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ヘタレ女の料理帖  作者: 津崎鈴子
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嵐のあとに

ハルカちゃんが隣に居ると言うありえない状況に戸惑っていつつも、こんなに慕ってくれて居る事に胸が一杯になる。


「ハルカちゃん、学校はどうするの?」

とりあえず、今日は私の部屋で一緒に寝ることになって、お客さん用の布団を敷いているとハルカちゃん、あっさりと休む、とだけいう。


「ユキちゃん、髪切ったんだね」

うつむいたまま言葉を紡ぐ。


「お腹が目立たないうちに結婚式挙げるんだって。絶対騙されてるのに」


そっか。テル結婚するんだな。もう関係ないと思っていてもキツイ。


「ハルカも式には参加したくないって言ったの。お姉ちゃんもね」


ふたりとも私に良くしてくれた。それだけでもういい気がする。


でも、アヤメさんも参加しないって意外だった。常識的な人だから、家にかかわることで軽率なことはしないって思ってたんだけど。


「お姉ちゃんは地元の友達にいろいろと調べさせてるって言ってた。シロだってはっきりわかるまでは家族とは認めないし式には出ないって。そしたら、バカ女がそこまでして出てもらわなくって結構ですって」


性格変わったの? なんか私が知ってるあいちゃんじゃない気がしてる。

今後付き合っていかなきゃならない未来の義理の姉にそこまで言うか?

ウエディングハイってやつなのかなぁ人格変わるっていうし。


「ハルカちゃん、テルはあいちゃんを選んだし、私もそれを受け入れた。もし、あいちゃんのお腹の子が誰の子であってももう壊れたものは戻せないし戻る気もない。それだけは理解してほしい。今の生活が気に入ってるの」


 その言葉に、ハルカちゃんは何か言いたそうにしていたけど、私の気持ちを察してくれたのか口をつぐむ。その顔はどこか大人びて見える。


「ユキちゃん、また遊びに来てもいい?」

「もちろんだよ。その代わり、テルにバレないようにしてね、ここにいる事」


夜は静かに更けていった。


次の日は、本来ならハルカちゃんは学校に戻らないといけなかったんだけど事情が事情なのでテルのお母さんが連絡して休ませてくれたのだそうだ。私がどんな街で過ごしているのか見て回りたいって。

商店街の後片付けを手伝おうと思ってたんだけど、と伝えると一緒にやる、とやる気満々で言い出したハルカちゃんを止めることも出来ず、商店街へ。


すると、いつものたまり場に井戸端会議のおばあちゃんたちがすでに何人か来ていた。


「ユキちゃん!昨日はお疲れさん~」

おばあちゃんたちは朝から元気いっぱいだった。

「ありがとうございました!大盛況でしたね!!」

「ところで、今日一緒にいるお嬢ちゃんは妹なの?」


さすがおばあちゃんたち、目ざといデス。


幼馴染のハルカちゃんです、と紹介するとかわいいねえ、とはやし立てられた。

にぎやかでテンションの高いおばあちゃんたちに面くらいながらハルカちゃんも苦笑いする。


するとおばあちゃんたちのボスが、爆弾を投下した。


「うちの子に、テレビ録画させてたんだけど、魚六のマサキ君とイイ感じだったねぇ」


そのひと言に、昨日の状況がよみがえってくる。


甘えてくる大人の色気の破壊力に思わず赤面すると、余計におばあちゃんたちのテンションが上がる。

まるで週刊誌の記者のように矢継ぎ早に質問が飛んでくるけど、企画頼まれただけですから!と逃げることにした。


その様子に、ハルカちゃんも、じっと私を見つめる。


「ユキちゃん、もしかして、昨日の男の人といい感じなの……?」


慌てて両手をぶんぶん振って否定するが、自分でもわかる。ドツボにはまってる。絶対に挙動不審だ。


「ユキちゃん…………ごめん。もう、関係ないんだもんね。気にする権利、お兄ちゃんには無いわ」

と、肩を落とす。


タイミング悪く、そんな時にマサキさんとタカシさんのコンビに出くわしてしまった。


「やぁ、昨日はお疲れさん」

にっこり笑顔のタカシさんが手を振る、その横のマサキさんもちょっと挙動不審だ。


「昨日は、その、どうも」


明らかにハルカちゃんに視線が行き、固まっているのがわかる。

すごい形相で初対面の女子高生に睨まれたんだからちょっとしたトラウマかも。


「ハルカこそごめんなさい。ちょっと気が動転してて」

うつむきながらそういう。


「ところで彼女、誰なの?」


タカシさんが興味津々で話しかける。


「幼馴染のハルカちゃん。何も言わずにエミさんとこに手伝いにきたもんだから心配してくれてたらしいんだよね。昨日のテレビに映ったのを見て、ここまで探しに来てくれたの」


そして、当たり障りのない会話をして、マサキさんとタカシさんは後片付けの様子を見回っていた。


☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・


夕方まで色んなところを見て回り、ハルカちゃんは満足したのか帰る、といったので駅まで送っていく事にした。 ハルカちゃんは、またね、とだけ告げると改札を抜けていった。


 ちょっとだけ背中が大きくなったように見えた。


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