表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/45

第1話 『完遂者』と呼ばれた男


 俺はアクセル、冒険者だ。


 これでも『完遂者』の二つ名を持っていて、拠点にしている街は勿論、近隣の町や村にもその名は知れ渡っている。

 自分で言うのも何だがそれなりに有名人だ。


 何で俺が『完遂者』って呼ばれているかだって?

 それは受けた依頼は確実に熟し、どんな絶望的な状況からも生還するからだ。

 これ以上有能な冒険者もいないだろう?


 ただ、俺は依頼遂行にあたって他の冒険者と組む事は殆ど無い。

 所謂ソロというやつだ。


 何故一人で冒険するか……それは俺には他人に知られたくない秘密があった。


 俺は死なない、いや死ねない身体の持ち主だからだ。


 正確には死ぬことは死ぬ……しかし時間経過で完全な状態で生き返るのだ。

 例え身体を細切れにされようとも、業火に焼かれようとも、巨大モンスターに踏み潰されようともだ。

 

 しかしいつからそんな不死身能力が俺に備わっていたのかは分からない。

 幼い時に転んで派手に擦りむいた膝の傷跡は残っていて、その傷だけは何度死んで蘇っても消える事は無い。

 その事から生まれながらにそうだった訳ではないらしい。

 俺自身が覚えていないだけで何かしらの切っ掛けがあって不死身になったのかもしれない。

 

 まあそう言った訳で、俺はこの身体の特性を生かしどんな依頼も完遂して来たって訳。

 不死のお陰である程度の名声と、暮らすに困らないだけの富は得て来た訳だが、そろそろ限界を迎えている。

 不死だからと言って身体に死ぬ程のダメージを受けた時は当たり前だが死ぬ程痛いし精神的にもキツイ。

 あとこれが一番問題なのだが、一所(ひとところ)に住んでいるとその若いまま変わらない容姿によって余計な噂が立つという事だ。

 俺はこう見えて外見は二十代後半だが、三百年以上生きているのだ。

 

 そろそろ拠点を変えるべきか……もしくはこのまま冒険者を引退するのもありかもしれない。

 山奥でひっそりと暮らせば今の貯えならかなりの年月を暮らす事が出来る。

 そもそも不死なので物を食べなくても死なないんだよな、空腹感は感じるが。


 いや、待てよ……いっその事自分の身体の秘密を解き明かす旅に出てみるのも悪くない。

 もし普通の人間に戻れるのなら……死ねる身体に戻れるのなら……。


 よし、思い立ったが吉日。

 俺はコートを纏い、冒険用の装備や食料が詰まったリュックを背負い、愛用の剣と持てるだけの金をポケットにねじ込み住み慣れた家を飛び出した。


 はっきりとした当てがある訳では無いがまずは西を目指す。

 聞くところによると西の地方には『賢人(さかびと)』と呼ばれるあらゆる知識を修めた人物が住まう場所があるらしい。

 その『賢人』なら俺を普通の人間に戻す方法を知っているかもしれない。

 ただ誰もその『賢人』を見たことも会ったこともないし、その場所に辿り着いた者もいない……だから存在自体が怪しまれてはいる。

 だが他の奴に見つけられなくても俺には見つけられるかもしれない。

 

 何せ俺は『完遂者』、不死身の冒険家……時間だけは際限無くあるのだから……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ