1
「ねぇ、ねえってば……起きてよ、×××ちゃん」
____起きないと、痛いコトしちゃうよ?
手には手枷、首には首輪、足には足枷。
そんな常人の神経とは思えない私は自らをみてこう思う。
私はその行為が酷く痛みを伴うことを知っていた、そしてそれこそが私の生きているという存在意義につながるということも惚けた頭ではそれくらいしか考えることが出来ないけれども、知っていた。
何故彼が私に固執するのかそれは私だけが知っていた。
「この世界は、所詮……」
ゲームと呼ばれるものだ。確かそんな風に言っていたような気がする。『あの子』が。うんと昔に。
私が彼に……彼らに、盲目的に愛されるのも、所詮は私がその『ゲーム』の中の主人公で、ピログラムされている一つのデータだから。嗚呼、ならばデータに感情なんかつけなければ良いのに。
もう、こんな思いしたくないよ。
画面の外の貴方は今、どんな顔して私を見ていますか?
そこに、笑顔はありますか?
もう、私を休ませてはくれないのですか?
「×××ちゃん、僕、僕……ね。考えたんだ」
頷くこともままならない自分が惜しい。御免なさい。貴方は悪くないの。私が全て悪いの。
「君を想う人が、僕から君を奪ってしまう」
辛うじて自由を奪われていない瞳が彼の美しい顔を見つめる。
宝石をちりばめたような美しい顔は苦しそうに歪む。不意にどこかのドアが叩かれる音がした。
「おいッ……!さっさと開けろ!×××を出せ!」
「…………」
___ほ ら ね
つぼみが花開くように、そう彼の口が動く。思わず見惚れる自分がいた。
多分、それが合図だったんだろう。
彼はどこからか取り出したナイフを目の前に掲げて、まるで厳かな儀式をするかの如く私の頬をそっとさすった。
「愛してるよ」
嗚呼、痛い。