パニッシュ・パーティ3
衝撃の光景が脳裏から離れない。
いつも笑い合ってたテルの家族が、冷え切った眼差しに生気のない顔の色。
あれは現実だったのかな?見間違えじゃ無かったのかな?とグルグル考える。
やっぱり、気になるから何か知らないかアヤに聞いてみることにした。
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{ユキ、どうしたの?珍しいじゃん}
意外、と言いつつ弾む声のアヤに、昨日見かけた病院での光景を話してみた。
{へえ。なんか、ちょっと込み入ってるみたいだけどそれにはアヤメさんが絡んでるんじゃないかな}
アヤメさん?? テルのお姉さんの。
「アヤメさん、帰ってきてるの?」
{うん。そんで略奪女とアヤメさん、売り言葉に買い言葉でバトってる}
「え?アヤメさんと?!」
アヤメさんは、見た目がきつめだけど筋を通せばちゃんと話がわかる人なんだから、礼儀正しく筋を通してればアヤメさんは弱い立場の人間を守ってくれる姉御肌な性格だった。私とはそういうところがウマが合ってすごく仲良くさせてもらっていた。
{うちのお姉がアヤメさんと仲いいから、いろいろと協力してるんだけどアヤメさん曰く、弟の人生がかかってるんだから徹底的に闘うって。すごいよ。熱いよアヤメさん}
え、アヤメさんが本気出したらえらいことになるんじゃ……。
アヤメさんもう結婚して旦那様もいるんだから、その喧嘩上等な性格そろそろどっかに片づけないと。
{私も、タカシさんから頼まれていろいろとクミちゃんと調べてるの。まとまったらユキにも報告するけど、あいちゃん、ある意味凄いね。全然羨ましくないけどさ}
なんだか、事が本当に大きくなってきていていろんな人が動いているのがわかる。
余計な波風が立たなかったら、きっと今頃テルと結婚してあの家族と笑いながら過ごしていたかもしれない。もう過ぎたことだけど、あのおじさんたちの表情は胸が痛んだ。ハルカちゃんの顔も頭をよぎる。本当に私にとっては大切な人たちだった。ただ、それはテルという存在があってつながっている絆だった。
その絆がぷつり、と切れて別の人とつなぎかえられている。略奪は誰も幸せにはなれないんだなとしみじみ思った。
【はっきりいって、よくある話だと思った。】
【一時の感情なんてすぐに覚める。目が覚めてやっぱりユキちゃんとやり直したいって言ってくるんだよ】
少し前、マサキさんが私の話を聞いてくれて言われたフレーズがよみがえる。
マサキさんは大人だし、状況を俯瞰でとらえてる。だからすごくクリアな意見が出てくる。
その通りだな、と思う冷静な自分が居て、復縁はありえないと強く思うけど、あの無表情なテル一家と、私の知っているテル一家の明るい笑顔のギャップに悩む。
ダメだ。ひとりで思考の迷路に迷い込んでいる感じがする。
こんな情緒不安定な私が今更出て行ったところで何も変わらない。
もう、私だけではどうしようもないくらいに事は動き出している。
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「ねえ、ユキちゃんの弟さんに、ちょっと話が聞きたいんだけど連絡できないかな」
今日も配達に来てくれたタカシさんが、マサキさんに聞いたと、ユウキの話を確認しに来た。
なんだかとても大切な情報だったらしい。一応メールしておくんで連絡来たら電話することを伝える。
ユウキは、大学の講義が午前中だけの日らしく午後からこっちに来てくれるとのことだったので
早速タカシさんに連絡をすると、あの商店街の外れの喫茶店で待ち合わせることにした。
 




