表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘタレ女の料理帖  作者: 津崎鈴子
21/71

王子様の探し人3

エドワードの探し人がエミさんっていう事に衝撃を覚えつつも、そういえばエミさんって若いころから世界中を飛び回る仕事をしていたって言ってたからちょっと納得だったのよ。

でも、愛称にしてもナニーって何?エミさんなんだから、エミーとかじゃないの?


「エドワード、あなたを置いて帰国しなければならなかったのは、あなたのご両親に言われたことが原因でもないのよ」


そう、静かに話し始めた。


 今から30年ほど前、エドワードの祖国に通訳の仕事として滞在していたエミさんは、クライアントのウィリアム氏が、何かに悩んで居るであろうことを感じていて思わず声をかけた。


 本来であれば、仕事上の付き合いであるからきっぱりと公私の別はつける主義でやってきていたけど、あまりの憔悴ぶりに心配になって声をかけてしまったのだという。


エドワードの両親は有能なビジネスマンで子供の養育はウイリアムの妻任せになってしまっていたが、ウィリアムの妻が病に倒れ、今までしていた孫の養育が出来なくなってしまった。

両親はエドワードに優秀な養育係を付けたが、幾人もの人間が追い出されてしまい、ベビーシッターのなり手がないという。かといって両親は仕事を辞めてまでエドワードの傍にいられない環境にあった為、最低限の食事と家政婦の世話で家に閉じこもった生活をし、手の付けられない状態になってしまったという。


 その話を聞き、その翌日がエミさんの休日になっていた為、エドワードの気分転換にシッターを買って出ることになった。


 もちろん、今までのベビーシッターのように悪戯を仕掛けられた。

しかし、エミさんはその仕掛けに引っかかり、怒るどころか笑ってしまったという。

そして、幼いエドワードに「あんた甘いわよ、やるなら徹底しなきゃ」

と広い庭に連れ出して子供の頃にやった数々の遊びや木登りかけっこなど目いっぱい遊び倒した。


 そして、くたくたに疲れてお腹を空かせたエドワードを台所の作業台に座らせて焼きたてのホットケーキを作って食べさせた。


 一日限定のシッターだったからと、エドワードが疲れて寝入ったのを見て屋敷を後にした。


翌日の昼過ぎに、ウィリアム氏から正式にベビーシッターの要請を受けたが断ろうとしたものの、エドワードがエミさんを気に入って朝から泣き叫んで逆に手を付けられない状況になったのだという。


 一応、エドワードの祖国には国家資格の養育係のナニーという職業があり資格を持たない人間が、ましてや家庭を持たない人間が子育てするのは困難であることを説明するものの、孫がかわいいウィリアムに押し切られ、ウィリアムの妻が養育できるようになるまで、という期間限定で引き受けることになった。

ただ、ウィリアムの妻は結局そのまま帰らぬ人になってしまった。


意気消沈するウィリアム一家。しかし、仕事と共に多くの従業員を抱える彼らは仕事を放っておくことも出来ず頼みこまれ、そして祖母の死を受け止めきれない幼い子を放置も出来ず、代わりが見つかるまでとの約束でさらに期間延長した。預かっている間に人前に出ても恥ずかしくないマナーを身につけさせなければ、と、時に厳しく時には甘く、育て上げたエドワードもすくすくと成長し、一年後の7歳で寄宿舎に入るのが決まったという矢先に、日本に残してきた親の訃報が届き、戻るか否か悩んでいると、エドワードの両親にはあなたはもう必要ない、戻らなくても結構と少し強めに言われてしまい、多額のお礼を渡されて数年ぶりに帰国することになった。 おそらくエドワードにあまりにもエミさんが関わりすぎて、他人を寄せ付けなくなりそうだったのをご両親は心配していたのかもしれない。

 

その話を聞いたエドワードは、涙ぐんだ。両親から聞いていた話とはずいぶん食い違っていたそうだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ