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ヘタレ女の料理帖  作者: 津崎鈴子
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波の行先4

テルのお見舞いに病院についてきてくれたエミさんが、突如現れたあいちゃんに刺された。

私とエミさんの折り重なって倒れた床はエミさんの血が流れ出していた。


もともと色が白いエミさんの、血の気の失せていく顔、冷たくなっていく身体に叫ぶ。


ストレッチャーで運ばれているエミさん、私は叫ぶことしか出来なくてすぐに駆け付けた看護師さん達に

落ち着いて、と何度も声をかけられる。


エミさんは、大量失血ですぐさま集中治療室に運ばれたが、手術の許可をする家族の署名が必要と言われ、

お母さんに電話して呼び寄せた。


お母さんも驚きつつもすぐさまおばあちゃんとお父さんを連れて駆け付けてきてくれて、手術の手続きをしてくれていた。


その間私は、というと警備員から知らせを受けたという警察官に事情聴取をハルカちゃんと受けていて、

どうもあいちゃんと言ってることが真っ向対立しているらしい。


あいちゃんは、自分と恋人の間に割って入った浮気相手の私が原因で妊娠しているのに捨てられた、恋人の妹がなついているのを見てカッとなり思わず持っていた果物ナイフで刺したが悪気はない。というか相手の女が悪いとがなり立てていた。それなのに変なばあさんが割り込んできて間違って刺してしまった。あの女に正義の鉄槌をお見舞いしたいだけだと主張しているそうだ。ハルカちゃんと私が今までのいきさつを説明し、署の方に来て下さいと連れて行かれそうになったが、刺されたエミさんが心配で少し待ってほしいとお願いした。事情が事情なので落ち着いてから署の方に来て下さいと言われ警察官は引き上げていった。


先に連行されたあいちゃんの所持品の中から凶器である果物ナイフの入っていたであろうパッケージと病院の近くのコンビニのレシートが出てきて逮捕され、今警察で取り調べをされているという。


さすが警察官、事情聴取の場数が違った。あいちゃんの嘘は面白いようにボロボロ剥がれたそうだ。



☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・


 エミさんは、緊急オペの真っ最中で、予断を許さない状況らしい。

手術室の薄暗いベンチで、おばあちゃんとお父さんお母さんにこうなったいきさつを説明した。


悔しそうに壁を叩くお父さん、両手で顔を覆うおばあちゃん、ハンカチを握りながら祈りを込めるお母さん。静かに時は流れていく。


神様どうか、エミさんを連れて行かないで。私、エミさんになんの恩返しもしていないんだから。

私についてきたばっかりにこんなことになってしまった。


すると、私のスマホに着信音が響いた。あ。マナーモードにするの忘れていた。


そっとその場を離れて通話OKの談話室に移動すると、マサキさんからの着信だった。


{ユキちゃん、無事?!}


マサキさんの心配そうな声に思わず涙ぐむ。

「私は大丈夫。でもエミさんが、私をかばって刺されて、今手術中なの」


{今どこの病院?}


その質問に、手短に今いる病院の名前と何階かを説明する。


{判った。すぐに行く。待ってて}


電話は直ぐに切れた。


マサキさんの声に安堵した。すぐに来てくれるのかもしれない。

続けざまに電話が鳴る。アヤだった。


{ニュースで見た!エミさん、大丈夫?}

今いる病院を伝えるとすぐに行く!と電話は切れた。


エミさんの元気な声と顔が頭から離れない。


私がエミさんとここに来なければエミさんはこんなことにはならなかったのに。


後悔だけが私の心を占める。



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