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愛してなどおりませんが  作者: 仲村 嘉高
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21/31

21a:愛してなどおりませんが

 



 間抜けに舞台を見上げているフーリーに、アメリアは、丁寧に説明を続ける。

「婚約してから9ヶ月、何も音沙汰がありませんでした。その後、公爵家へ来てもフーリー様は、いつも一方的に話すだけでした。しかも交流2ヶ月目からはミア子爵と一緒。一度も学校へ一緒に行った事もありません」


 アメリアが一度、呼吸を整える。


「入学後2ヶ月で婚約が破棄された事にも、気付いていらっしゃらなかったのですよね?」

「あ、あぁ。確かに、それはそうだが、それは、誰も何も俺に伝えなかったからだ!」

 アメリアの問い掛けに、フーリーは自分は悪くないと言い訳をする。

 それに対しても、アメリアの笑みは変わらない。


「少しでも私の事を気に掛けていれば、1年10ヶ月も気付かない事は無かったでしょう」

 あくまでも、アメリアの表情は優しい笑顔のままだった。

 口調も責めるものではなく、事実を告げているだけの冷静なもの。



 フーリーは気付く。

 今まで、アメリアの、この優しい笑顔以外の表情を見た事が無いのだと。


 何を話しても、いつも笑顔で相槌をうっていた。

 ミアと仲良くしても、嫉妬した様子も無かった。

 王家の馬車では無く公爵家の馬車で、ロバーツのエスコートで通学するように言っても、笑顔を崩さなかった。



 フーリーは絶望的な状況を感じていた。

 言うな。言わないでくれ。

 しかし、その思いがアメリアに届く事は無い。

 周りも何も言わずに、ただ成り行きを見守っている。



「自分は無関心なのに、相手には好かれていると思っていたのですね。なぜ、フーリー様はそんな勘違いをなさったのでしょう」

 アメリアは、ただ淡々と事実だけを告げる。



「私、フーリー様を愛してなどおりませんが」



 いつもの慈愛に満ちた優しい笑顔で、アメリアはフーリーを地獄へ突き落とした。




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