…お姉ちゃん…
アトラくん、お姉ちゃんは年齢不詳ですよ。
心
本名
コマイ
未だにみんなには内緒で、本名は不思議なので言っていない。
本名の意味は、昔のCOREのニックネームが《故意舞》だったからだ。
「遅いじゃない!?」
怒られた。
次は、暴力、暴力、暴力。
あぁ、ボクは、我慢する必要なんてなかったんだ。
後ろでボクを振り返らずに走って買い物に行く姉を見た。
-逃したか。
決まってる。これからやることは。
次の瞬間には、あいつらは、ボクと反対の位置。
「ねえ。」
ボクは、言った。
「これからは、ボクのばん。」
冷たく言い放つ。そうだ。
これからは、ボクのばんだ。
「な、なんの」
ぐしゃ。
殴った。
「ねえ。ボクさ、つらかったんだよ。ずーっとなぐられてけられて。のろわれてるなんてしってる。だから。」
だから。
今まで味わった苦しみ。
痛み。
憎さ。
怒り。
そして
自由があれば
感情があったかもしれない。
感情があれば
あの子は死ななかったかもしれない。
「あのこがしんだのは」
全部
「おまえらのせいだ」
強い憎しみ。負の感情。全部全部。全部全部全部。ぶつける。お前らが喋れなくなるまで。動けなくなるまで。死ぬまでずっと。
「ボクさ、これだけいたかったんだよ?やったのは。ボクのかんじょうをけしたのは。おまえらだろ?」
「な、な…」
?誰だ。まあいい、家に残っていたやつらは死んだらしいから。次はお前だな。
「わ、私…」
「おかえり、おねえさま。つぎはあなたのばんだよ。」
死ね。
「っ!!」
避けない。
「まっ…」
青い顔。ボクには、今構っている暇なんかない。
早く、ボクの味わったぶんを、お返ししてあげないと。
「しね」
「やだ!!」
強いな。いいや、まだまだか。
「っ!」
回り込む気か?無駄だ。
「…は?」
正面突破する気か?
「!」
不意をつかれた。
「しまっ…」
逆転しないと、まえみたいに暴力が始まる!嫌だ!ボクは…自由になりた…
「…?」
なんともない。痛くもない。ただ、目の前が暗くて、暖かい。それだけだ。
「…ごめんね…!」
「…おい、おまえ、いまなにがおこっている。」
…答えない。ただ、背中に回された手が、力を入れる。
気づいた。
ボクは、今、抱きしめられている。
あれだけ欲しかったはずの物が。
今、なんとも思わない。
「おまえ、なにをする。はなせ。」
「っ…嫌だ!!」
「なぜだ。」
「嫌だったら嫌なの!」
わからない。
今までボクを苦しめてきた奴が、今は、嫌いなはずのボクを抱きしめている。
「なんでだ?」
「何でじゃないよ。ごめんね。こんなダメなお姉ちゃんで…守れなくてごめんね…!」
守る?何を言っている。
「おまえは、ボクのてきだろ。」
「違う!!!」
じゃあ、なんなんだ?
味方か?暴力娘のくせに。
待てよ?
ボク、こいつに殴られたり蹴られたりされた記憶がない。
いつも後ろを向いていて。
時には外に走って。
振り向かず、ボクを見ず。
…あれ?
おかしい。
今では、泣きそうだ。
「うっ…」
あぁ、こいつはもう泣いてたのか。
「お姉ちゃん。」
「え…」
「ここお姉ちゃん。」
ここ。
心。
ボクの
ボクの
唯一の
味方。
今は、
信用できる。
「ボクと、ここからでよう。」
「…!」
「こんなろうや、いやだよ。お姉ちゃんは、つらくない?こんなとこ。ぼろぼろで、血のあとしかないよ。」
お姉ちゃんが言ってた、漢字。少し、わかった気がした。
「ねえ、行こう?ボクと。逃げよう?」
こんな牢獄から。
「…う、ん!!」
安心できる。
唯一のお姉ちゃん。
唯一の、ボクが認めた《家族》。
大切。
そう思った。
「じゃあ、準備、しよう」
途切れ途切れ。疲れたんだ。
「うん…!」
お姉ちゃん、ごめんね。
「そういえば、あいつら死んだけど、悲しくないのか?」
「あぁ!それね。いや、正直そんな長くないけど、1ヶ月くらいかな。テストの点数が少し悪かったってだけで、暴力を振るわれたから、むしろスッキリした。」
…ふっ。
「あ、そうだ。」
「ん?」
「あなた、名前をあげなきゃね!」
名前?
特にいらないけど…
「いつまでも[あなた]じゃ、ね?」
少し赤い。
「熱でも、ある?」
「っ、あ、あるかな!別の熱があるかもなー!」
?なんの話かわからん。
「あ…アトラ!」
「アトラ?」
「そ、アトラ!あなたの名前!」
ボクが。
アトラ?
「…ありがとう。」
初めてのお礼。
嬉しいからの。
憎しみじゃない。
綺麗なお礼。
「うん!」
「ボク、どんなイメージ?」
「え”」
とりあえず、なんとなく言ってみた。
少し気になるな。
「う、うーん。」
うん。大した返事来ないと思うけど。
「声だけ聴いたら女の子みたい。顔も女の子っぽいし…可愛いかな!」
…
「…」
あの、ボク男なんですが。
「…!わわ、私は?私はどんなイメージ?」
「優しくて素直なお姉ちゃん」
「ふぇ」
なんだよ。マジで言ってんの。
照れを知らないから、呆れ顔でちらりと見る。
「え、へへへ!ありがとう!」
ふーん、笑うと普通に可愛い。
「普通に可愛い。」
「にぇ!?」
真っ赤になるお姉ちゃん。なにしてんの。
「準備できたら行くよ。」
感情が出てくる。
早くお姉ちゃんと出たい、この世界から。
牢獄から。
「あ、う、うん!」
。・:+°。・:+°
「あ、ははっ」
今はあの時のボクとは比べ物にならないなぁ…
校庭で、お姉ちゃんはどこにいるのか考えてみる。
「…い…か…」
?いか?
あ…遠くに誰かいる。
女の子か…
行ってみよ、困ってるかもしれないし。
「あの…」
見て驚いた。だって…
「ここお姉ちゃん?」
「な、なんで私の名前っ!」
「あ、ごめんなさい、ボクはアトラです。」
「え。私のしってるアトラこんな礼儀正しくない。」
酷い!
「でも、声高いのと可愛いのは似てるなぁ。頬の黒いのとか。」
ああ、悪魔の…
「ねえ、じゃあアトラ?羽も耳も尻尾も出せるってこと?」
うっ。は、恥ずかしいけど。
「できます。」
「じゃあ出してごらんなさい。」
う…来ると思った、疑い深いお姉ちゃんだもんなぁ…
「は、はい…」
ばさっ、と翼。まってマジで恥ずかしい。
「あ、あ…」
固形。
「アトラあああ!?」
「ひ!?」
び、びっくりした…
「アトラ?本物なの?」
「は、い。」
「うそ…」
固まっていた顔が、だんだん笑顔に変わっていく。
きーん…
「あ、学校…」
終わりのチャイムだ
「アトラあああっ!!」
ちょ!
真っ赤になって泣きそうな目で抱きついてくる。
「だれかにいじめられてない?怪我してない!?」
「だ、大丈夫だって…」
困惑。
「お友達いる!?」
「どこのお母さんだよ…」
いるけど。
「電話ってできる?」
学校です。
♪立ち入り禁止-オフボーカル-♪
あ…電話。
「何この音!?」
「着信音。」
音は気に入ったのかな?
「はい、もしも」
『学校どうした!』
「ご、ごめんなさい…」
黒さん…!
『とりあえず、今どこだよ。』
ため息つかないで…
「こ、校庭です…」
『帰りだから行くわ。今。』
「い、今、ですか…?」
『問題あるか?』
「驚くことはありますけどね」
『知らん』
「わかりました」
あっさり認めてしまった後に電話終了。
「だ、大丈夫?なんかごめんなさいとか言ってたけど…」
「大丈夫だって…」
同じセリフ言った気がする。
「おーい!」
「アトラぁ!」
ティアス!黒さん!
「こっちですよー!」
「知ってる!」
わかってます。
「あの子達は?」
「友達です!…多分…」
ティアス達からどう思われてるかなんてわかんないし。
「その子は?」
「え、えっと…」
{いつも通りお姉ちゃんじゃダメなの?}
お姉ちゃんから、脳内メッセージ。
{今じゃ、見た目的にボクが上だからな。}
昔の口調で返す。
「…私、アトラの兄弟です。」
はっ!その手があったか!
「アトラ、お前兄弟いたんだな。」
「神様あああ年齢まちがえてますよおおお」
なぜわかった。
「アトラ、この女の子は何族?」
「いきなりだな…」
この口調、黒さんと区別つかない。
「アトラ、お前そんな口調にもなるんだな。」
「昔は黒さんみたいな口調でしたから…」
性格はサイコでしたけどね。
「新鮮」
「アトラは魚じゃないのよ!」
お姉ちゃん?違うよ、昔とは違うんだよ。
「正直行っていいですか…?」
頷いてくれてありがとうごめんなさい。
「お姉ちゃん…です。心お姉ちゃん。」
…
黙らないで。
お願いします泣きそう。
「明らかに…おかしいだろ…」
「神様のミス?」
「わかんないわ。新米神だったもの。その可能性は大ね。」
見た目小学生ですからね。




