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ヘタレ女の料理帖  作者: 津崎鈴子
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嵐は突然やってくる2

マサキさんとタカシさんのコンビから話を持ちかけられ、第三者の新しい意見を述べた結果、

なぜか商店街の無機質なスチール机と椅子が並んだ会議室に呼ばれた私。の商店街のお偉いさんから

実行委員の若手まで一通り揃って居る。

居心地悪すぎるわ。1人だけ部外者ってどうなの。


「商店街のイベントのアイデアを一般から募った結果、ユキさんがとても

斬新な意見を出してくれたのでその案を基に進めたいんですが」

魚六のマサキさんが口火を切る。


「いつも通りガラガラ抽選会の方が客は喜ぶし手間もかからんだろう?」


商店街の重鎮の酒屋のシゲさんがいう。


昔ながらのやり方を進めたいおじさんたちと

新しいことをやりたい若者とのせめぎ合いに巻き込まれたのか。

でも、リカちゃん達、絶対喜ぶはず。頑張らなきゃ。


「ガラガラ抽選会もいいと思うんですが、新しい企画で活気を呼びたいんですよ」

八百屋のタカシさんが意見を述べる。


「じゃぁ、その企画ってのはなんなんだ?」

酒屋のシゲさんがどすの利いた声で発言すると一気に空気が重くなる。


そこで、私がマサキさんに話したアイデアをまとめたものを配る。


題してちびっこ商店街。小さな子供を対象に、それぞれのお店で職場体験する。

いろんな仕事を体験して最後に商店街で使えるチケットを稼ぐって仕組み。


「ほほーー。おままごとの好きな女の子の考えそうなこったな」

シゲさんが鼻で笑うと年寄りからも突っ込みが入る。


衛生的な事とか、保険所の許可とか、やり方によっては予算をどう捻出するか。

子供は思いがけないことで意外な行動をするからその際の怪我の対策とか。


なかなか現実的にはクリアしないといけない課題はたくさんありそうだ。


「とにかく今回は資料を基に検討してください。

今日に決めてしまわなくてもいいと思いますし」

マサキさんとタカシさんがこうなることは織り込み済みな様子で

第一回の会議は終了した。


なんか、疲れたなぁ。と、帰ろうとすると、マサキさんが声をかけてきた。


「ユキさん、お疲れ様。次回なんだけど」

「え?!次回も私参加するの?」

「発案者なんだし、また頼むよ。人手が欲しいんだよ」

「マサキからアイデア聞いたときは

目からウロコだったよ。同じ人間が集まって

話をしても焼き直しになること多いんだよね。

だからお願い、また来てね」


商店街のイケメンふたりに頼まれて、なんとなく

次回も参加しなければならない雰囲気になってしまった。


家に帰って、エミさんに事の次第を説明したら、

あら、面白そうじゃない?とノリノリだった。

でも、酒屋のシゲさんの話をしたら、ちょっと考え込んでからこう言った。

「まぁ、やって見たら?シゲさん達の事は一旦脇に置いて。

たまには若いもんでやってみたらいいのよ」


いたずらを企む顔でエミさんは笑っていた。


 とりあえず、子供が楽しめるイベントをどうするか、久々に企画書を立てよう。

うーん、まずはコンセプトは子供が職業体験出来るイベント、だけどどういう形式が

ベターなのかよねぇ。

各店舗にちびっこを配置して、各店舗で指導してもらうやり方と、空き店舗に体験型の

ワークショップを時間割でするやり方と、あとどんなやり方がいいだろう。

それぞれのメリットデメリットを出して、商店街の方の協力が得られそうな方を補強していけば

いいのかな。いろんな職業をリアルな形で体験するイベントだから、商店街の人たちも

楽しめるようにしたいしなぁ。子供って預かるのすごく気を遣うって実感したし。

アレルギーの子が間違って禁止食材を食べないようにマークつけれるようにしないと。


うんうん唸っているうちに、すっかり夜が更けているのにも気が付かない私に、エミさんが

一息つきなさい、と台所に呼んでくれた。


台所には、紅茶のイイ匂いが漂っている。


「商店街も昔ほどの活気が無くなってきていてね。大型スーパーとかにお客が流れていくし

文房具屋だって100均があるからなかなか厳しい戦いを強いられている。

時代の流れってやつなんだろうけどさ、商店街の年寄連中も昔は若かったんだよ、ユキちゃん」


エミさんは、しみじみと昔を懐かしむように笑った。はかなげに見えたのは気のせいかな。


その日なんだか眠れなくなって遅くまで企画書を書き続け、ある程度まとまったものを

マサキさんとタカシさんに見せることにした。




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