パニッシュ・パーティ5
エミさん、何もかもわかってて外堀埋めようとか思ってないよね?
今まさに、それを実感している。気のせい?過敏すぎるのか?私。
玄関先で、ユウキの為に注文してくれた刺身の盛り合わせを届けてくれたマサキさんを
ユウキにアピールしまくってる。真面目でいい男だの、この人は思いやりのある人だの
確かにそうなんだけど、なんか、踏み出せないまま外野からやいやい言われるのはちょっと
抵抗があるんだよね。 マサキさんはすごくいい人だし、今回すごく助けられてるけども、
マサキさんの気持ちが見えないわけだからうかつに動いて関係を壊したくないんだけどなぁ。
そんな私の思惑とは別のところで、弟ユウキとマサキさんの会話は続く。
ワクワクしている感じのエミさんはいつにもまして笑顔が輝いている。
「そうだ、マサキ君も一緒に食べてく?」
エミさん、顔、にやけすぎデス。
「あ、あの、店の片づけとかあるんで今日は遠慮しときます」
「ねーちゃん、いいの?」
ユウキが振ってくる。いいも何も私に決定権はないでしょうよ
「仕事があるのに引き留めたら悪いでしょ、ユウキ、子供じゃないんだから」
ここはひとつ姉の威厳を見せて黙らせよう。
「素直になった方がいいんじゃね?ねーちゃん昔から意地はって大事なモノ無くすタイプじゃん」
うっ。痛いところを。クソ、覚えとけよユウキ。
「いや、今日のところはこれで。じゃ、またね、ユキちゃん」
苦笑いのマサキさんが帰っていった。
バイクの音が遠ざかっていく。
良かったの~?っていうユウキの視線が痛い。
その夜の晩餐は、ユウキとエミさんのノリノリの会話で終始笑いに包まれた。
明日の講義は早いから、と終電間際にユウキは帰っていった。
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久々にアヤから連絡があった。すごく真剣な声だったので何かあったのかと心配になる。
電話では話せない内容の話があるので、商店街の外れの喫茶店で待ち合わせしたいってことだった。
そして、待ち合わせの場所に行くと深刻そうなアヤとクミちゃんが待っていた。
「どうかしたの?」
声をかけると、ふたりは顔を見合わせて中々言い出せないでいるようだ。
しばらく沈黙が流れたが、アヤが決心がついたのか口を開いた。
「ユキ、驚かないで聞いてね」
そのひと言を絞り出し、また沈黙してしまう。
「なに?そう言われるとすごく不安になるんだけど」
「…………落ち着いて聞いてね。お姉から聞いた話なんだけど」
そして、すごく事態が深刻な状態にはなっていってることを知らされた。
アヤメさんが、昔の友人関係を駆使してあいちゃんの過去を調べ上げた。
それはそれは壮絶な、というか昔から人のものに目がない病的な性格だったらしく
友達の彼氏を奪っては捨てていくということを繰り返し女性の友人関係は皆無。
それで学校ではいじめられそうだけど、そこはイジメた子達の好きな男を奪って精神的ダメージを
与えて沈めていったという。そして、就職して、同期の仲良しの彼氏を奪い、同期からも
カットアウト。そして、孤独な状態に救いの手を差し伸べた私の
婚約寸前の彼氏テルを寝取った。それと並行して、取引先の男性社員にも触手を伸ばして
とうとう既婚者に手を出して裁判沙汰になっている。
お腹の子の父親候補はテルだけではなくその不倫相手とその他大勢。
母親であるあいちゃんでさえ父親が判らないくらいのただれた生活をしていたという。
不倫相手は逃げ回り、奥さんからの内容証明の書類で初めて口裏を合わせようと探し回っているって
話が飛び込んできて、アヤメさんがあいちゃんにDNA鑑定を要求したらしい。
始めは、テルのお母さんは女として母としてそういう事はって渋っていたんだけど、内容証明が届いちゃったから、仕方なく鑑定を了承したんだって。最後まであいちゃんは抵抗したらしいけど結局嫌がるのは怪しいからじゃないのか?っていうテルの冷めたひと言で仕方なく受けることを了承したそうだ。
そして、一般の会社で出生前に出来る鑑定を依頼したら。
テルとお腹の子供の親子関係は認められないっていう結果が出て、テルが倒れたらしい。
ユキ、許してくれ、会いたい、ってうわごとで呼んでいるんだそうだ。
あいちゃんもそれっきりテル一家のところに姿を現さないどころか、誰も姿を見かけないって。
衝撃的な話過ぎて頭が回らなかった。




