第7話 魔法学会
「【魔法言語登録】、これが通るかな」
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魔法言語登録
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│日本語 │
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※魔法言語は1人1種類までです。
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やはり、10分ほどで、許可が下りた。
「やったぜ! 【点火】」
日本語で魔法を唱える。
魔力が驚くほど、減らない。
フェアフェーレンが小声で何か唱えてる。
「驚いた! 言語戦闘力が112! 3大門派の師範並ね!」
えー、師範並みか。
もっと行くと思ったのにな。
ちぇ、残念。
でも、シャール語より何倍もまし。
「小声で詠唱したのは何で?」
「魔法言語を盗まれないようにするため。基本ね」
なるほどね。
「ええと、ちなみにシャール語の言語戦闘力ってどれぐらい?」
「2よ。神秘性がほとんどないから」
そして、異世界転移から、約1ヶ月。
「【火炎旋風】」
もちろん俺が唱える呪文は日本語だ。
「ガアア……」
3メートルはある巨人のオーガが炎の竜巻に包まれ、熱さと酸欠で息絶える。
「シゲ、凄い! これでAランク昇格ね」
フェアフェーレンが驚いた声を上げる。
魔法は呪文も大切だけど、イメージも大切。
火炎旋風の仕組みは知ってたから、可能。
しかし、モンスターも強いな。
火炎旋風に包まれたのに、オーガは焦げてない。
「シゲさん、最短Aランク昇格、おめでとうございます」
「パルメ、ありがとう。フェアフェーレンもありがとう。俺がここまでなれたのもフェアフェーレンのおかげだ。一番の恩人だよ」
俺は一緒に冒険者活動してて、フェアフェーレンに恋心を持った。
「改まって言われると照れる」
「俺達、付き合わないか?」
「ごめん……」
フェアフェーレンが涙ぐんだのが判った。
「フェアフェーレンさん、伝言が届いてます」
伝言を見たフェアフェーレンは真っ青になった。
「どうして……ここが……」
怯えていると言っても良い。
フェアフェーレンは弱くない。
Bランクだから。
オークの10体ぐらいは軽く片付ける。
申し訳ないけど、伝言を覗き見る。
魔法学会に出席せよとの指示。
代理でも構わないと書いてある。
「フェアフェーレン、俺が代わりに出るよ」
「……。シゲ、あなたに死んで欲しくない」
「守るから、絶対に守るから」
「うん」
フェアフェーレンには話せない秘密があるらしい。
俺も異世界人だとは言いづらい。
お互い様だな。
いずれお互いの事情が全て解るだろう。
フェアフェーレンと大学都市エーゼルに行く。
転移魔法を使う。
「【大学都市エーゼルにワープ移動する】」
ワープ完了。
転移は魔力がたくさん要る。
日本語で呪文を唱えてもだ。
魔力が空に近い。
空間を歪めるSFの架空理論で転移できるんだな。
距離が遠いとさらに魔力が必要みたい。
地球への転移は無理そうだ。
魔力回復するために喫茶店みたいな場所で時間を潰す。
楽しいおしゃべりは瞬く間に過ぎた。
フェアフェーレンは明るく振る舞っているが、なんとなく暗い影があるような気がする。
守ると約束した以上、俺が解決したい。
「さあ、そろそろ行きましょ」
「ああ、案内してくれ」
フェアフェーレンに案内されて大学に入る。
そして、大講堂に入った。
受付がある。
「魔法の呪文を発表したい」
「建物を壊すような魔法でなければ、実践して下さい」
ええと、何の魔法にしよう。
グリフォンの幻かな。
「【グリフォンの幻】、どう?」
もちろん魔法は小声で唱えた。
「問題はありません」
幻を消した。
名前と簡単な発表の内容を書いて、受付が終わった。
なぜか研究発表は俺が最初。
常連じゃないからかな。
待つより良いけど。
「シゲだ。俺の地元の魔法言語を発表する」
フェアフェーレンが後ろの席で手を振っているのが見えた。
「こういうのは大抵が大風呂敷野郎だ!」
「詐欺師野郎、引っ込め!」
よし、度肝を抜くために初っ端はドラゴンの幻。
「【動いているドラゴンの幻】」
幻のドラゴンが動いて、炎を吐いたりする。
炎を浴びた観客は逃げ出す始末。
燃えてないの知ってほとんどは席に戻った。
「驚かせやがって!」
「学会で死人を出すような馬鹿はたまにいるがな」
次行くぞ。
「【氷の裸婦彫刻】」
男はほとんど、穴のあくほど、氷の裸婦像を凝視している。
見てないのは高級そうな服を着ている奴ら。
こいつらは女には不自由しないんだろうな。
次はこれ。
ピアノで演奏される運命交響曲
「【ピアノで演奏される運命交響曲】」
激しいピアノの音色。
運命の最初のフレーズは驚くよな。
インパクト十分だ。
「本日の発表は終りだ」
終わって帰ろうとしたら、集団に行く手を阻まれた。
「帰りたいんだが」
「お主、わしの門下にならんか?」
爺にそう勧誘された。
「どちら様で?」
「ミステルじゃ、この世界でこの名前を名乗れるのはわしだけじゃ」
「ああ、ミステルの門主ね。門下はお断りだ。誰かの下にはつかない」
ブラック企業の匂いがしたからな。
しかし、3大門派のトップが来るとは。
フェアフェーレンが、怯えるのも解る気がする。
「小僧、わしが下手に出てる間に考えを変えろ。死にたいのか」
「死にたくはないな。だけど、死ぬ予感はこれっぽっちもしない」
神様によれば、晩年は幸せだからな。
「恐らく知られてない古代言語みたいなのを使っているのだろう違うか?」
「まあだいたいそんなところだ」
「いずれ遺跡が発掘されて、古代言語はみなに知られる。わしなら、知っている奴を皆殺しにして、独占する。その時はお前も終わりだ」
「自信があるなら、やってみろ」
「ふん、強がりを。まあ良い。後で後悔しても遅い」
「じゃな」
フェアフェーレンと転移で元の街に帰る。
俺は馬鹿だった。
波乱万丈と言われたのをこの時、すっかり忘れていた。




