21a:愛してなどおりませんが
間抜けに舞台を見上げているフーリーに、アメリアは、丁寧に説明を続ける。
「婚約してから9ヶ月、何も音沙汰がありませんでした。その後、公爵家へ来てもフーリー様は、いつも一方的に話すだけでした。しかも交流2ヶ月目からはミア子爵と一緒。一度も学校へ一緒に行った事もありません」
アメリアが一度、呼吸を整える。
「入学後2ヶ月で婚約が破棄された事にも、気付いていらっしゃらなかったのですよね?」
「あ、あぁ。確かに、それはそうだが、それは、誰も何も俺に伝えなかったからだ!」
アメリアの問い掛けに、フーリーは自分は悪くないと言い訳をする。
それに対しても、アメリアの笑みは変わらない。
「少しでも私の事を気に掛けていれば、1年10ヶ月も気付かない事は無かったでしょう」
あくまでも、アメリアの表情は優しい笑顔のままだった。
口調も責めるものではなく、事実を告げているだけの冷静なもの。
フーリーは気付く。
今まで、アメリアの、この優しい笑顔以外の表情を見た事が無いのだと。
何を話しても、いつも笑顔で相槌をうっていた。
ミアと仲良くしても、嫉妬した様子も無かった。
王家の馬車では無く公爵家の馬車で、ロバーツのエスコートで通学するように言っても、笑顔を崩さなかった。
フーリーは絶望的な状況を感じていた。
言うな。言わないでくれ。
しかし、その思いがアメリアに届く事は無い。
周りも何も言わずに、ただ成り行きを見守っている。
「自分は無関心なのに、相手には好かれていると思っていたのですね。なぜ、フーリー様はそんな勘違いをなさったのでしょう」
アメリアは、ただ淡々と事実だけを告げる。
「私、フーリー様を愛してなどおりませんが」
いつもの慈愛に満ちた優しい笑顔で、アメリアはフーリーを地獄へ突き落とした。




