ゴブリンと魔法 その3
お待たせしました m(_ _)m
「そっせい!」
雷を纏った先生が、親分の胸に突き刺さる。
バチッ!
閃光と共に、親分の身体が跳ね上がる。
「親分! 親分! しっかりしてくだせぇ!」
追い打ちをかける様に、床に落ちた親分の肩を掴み、ガクガクと前後に揺さぶるゴブゾウ。
そのたびに、ガッツン! ガッツン! と親分の頭が床を打ち付けている。
「……これは、まずいですね。水を分けて貰えますか?」
虚空に向けて声をかける古老。すると、守り木から返事がある。
『いいよ』
「ゴブタ、守り木の所にいって湧水を貰ってきなさい」
「ういっす。どうぞ」
古老の指示に、打てば響くとばかりに、懐から水筒を取り出すゴブタ。守り木には、普段は近づけない筈なのだが。
『ほんものだよ』
「……ゴブタ、今、水筒を何処から取り出しました? これは、軽々しく飲んで良いものではありませんよ」
「……の、ノンデマセンヨ? さ、作物が良く育つので、常備してっるす」
『おいしいよ?』
「……常備? まあ、今は良いでしょう」
『「ほっ」』
「後で、話があります」
『「ひっ」』
水筒を受け取った古老は、青ざめるゴブタを放置し、今なお先生とゴブゾウにO☆SE☆WAされている親分の元へと向かう。
「親分に止めが刺される前に処置するとしましょう」
・・・・・・・・・・
ワシ……つまり、ゴブリンの……白い……ホワイト………シチュー食べたい……は、困惑している。
寝床で寝ているのだ。
寝る前に何をしていたか、記憶が無い。
やけに頭がズキズキする。これは……、あれだ。二日酔いに違いない。ゴブタ秘蔵の酒でも飲み過ぎたか? 記憶を無くす程飲むとは……まさかとは思うが、ボケた訳ではないよな。
えーと、此処は……だ、大丈夫。古老様の家だ。覚えているぞ、ワシ。
晩飯は、なんだったか……。何か損した気分だ。さて、置き上が……れない。
「お……う……」
ゴブゾウを呼ぼうと思ったが、声が掠れる。どういう事だ?
「あ、親分。気が付いたっすか」
む、ゴブタ。近くにいるのか?
「お……あ…」
「親分、まだ無理しちゃダメっすよ。死にかけたっすから」
死?
「3日も目を覚まさないっすから、ゴブゾウと先生が大騒ぎっす」
「呼んでくるっす」と出ていくゴブタ。え? 3日……そんなに飯を食い損ねてたのか。
「親分、気分はどうですか?」
「おおうああ……」
暫くすると古老様が来た。声は出る様になってきたが、上手くしゃべれない。身体は相変わらず動かない。
「ああ、そうでしたね。大丈夫ですよ。処置の影響です。今は動けないでしょうが、直に動ける様になります」
そう言ってこちらを覗き込む古老様。なんかごそごそしているが、良く分からん。
「どうなるかと思いましたが、問題はなさそうですね。もう少し寝ておきなさい」
そう言ってワシの瞼に手をかける古老様。その手は、うっすらと光を帯びている。頭のズキズキが治まり、眠気がやってくる。
「あの子とゴブゾウは、まだ立ち入り禁止ですよ」
まどろみの中、そんな古老様の声が聞こえた気がした。
ワシ……つまり、ゴブ…ゴブ……白?……白い……恋人?……は、目を覚ました。……恋人ってなんだ。
ぐぎゅるるる
盛大に腹が鳴る。今日も我が身体は健康の様だ。さて……朝……なのか?
よっこいせっと。上半身を起こすと、グラリときた。腹が減り過ぎて、目が回りそうだ。ゴブゾウとゴブタの姿は、既に無い。どうやら寝過ぎたようだ。
「ヒュッ……ヒュー……」
……喉が張り付いて声が出ない。適当にコップと水を作って喉を潤す。
ぐびぐび。ふ~、不味い。
魔法で生み出した水や食べ物は、何故かは知らんがとても不味い。口にすると、とても残念な気持ちになる。
顔をしかめながら腕を広げ、背を伸ばす。まだくらくらする。まあ、水分は補給できた。
いらなくなったコップと水を元のモノに戻す。ほどける様に消えてくコップと水。大気に漂うモノへと戻ったのだ。
「お……親分……」
ん? ゴブタ。おったのか。
「……今の何っすか?」
「何って、ただの魔法だが」
ん? 魔法? ……そういえばワシ、魔法の練習中に……おや? いつの間に。
…………まあ、使えるんだから良いではないか、良いではないか。
これが睡眠学習という奴だな、ハッハッハ!
「「…………」」
ジト目で見つめるゴブタ。真顔で見返すワシ。
暫く見つめ合ってると、ゴブタが視線を外し、やれやれとばかりに首を振る。……ワシの勝ちだ。
「まだ、動いちゃダメっすよ、親分。何か食べ物を取ってくるっすから、休んでて下さいっす」
メシか……そう、腹が減って目が回りそうだったのだ。急ぐのだ、ゴブタ!
・・・・・・・・・・
某、白い場所
「……主様」
「「「「「「何かな」」」」」」」
円状に並べられた沢山の机と、机に着く沢山の白い人。それぞれが机に積み上げられた紙を処理している。手が足りないなら増やせば良いと、白い人が増えたのだった。
「不気味」
その様子に少し引き気味な少女が正直な気持ちを口にする。しかし、白い人の増量に合わせて紙の量を増やす彼女も大概である。
「「「「「スピードアップ!」」」」」
「負けない」
更に増える白い人。更に増える紙。
生み出された紙は宙を舞い、それぞれの机に均等になる様に配られていく。
いつまでも続くかに思われた攻防にも、遂に終わの時が訪れる。
少女が生み出す紙が尽きた。
「くっ」
「「「「「フハハハ~。どうかね? ぅう~ん~~」」」」」
「……っち。お疲れ様でした、主様。しばらくお休み下さい」
貯め込んだ仕事を処理してドヤ顔な白い人と、微妙に悔しそうな少女。
そこに新たに白い人が現れる。
「やあ、私。お疲れ様」
「そっちもお疲れ。どうだった彼?」
「ああ、だいぶ使える様になってきた。しっかし、何回目だっけ? 良く来るね」
「最近は特に多いね」
「ああ、お茶お願いね」
「自分で用意できるだろ」
「まったくだ」
「「「あ、こっちにもお茶」」」
あっちこっちで雑談を始める白い人達。
「…………はぁ……」
(どうやって戻させようかしら)
主が始めた新しい遊びに、そっと溜息をついて、お茶の準備に向かう少女であった。
という訳で、親分も魔法を習得しました。
親分は目を覚ますまでの間に、白い人の所に何度も通っており、その都度修行を受けています。
何度も通う羽目になったのは、主にゴブゾウと先生のお陰です。