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────真昼────

作者: シアン




 ────最初から死んでいる人間に恋をすれば、待っているのは永遠か、消失か────



 そして別れの言葉は幸せになってください。未練が消えればこの世からのしがらみが途切れる。それは当たり前のこと……。




 私は身体が弱くて、生前は白い病室が自分の世界でした。


 ほんの数ヶ月通えた学校で出来た親友。その女の子はお見舞いに何度も来てくれて、それだけが自分の中の唯一の楽しみ。


 もう元気にならない身体。そんなこと、ずっと付き合ってきた自分が一番よく解っている。


 でも親友の彼女は毎日のように来てくれました。



 ────嬉しくて、嬉しくて。




 でもそれに比例して身体が治ることなんてなかった。


 話の内容は恋愛の話が多かったと思います。

 それからいつしかして彼女に彼氏が出来て、私にも出来るよって言ってくれました。もう外になんか出られない私に。それでも彼女は絶対に良くなるって、そう何度も言ってくれた。


 私の病状もちゃんと理解してくれているのに、それでもです。


 約束をしました。いつか私に理想の彼氏が出来て、ダブルデートをしようって。だけど、それは叶うことのない願いで私は息を引き取った────



 それが私を学校に縛り付けていた未練。


 私は幽霊で、誰にも見つけられない。見えないんだから当たり前だけどね。


 何年経ったのか、自分だけが学校の中で年をとらずに存在し続けていました。最初は、自分がなんでこんな風に幽霊になっているんだろうって思ったけど、そのうち気づいたんだ。それは、叶えることが出来ない願いごとが在るからなんだって。だって私の姿は誰からも見えないんだから。


 寂しいけれどそれは当たり前、だからいつの日かこんな日常にも慣れていきました。


 そして私がいつもみたいに足を抱えて廊下に座っていると、声をかけてくれる先輩がいました。一応私の方が年齢的には年上ですけど、身体は幽霊になったときに止まっているので私の方が年下なんです。少し言い訳がましいですけどそうなんです。


 それで私が自分のことを幽霊だって言うと、先輩は驚いて逃げちゃいました。


 正直ショックが隠せませんでした。


 せっかくお話が出来る人と巡り会えたのに……。


 でも先輩はまた私に会いに来てくれました。しかも私の未練探しに付き合ってくれる、とっても良い人だったんです。


 一緒に色々な所に行きました。主に回ったのは学校の中でしたけど、とっても楽しかったです。


 手を繋いだりお話をすると、周りの世界はいつもと同じなのに全然様変わりしちゃうんですから。


 それから私たちは恋をしたんです。


 一緒にいることが当たり前で楽しくて、ただその結果が辛いものになるって解っていながら、私の心は満たされていきました。


 いつしか心が重なってキスをしたんです。


 ぽわぽわぁってして、胸が締め付けられて嬉しくて。そしたら私の姿がちゃんと映らなくなってしまったみたいでした。


 そう──私の未練は恋愛──だから、こうして繋がりが深くなっていけば薄れていくのは当たり前。それは私の気持ちと反対。ずっと一緒にいたいのに、消えていく身体。


 やめてほしい。でも私は幽霊で、どうすることもできなくて……。


 それでも先輩は後悔してないって、優しい言葉をかけてくれたんです。私、嬉しくてもっと先輩とつながりたいって思いました。そしたら先輩も応えてくれて、私たちは繋がりました。


 ただ、先輩ももう気づいていたんだと思います。私の未練が、先輩と恋をして消えていくことだって。だから繋がったあと、先輩には私の姿が完全に見えなくなっちゃいました。ただ声だけは届くみたいで、少しほっとしましたけど。


 正直な話、嫌だった。先輩もきっと同じ気持ちでいてくれて、ただ私たちは一緒にいることは出来なくて──


 だから私は最後のお願いをしました。


 キスをしてくださいって。


 きっとそうすれば私はこの世から未練がなくなる。だってそうしないといつまでたっても先輩を苦しめてしまうから。

 一番大好きで、大切な人を。

 最後のお願いを言うとき私は泣いていました。でも先輩には見えません。それはちょっとありがたかったかもしれません。こんな姿でお別れはしたくなかったから。

そして先輩に口づけをしました。

すると最後の奇跡ですかね。先輩が私の姿を見れたんです。

 嬉しさ反面、恥ずかしさ反面です。

それから、私は最後の言葉を口にしました。


 


 ────幸せになってくださいって────


 


 …………おわり。

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