第9話 モールス信号
リハビリが終わった。
その間に、冒険者ギルドに依頼を出して、レスティガーのことを調べた。
金をギルドの口座に預けて置いたのは良かった。
重いからな。
レスティガーはなんと3大門派であるミステル門主の息子で跡取り。
大物だな。
強いわけだ。
結婚は1年後らしい。
3大門派ともなると大々的にやるらしいからな。
招待客に遠方の貴族もいるから、前もって知らせてる。
フェアフェーレンのことは何も分からない。
妾の子と言っていたから、隠されている。
しかもゆくゆくは死ぬ運命の生贄妻。
なんて残酷な取り決めだ。
理由は判る。
他の門派の人間が残ると、火種になるからだ。
実家に帰しても、恐らく殺されるだろうな。
洗脳とかの可能性を疑うからな。
とにかく期限は1年。
それまでに助け出そう。
そうなると最強の魔法言語を開発しないといけない。
翻訳スキルで、俺が訳せるのは英語ぐらいだ。
「【翻訳】」
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翻訳スキル
┌──────────┐ ┌──────────┐
│日本語 ▼│→│英語 ▼│
└──────────┘ └──────────┘
点火。
[↓]
ignition
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翻訳はできた。
英語で点火をやってみる。
「【魔法言語登録】、英語はどうだ?」
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魔法言語登録
┌────────────────────┐
│英語 │
└────────────────────┘
✒
※魔法言語は1人1種類までです。
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10分後、認められた。
「【ignition】」
同じ魔力量で日本語に比べて、5倍ぐらいの長さの時間だった。
言語戦闘力は500ぐらいか。
使えると思うが、すぐに解析される未来しか浮かばない。
相手は言語のプロだ。
コンピュータはないが、スキルや魔法がある。
どんな手で来るか分からない。
答えを教えてくれるような物はないと思うが、侮れない。
暗号化が必要だ。
コンピュータが欲しい。
ネットに繋がったスマホでも良いけど。
ない物ねだりしてる暇はない。
誰かに頼るのも危険だ。
拷問ぐらい平気でやりそうだからな。
暗号化で考えられるのは文字の順番を変えること、日本語なら発音できるが、英語じゃ無理だ。
アルファベットで読み上げるってのも手だが、暗号化でどれだけ言語戦闘力が上がる?
実験は良いだろう。
「【魔法言語登録】、どうだ?」
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魔法言語登録
┌────────────────────┐
│逆読みアルファベット英語 │
└────────────────────┘
✒
※魔法言語は1人1種類までです。
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10分後、許可が出た。
「【エヌ、オー、アイ、ティ、アイ、エヌ、ジー、アイ】」
魔法は発動した。
言語戦闘力は1000ぐらいか。
威力は問題ない。
10倍なら勝てる。
レスティガーの言語戦闘力を200ぐらいに見積もった方が良いかもな。
門下生のザコが100だと思うからだ。
5倍か、微妙だな。
それに問題は、とっさに魔法が作れないことだ。
こんな簡単な並べ替えでもそれなりに頭を使う。
しかも詠唱するとなると間違い易い。
ただ、今回の暗号化で言語戦闘力が上がったのは嬉しい。
恐らく逆読みの効果は、言語戦闘力が2倍。
掛け算になるのは嬉しい発見だ。
それから、寝ないで1日考えたが、上手い暗号化が浮かばない。
暗号化なんて研究したことがないからな。
昔を題材にした戦争映画とかだと、暗号を解読するのに本を開いてやっていた。
今はコンピュータだよな。
本を使うと盗まれる危険がある。
同じ本を買ってくれば、盗まれたのと同じこと。
上手くない。
無理ゲーじゃないか。
徹夜7日目。
本を使った暗号を考えていて、本を開いている。
「本の文字が線と点に見えるぜ! これって、まるでモールス信号だよな! がはは!」
徹夜テンションで意味もなく大笑い。
何が可笑しいんだか、自分でも意味不明。
あれっ、アルファベットのモールス信号表を見たことがある。
アマチュア無線をやってた奴の部屋だ。
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翻訳スキル
┌──────────┐ ┌──────────┐
│英語 ▼│→│モールス信号 ▼│
└──────────┘ └──────────┘
ignition
[↓]
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ビンゴ、大当たり。
「【魔法言語登録】、どうよ? 頼む!」
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魔法言語登録
┌────────────────────┐
│アルファベット・モールス信号 │
└────────────────────┘
✒
※魔法言語は1人1種類までです。
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10分後。
「よっしゃあ! うひひ!」
「【トト、ツーツート、ツート、トト、ツー、トト、ツーツーツー、ツート】、おっしゃあ。おりょ、魔力が減る感覚がない。減った分が即座に回復してる。言語戦闘力を測る魔法を作らないとな。寝るか……」
意識が途絶えた。
モールス信号の夢を見て起きたよ。
覚えてるさ。
忘れるはずない。
威力的には十分。
だが、詠唱が問題。
トとツーじゃ間違える。
しかも、アルファベットとモールスは一対一だから、暗号化ってほどでもない。
モールス信号を知る奴がいないから、『神秘性』が高いってことだろう。
『規則性』は低い、『多様性』は英語より高い。
なぜなら、日本語もいけちゃうからな。
日本語のモールス表も見たことがある。
他国の言語にも対応してるかも知れん。
ネットがないから調べようがないけどな。
翻訳スキルは覚えてなくても良いらしい。
意味と文法と発音を理解してて、一度単語のスペルを見ていれば、良いみたいだ。
この方向性を軸に考えるべきだな。
うっしゃあ、1歩前進。




