第36話 謎の物体
匂いを魔法に使うとは、凄い発想だ。
匂いなら染み込むし、応用範囲は高い。
ただ維持するのに魔力は必要だが。
俺の魔法言語なら、1年間維持するのも容易いだろう。
「女に甘いな」
レスティガーの声。
「弱点だと言いたいのか?」
「さあな」
「子供も女も老人も、いやまともな神経なら、人間はおろか、動物やモンスターさえ殺したくない。それがまともな人間だろう。殺しても何も思わない奴はクズだな」
「フェアフェーレンは躊躇なく殺せる側だぞ」
怒らせようとしているな。
「俺だって、生きて行くためには殺す。殺す時はためらわないさ。ただ、殺した奴は忘れない。冥福を祈るぐらいはする」
「ふん戯言を」
こいつの千里眼はひょっとして魂を飛ばす技か?
だが、魂の仕組みが解らない。
なので、感知は無理だ。
だが、あがく意味はある。
「【翻訳】」
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翻訳スキル
┌──────────┐ ┌──────────┐
│日本語 ▼│→│英語 ▼│
└──────────┘ └──────────┘
赤外線を視認。
[↓]
Infrared Visibility
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「【文字置換】」
文字置換での呪文はこんな感じ。
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文字置換スキル
┌────────────────────┐
│侍魔法言語変換 ▼│
└────────────────────┘
【Infrared Visibility】
[♯]
【酒。(笑) 拙者は酒に呑まれれたぞ。(笑) 年貢。軽くしてやるが良いぞ。大将? 励めよ、矢銭を寄越せと申すか? 小姓! その方は小姓、敵方の間者だったのか! ザシュ(斬撃)♪ お主が謀反とは(舌打ち音)♪ 小姓! 早馬の用意を申し付ける! く…… その方には敵わんのう…… 笑止!!(笑) このぐらいでは死なん!!(笑) [幕]さらばじゃ!! みなの者、落ち延びよ!! 酒。(笑) いざ、気炎を上げ、参らん(笑) おのれ…… 死に芸は笑えたぞ…… 殿! ここは強気にでないといかんな! 面妖な。(笑) 同じ顔がふたつ見えるぞ。(笑) 殿! そちも楽しめ! 武者ぶり! ふむ、忠義を期待しておる、励め! 城!(驚) その方に、築城を任す!(驚) ボー(ほら貝)♪ このような品が欲しいなど、欲のない奴じゃ、ボー(ほら貝)♪ なんと、乱戦!! 援軍を送ろうぞ!! 】
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無詠唱で魔法を起動。
熱を持った物体が見える。
むっ、宙に浮いている何かがあるな。
あれで見ているのか。
あれが魂だとすれば、エネルギー物質なんだな。
魔法で攻撃してもおそらくはノーダメージ。
だが、一度ぐらいは良いだろう。
「【翻訳】」
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翻訳スキル
┌──────────┐ ┌──────────┐
│日本語 ▼│→│英語 ▼│
└──────────┘ └──────────┘
火球。
[↓]
fireball
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「【文字置換】」
文字置換での呪文はこんな感じ。
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文字置換スキル
┌────────────────────┐
│侍魔法言語変換 ▼│
└────────────────────┘
【fireball】
[♯]
【敵将!!(驚) 討ち取ってやるわ!!(驚) 斬れ! 忠義の邪魔になる雑念を切るのじゃ! 苦境…… 七難八苦じゃな…… む? わしもここまでか? くっ、負けぬ! 間者如きに討たれてたまるか! そりゃ!! やるのう、今一度手合わせじゃ!! 卑怯な…… 起請文を破ったのか…… 武者ぶり! 助かったぞ、あとで褒美を取らす! 】
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無詠唱で魔法を起動。
火球が謎の物体に向かって飛んだ。
火球はその物体に当たって突き抜けた。
「ひっ! 攻撃など当たらない。はははっ、お前、馬鹿だな」
あれが、レスティガーのカメラ代わりなのは間違いない。
ただ、攻撃は通らないようだ。
「千里眼魔法の手の内はそのうち解明されるさ」
「秘術がそう簡単に盗めるものか」
匂いを魔法にできるのなら、空気を魔法にできる。
魂ではなくて、そういう魔法か。
いや、火球で、揺らぎもしなかった。
空気なら揺らぐ、ガスも同じだ。
エネルギーを魔法にするなら別だが。
熱を奪ってみるか。
「【翻訳】」
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翻訳スキル
┌──────────┐ ┌──────────┐
│日本語 ▼│→│英語 ▼│
└──────────┘ └──────────┘
熱を奪う。
[↓]
Remove heat
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「【文字置換】」
文字置換での呪文はこんな感じ。
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文字置換スキル
┌────────────────────┐
│侍魔法言語変換 ▼│
└────────────────────┘
【Remove heat】
[♯]
【苦境…… 嘆くなら、殺してしまえ、苦境かな…… 死。天運じゃな。温泉。(笑) 余興も終わりか?(笑) さっ、一献。(笑) さあ、楽しもうぞ。(笑) 見事じゃ!(笑) 呵呵大笑よな!(笑) 死。下戸なのじゃな、そんなものでは死なん。[幕]やるのう。その方が家臣でよきことよな。く…… 誰ぞ呼べ…… ぬぬっ…… これはいかん、臆病風ではないぞ…… おー!!!!!!(鬨の声)♪ ふっ、反撃ののろしを上げよ!!(鬨の声)♪ 】
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無詠唱で魔法を起動。
熱は吸い取っているが、謎の物体が小さくなったりしない。
「少し、魔力消費が増えただけだ。所詮、お前などその程度。はははっ……」
去ったようだ。
謎の物体も消えた。
赤外線を見るのをやめる。
千里眼魔法の秘術を解明するのに一歩近づいた。




