プロローグ
「ねえ、狂言回しになってみない? 」
きっかけは桜の一言だった。
「唐突にどうした」
なんで桜は急にそんな事を言い出したのだろうか。
「だって狂言回しってミステリアスで格好良いから」
「べつに機械仕掛けの神やトリックスターでも良いだろう。なのに何故狂言回し」
俺の言葉に桜は舌を鳴らしながら指を振る。
「解ってないなあ。原作介入のときに行き詰った状況を打破する必要性はないし、物語を引っかき回すだけより進行役を務めた方が面白そうでしょ。第一、以前トリックスターしたとき上手くいかなかったし」
いわれてみれば狂言回しの方がいいかもしれない。
「確かにそうだね」
「でしょ? でねロックみたいな狂言回しを目指そうと思うの」
断言する、絶対ムリだ。
「やたらと古いの持ち出してきたね」
「棗はどんなのが良いの? 」
「具体的に誰ってのは無いけど、黒幕タイプがいいな。ペパーミントの魔術師の語り手みたいに作中に一度も出てこないってのが理想」
「ペパーミントの魔術師? 」
桜はブギーポップを知らないのか。
「最も、俺らがいるはたとえ物語の世界に転生していたとしても現実だから、語り手とか文中に登場なんてありえんけどな」