嵐は突然やってくる1
ぽかぽか陽気で、洗濯物を片付けていると、メール着信の軽快な音が響いた。
着信音である程度分けてるので大体誰からかは想像できるんだけど、
この音に設定していたのは、テルの妹のハルカちゃんだ。
出るかどうか、ちょっと悩む。ハルカちゃんは、私に懐いてくれていて、
ユキ姉ちゃんって呼んでくれていたからテルとのことは言いにくかった。
たしか、遠方の学校の寮に入っていたはずだから、休みで帰ってきたのかな。
しばらく鳴ってて、悩んだ末に出ることにした。
「はい?」
《!!!ユキ姉ちゃんやっと出た!!!》
いつも通りの元気で大きな声。懐かしい声だ。
《お兄ちゃんと別れたって聞いたよ!!んで、別の女と結婚するって!!!》
「ハルカちゃん、ごめんね。もう、テルとは関係ないんだよね」
《おかしいよ!!なんか、引き合わされた女、すごく胡散臭いんだよ!!!
なんであんな奴にユキちゃんが負けてるの!!》
ヒートアップしてる。怒ってくれるのは嬉しいけど、もう、テルのことは忘れたいんだよね。
「ハルカちゃん、ごめんね。私に引き留めておくだけの魅力がなかったんだよ」
自分で言っててなんか情けなくなってくる。
《お姉ちゃんも、お腹の子供が本当にテルの子か調べた方いいんじゃないかって言ってたし
絶対裏があるよ。お兄ちゃんもユキ姉ちゃんと付き合ってる時みたいな顔じゃないもん》
えええ!!温厚なアヤメさんがそんなことを言ってるの?
アヤメさんは、テルの3つ上のお姉さんで県外に嫁いでいる。
引き合わされたって言ってたけど、それじゃアヤメさんも呼ばれたんだな。
「でも、選んだのはテルなんだから仕方ないよ。心配してくれてありがとうね」
《もう、ユキちゃん!!今どこにいるの?会いたいよ!!!》
「ごめんね、今は言えない。テルに関わりたくないから」
《ユキちゃんのわからずや!!》
電話の向こうで泣きじゃくるハルカちゃんの声が辛い。
「ごめんね、でもハルカちゃんの事、大好きだよ」
そして電話を切った。
すると、タイミングよくエミさんからお声がかかる。
天気のいいうちに買い物に行くことにした。
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商店街でお使いをしていると、魚六のマサキさんと八百屋のタカシさんが何やら
話しをしている。商店街のイケメン同士、人気を二分しているふたりが
立ち話してるから目を引く。どっちも細身だけど筋肉が無駄なくついてる感じで
奥様方のアイドル状態。目が合ったので会釈すると手招きをされた。
「ユキさん、いいところに!!」
なにがいい所なんだろう?不思議に思っていると、マサキさんが口を開く。
「ユキさん、商店街で何かイベントをしようと思うんだけどなんかいい案ない?」
「なんで、私に、アイデアを聞くんです?」
「第三者からの意見が欲しいからだよ」
八百屋のタカシさんは、笑う。日に焼けてなくて色は白いんだけどメガネが知的で素敵な感じ。
魚六のマサキさんは日焼けして健康的な感じなのでまるでオセロのように対照的な
キャラだった。ただ、幼馴染なせいかとても息が合ってていいコンビだ。
商店街のイベントって言われてもなぁ。
すぐには思いつかないので、少し時間が欲しい事を伝えると、待ってるよーと
あっさり解放してくれた。
家の前で、リカちゃんとサトル君がなにやら渋い顔で話をしている。
「こんにちわ、どうしたの、ふたり共」
すると、ふたりは、おずおずと渋い顔の理由を言ってくれた。
どうも、リカちゃんの友達が、家族で職業体験型のテーマパークに行った自慢をされたらしい。
そのテーマパークはすごく人気で入場券を手に入れるにも抽選なうえにすごく高いらしい。
お母さんにおねだりも出来ないと子供なりに気をつかっていたんだ。
うーん。何とかしてあげたいけど、そんなコネもないしなぁ。
そのテーマパークは、すごくリアルな職業体験が出来るって評判だった。
ん?何とかできないもんかなぁと思ったけど、さっきの商店街のイベントの話を思い出し、
早速マサキさんに連絡し、アイデアを伝えてみた。




