上を向いて歩こう5
空き地で家をのぞき込んでいた怪しげな男と話をしていたヨーコさん。
商店街で私のことを嗅ぎまわる怪しい男の話。
いったい何がおこっているのだろう。
少しして戻ってきたヨーコさんに、さっきの人どうなりました?と聞くと逃げられた、と誤魔化された。
エミさんは、危ないから追いかけちゃだめよ、ってきつく怒られていたけどヨーコさんなにか考え込んでしまった。結局少しして明日急ぎの仕事が入ったからってそのまま帰っていった。
知り合いっぽかったけど、見間違いだったのかなぁ。
それとも、ヨーコさんにこっぴどく怒られた変質者だったんだろうか。
ヨーコさんと入れ違いでマサキさんがやってきた。
「ユキちゃん、大丈夫!!」
バイクで急いで来てくれたみたい。一応、怪しい男が逃げて行ってそれをヨーコさんが追いかけたけど逃げられたらしいと伝えた。
「商店街の方で、ユキちゃんのこと嗅ぎまわる怪しい奴がいたって聞いた?」
マサキさんにその話は聞いたんだけど心当たりは一人しかいないことを伝える。
地元の友達から、元カレが炊きつけられて私に復縁迫ろうとしているって話があるから、可能性は高いかもしれない。さすがにあれから時間経ってるから退院しているだろうし。
「念のためきちんと警戒しておいてね、暑くなると頭の沸いた奴が増えるから」
マサキさんは心配そうに忠告してくれた。
いつも心配してくれる。本当にありがたい。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
翌日、新聞を取りに玄関に出ると、ポストに新聞と一緒に白い封筒が入っていた。
なんだろう。
封筒を開けると、中から新聞の切り抜き文字でメッセージが書いてあった。
【マ さ き に 近づ く な あい ツ の 過去は 真っ黒 ダ】
?????
なんか、すごくベタな脅迫文だ。なんかドラマの影響だろうか。
すごく気持ち悪い。というか、新聞の切り抜きでメッセージを出すネチっっこさがキモイ。
もしかしたら悪戯かもしれないし、大げさにしてエミさんに心配かけちゃってもいけないから
そっとその手紙をポケットにしまう。
あとでマサキさんに相談したらいいかと軽く考えていた。
夕方、夕刊を取ろうとして、また同じ白い封筒が入っているのを見つけた。
【警告 : まさ キ に 近づ クト 不幸に ナる ぞ 】
その文面に薄気味悪さを感じた。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
夕方、タカシさんとマサキさんに変な手紙が入っていたことをメールすると、現物を商店街に持ってきて、って指示された。
エミさんに、買い忘れがあるからちょっと出てくるね、って声をかけて商店街に向かった。
家を出てしばらくして、なんか誰かが後を付けてきているような気配がする。
思い過ごしかもしれないけど、私が止まると足音も止まるし私が動くとまた何かがついて来ようとするのがわかる。
振り向いても何もいない。
商店街にもう少しでつくけど、まだ住宅街の中で、生け垣とか塀に囲まれた大きい家の周辺だから人通りもまばら。
やばい。背中に冷汗が流れる。
思わず走る。
すると、後ろから付いてきていた人も走って追いかけてくる。
マジやばい。
逃げなくちゃ!!!そこの角を曲がったら商店街の休憩スペースが見える筈。
井戸端会議の誰かが残っていたら通報してくれるかも。
しかし、角が見えた瞬間に捕まった。
「!!!!!!」
口をタオルみたいなものでふさがれ、羽交い絞めにされてすぐそばの空き家になっている家の庭に連れ込まれそうになる。もがくけど、男の力はすさまじく、叫ぼうとする声もくぐもって誰にも届かない、そう思ったとき。
鈍い音と私を巻き込む衝撃で、いきなり男の力が抜けて、覆いかぶさってきた。
不審者は完全に意識を失っている。
「あんた、危機管理なってないわね!馬鹿じゃないの?」
そこには、不審者の着ていたジャケットを脱がせて、ベルトを抜き縛り上げるヨーコさんがいた。
不審者を縛り上げ、警察とタカシさんマサキさんに連絡をヨーコさんがしていた横で、私はみっともないけど、気持ち悪さと恐ろしさで歯がかみ合わなくて震えていた。
商店街から近かったからだろう、マサキさんとタカシさんと商店街の面々で手の空いている人が駆け付けてくれた。
「ユキちゃん、大丈夫だった?!」
マサキさんが真っ青になっている私をそっと抱き留めてくれる。
商店街から一緒に来た人たちが、不審者の顔を見てハッとしていた。
それは、私の事を聞きまわっていた男だったんだそうだ。
 




