、魔術合戦と参りましょう」
なぜか地面から低い声が聞こえてきた。
と、地面にいくつもの魔法陣が展開された。
「五将軍の1人、ドクター・フロスト。地中から失礼いたします」
よく見ると、大地をサメの背びれが高速で移動している。地中を泳いでいるのか、あのサメ博士。
「茨縛り」
魔法陣から茨のツタが伸びてバーバレラ姫に絡みつく。
「しまっ――」
バーバレラ姫は加速された素早さで避けようとするが、いかんせん術式の展開範囲が広すぎた。
バーバレラ姫はあっという間に茨に手足を絡めとられ、宙づりにされていた。あちこちが敗れたレオタード姿で。
「お寒いでしょうが、ご辛抱を。今です、エスカトロジー! ウルスラ!」
「ヒョオオオオーイ!」
「はぁぁぁぁぁッ!」
さすがの姫も、3対1では分が悪かったか――
「ジョブチェンジ」
落ち着きはらったバーバレラ姫の声。
その時、俺の背中を氷塊が滑り下りたような感覚が襲った。
「まずい! 離れろ!」
まさか、戦闘中にジョブチェンジできるのか? いや、戦闘中とそれ以外の切り替えがあるのはあくまでゲームシステムの話だ。今の世界においては、戦闘中か否かの判定をするモノはどこにもいない。
彼女を捕らえていた茨が燃え上がった。バーバレラ姫の身体が白く発光し、灼熱する。
「「「ッ!?」」」
身の危険を感じた将軍たちが一斉に距離を取る。ドクター・フロストも地中から跳び出していた。
「刀夜さん! 何だあれは!?」
バーバレラ姫の姿が変化していた。
額から頬を守る鮮やかな青色の面具、ひじから先を守る手甲、太ももから足先を守るハイヒールの具足。肩アーマーの色も青色に変わり、マントはコウモリの翼を思わせる切れ込みが入っている。
レオタードも、他の防具と同じ青色に変わった。
「……最悪だ。竜戦士だ」
バランスブレイカーとまで言われた最強の職業。とはいえ、ゲーム内における能力値はよく言えば隙のないオールラウンド型であり悪く言えば器用貧乏。
だが、竜戦士の真価はレベルをマスターまで上げた時に獲得するアビリティにある。
「GAAAAAAAAAAッ!」
バーバレラ姫が吼えた。大地を揺るがし、ピングー山脈に住む鳥たちが一斉に逃げ出す竜の咆吼である。
竜変化。
一時的に全能力値を2倍に引き上げる壊れ性能。加えて強力な特殊攻撃『ドラゴンブレス』が使用可能になる、人によっては封印プレイをするほどの性能をもつアビリティだ。
「しかし! 防具が付いた分身体が重くなっているはず! 今一度速さで勝負を!」
「ダメだ! あんたは近づいたら絶対に――」
だが、すでにエスカトロジーはバーバレラ姫に肉薄していた。
バーバレラ姫が口を開ける。喉の奥から冷たさすら感じさせる真っ白な光が漏れる。
バーバレラ姫の口から、眩い光線が発射された。
「何ですとォォォーーーーーッ!?」
光線はエスカトロジーを直撃し天高く吹き飛ばす。彼の身体が灰と化し、消えていく様子が残酷なほどよく見えた。
「エスカトロジィィィィッ!」
バーバレラ姫のドラゴンブレスは聖属性。この世界における属性の法則はわからないが、不死人であるエスカトロジーには特効だった可能性が高い。
「うわあああああああっ!」
ウルスラが白の竜殺聖剣で切りかかる。だが、憎しみに囚われた大ぶりな一撃はスウェイバックであっさりかわされ、代わりに強烈なトウキックがウルスラの腹にめり込んだ。
「あ……お……ッ……」
思わず地に膝をついてしまうウルスラ。視点が定まらないのは、受けたダメージの大きさゆえか、それとも……。
「いかん! 撤退しましょう!」
「ああ……。ドクターは刀夜さんを連れて逃げてくれ。魔王様を頼む……」
「何を言っているんだ! 『死ぬ前に逃げよ、捕まる前に逃げよ』だろ?」
「いやだ……」
「ウルスラ!」
「ここで逃げたら、僕の心が死ぬ……。わかっちゃったんだ。僕と、あの人の違いが……」
ウルスラはバーバレラ姫を見上げた。
「僕は、両親の期待に応えられなくて、僕より強い人があっちにはいっぱいいて、僕がいなくなっても、誰も悲しまない……。僕は、何も背負っていないんだ……僕自身すら背負っていない……空っぽなんだ……」
剣を杖にし、震える膝を押さえながら彼女は立ち上がる。
「でも、この世界に来て、エルルル様が僕を必要としてくれたんだ。何もない僕に、『仕えよ』って言ってくれたんだ。だから、ここで応えられなかったら、逃げてしまったら、僕の心は死ぬ!」
ウルスラは剣を構えた。でも、両膝ががくがくと震えている。腰が引けて、まるで見ていられない構えだった。
「ウルスラ、それは」
彼女の肩を掴もうとした時、有無を言わさぬ力で襟首を掴まれ、引き戻された。
「ドクター、何を――」
直後、バーバレラ姫の掌底がウルスラのみぞおちに叩き込まれていた。
「黙って聞いていれば。ウルスラ様、貴女はとてもイライラしますわ」
さらに回し蹴りが炸裂し、ウルスラを吹き飛ばす。
「もうやめろバーバレラ! 君が元の世界で重たい使命を背負っているのはよくわかってる。理不尽な理由で勝手に呼び出されて、元の世界に帰る望みも薄くて、焦っているのもわかる! でも、今君のしていることは単なる八つ当たりじゃないか! 君はいったい何がしたいんだ!」
「ああ……」
バーバレラ姫は今思い出したとばかりに、人差し指を顎に添えて少し呆けたように空を見上げた。
「そうでした。わたくしはこの地の魔術師を見極めに来たのでしたわ。でも今は……」
青いハイヒールが、倒れ伏すウルスラの顔を踏みにじった。
「八つ当たりの方が楽しいですわね」
ダメだ。彼女はもうダメだ。彼女の心は、宿命の重さ、守るべき命の重さに押しつぶされて、この世界への憎しみに塗りつぶされて、完全に闇に堕ちてしまっていたのだ。
もう、俺にはわからない。
彼女は、いや、彼女たちは本当に、この世界をただ焼き尽くしたいだけなのかもしれない。
バーバレラ姫はぐったりとしたウルスラの髪を掴み、強引に立ち上がらせた。
「チャンスを差し上げます。戦って死ぬか、逃げて死ぬか、選びなさい」
「逃げるぞウルスラ! 君はただ怖がっているだけだ。今の君は魔王様と両親の期待がごっちゃになってる! 死ぬくらいなら逃げろと言ってくれた魔王様を信じろウルスラ!」
だが、ウルスラは……
「い、いやだぁ……」
と、泣きながら首を振った。何なんだ。何がウルスラをここまでさせるんだ?
「ふふ、その無謀で無意味な覚悟、確かに承りました。ではじっくり嬲り殺して差し上げます」
バーバレラ姫の、否、バーバレラの口の奥が冷たく輝いた。五将軍エスカトロジーを消し去った滅殺の光だ。
「まずは、そのきれいな指をいただきますわ」
「やめろォ!」
――叫んだのは、俺ではなかった。
「「「なッ……」」」
驚愕の声を上げたのは3人。俺と、ウルスラと、ドクター。
「なぜ、ここに?」
彼女は答えず、ウルスラとバーバレラの間に入ると、渾身の力でバーバレラを突き飛ばした。
「あらあら」
わざとらしくよろけるバーバレラ。
「お会いできて光栄ですわ、魔王様」
「わ、妾は、ちっとも光栄ではない! お、お、お前など、大嫌いじゃ! ウルスラをいじめるお前は大嫌いじゃ!」
大きな角と大きな帽子を頭に乗せ、大仰なガウンを羽織った小さな少女は足を踏ん張ってウルスラを庇うように立つ。
「わ、わ、妾が……こ、この、クインゼル自治領の魔王、エルルル・ディアブララが相手じゃ! バーバレラ・カイン・バニシュウィンド!」




