星に願いを4
商店街の七夕企画の応募箱には様々なお願いが寄せられていた。
いや、普通にご意見箱みたいな箱を設置してもいいようなレベルの改善のお願いがあったりする。
商店街の休憩所のベンチに屋根を付けてくださいとか
(この達筆具合からして井戸端会議のメンバーの誰かだな)
商店街広場に地球温暖化対策としてゴーヤカーテンを植えませうとか。
タバコの喫煙所を増やしてほしい、こっちは税金を余分に払ってるんだとか。
うん。確かにそれもお願いだけど、どっちかって言ったら要望だよね。皆さん、善処してくださいって感じ。
切実なのが、彼女が欲しい彼女が欲しい彼女が欲しいと書かれているもの。
いや、星は流れていませんから。
もちろん中にはイベント向きの物もある。
ページのめくれる本のパンがほしいとか、おじいちゃんの写真で展覧会をやってほしいとか。
一日でいいからお姫様になりたいっていう女の子のお願いと、デザイナー志望の姉の作品でファッションショーをやってほしいというの、素敵だなって思って次のお願い短冊を見ると、両親が結婚式を挙げられますようにっていうたどたどしい字で書かれた短冊に目が引かれた。
なんか、エミさんのリハビリの時に出会った女の子が脳裏をかすめる。あの子のお願いかな。
じっと食い入るように短冊を見ていた私に、マサキさんが声をかけてきた。
「ユキちゃん、どうしたの?」
私の手元をのぞき込み、ああ、これ企画としてはいいんじゃない?と感想を漏らす。
他の人たちも寄ってきて、ああ、結婚式なら広場で何とかできるよねとか、他のお願いとコラボして、このデザイナー志望の人にウェディングドレスを作ってもらって材料費は商店街もちどうだろうってはなしが膨らみ始める。いいなぁ、確かに。
結婚式っていう事だからチャペルみたいなセットもあった方がいいのかな?
夢をかなえ大賞はこの親の結婚式のお願いにして、銀賞はデザイナーのお姉さんって事で決まる。
あとは、おじいさんの写真展を空き店舗をギャラリーにして提供するってことで大まか決まる。
とにかくこのお願いを応募した人たちに連絡をすることになった。
デザイナー志望のお姉さんは、卒業制作でウエディングドレスを作ることになっていたので渡りに船だったそうでさっそくその親御さんと連絡を取ってデザインイメージを膨らませたいってことだった。
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そのお願いの主のところに連絡を入れると、意外な事実が分かった。
どうも依頼主の少女ミキちゃんは、自分のせいで親が結婚式を出来なかったと思い込んでいるのだそうだ。
というのも、駆け落ちしてきた両親が、子供が出来たという事でそれまで貯めていた結婚資金をそのまま生活費に崩してしまい、生まれてきたミキちゃんが先天性の病気で治療費に莫大な費用が掛かったと知ってしまったからだった。酔った勢いか父親が、自分たちが結婚式が出来なかったのは、ミキちゃんの病気の治療に使っちゃったからなんだよね、と言ってはいけない冗談を言ってしまったのだそうだ。
母親は、父親には鉄拳制裁をしミキちゃんをなだめたが、次第にミキちゃんは口数の少ない子になってしまったという。父親もその時のことは反省しているが、ミキちゃんの笑顔はなかなか戻らなかったという。
そらそうだろう。なんだ、その父親は!!私の知り合いだったらぶっ飛ばしたいくらい。
今回のプロジェクトは、ぜひとも成功させなければ、と決意を新たにした。
ミキちゃんのお母さんに結婚式を商店街で挙げるという企画を説明すると、やはり女性だ。
感極まって電話口で泣いていた。いろいろと決めないといけないこともあるので一度商店街に来てくれるように話をして約束を取り付けた。




