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11.5 陰陽、陰で企む


 紫電が去った少し後の屋上に黒い狩衣(かりぎぬ)を着た男が佇んでいた。

 大衆が見れば、陰陽師と表す格好したその男は、倒れている変態者2人をひニヤけながら見つめている。


「まさか、初日にやられるなんて思いもしなかったよ」


 陰陽師は2人の死体を観察していると、互いの手を握っていることに気づく。


「?あぁ、そうか!確か、交配実験させた子達だったか。仲睦ましくて結構!!」


 1人で納得し終えると、配電盤の元へ向かう。


「安定してるという意味では、比較的成功した個体達だったんだが、誰にやられたのやら。噂の無名雲雀(むみょうひばり)くんかな?」


 配電盤の蓋を開けずに、二本指を指すと中から蓋をすり抜けて、魔法陣が浮かび上がってくる。

 その輝きは紫電が見つけた時よりも、禍々しい赤になっていた。


「ま、それはないか。でも、だとしたら誰が?やはり、式神くらいは仕掛けて置くべきだったか…………」


 顎に手を当てながら魔法陣を眺める。後方にある死体の側にもう1人誰かが現れるが、陰陽師はそれを気に留める様子もない。


「法陣にダメージはなし。術式にも異常はない。これに関してはバレてないと見ていいか?」


 んんー。と悩んでいるが陰陽師はポンっと手を当てて結論を出す。


「法陣は消そう。拙僧の存在が少しでも露見するのは避けたい」


 陰陽師が指先でチョンと触れると、魔法陣は粉々に砕けて消滅してしまった。

 粉々になって夜空へと消えた魔法陣のことなど、もはや気にしていないのか、口元を押さえ、笑いを堪えているが、結局吹き出してしまう。


「ンフフフ……ヒャハハハハハハハハハ!!!こうも予想外なのは、流石に拙僧も昂るというもの!!」


 先程までの冷静沈着な風貌とは打って変わり、悍ましい笑い声と笑顔で高笑いし始める。


「ケッケケケ!!知人が死に絶え、ここまで笑ったのは本能寺以来だ!!!あの後、明智の首を…………」


 陰陽師は我に帰り、ゴホンっと咳払いをすると、後ろにいる人物に話しかける。


「さて、カーニバル。無視してすまない。今夜は何用かな?」


 カーニバルと呼ばれた男は死体を指差す。言葉な何も発さないが、陰陽師はそれだけでカーニバルの意図を汲み取る。


「こちらとしてもそれの処理は任せたい限りだが、やったのはおそらく執行者だ。もうじき、後始末する連中がやって来る。その代わりといっては何だが……」


「………………」


「今年の甲子園をいじめ、性暴行等で出場取り消しになった野球部が3年生含め、合宿行くらしい。場所は女性のソロキャンプが人気なキャンプ場そうだ。以前、性欲にまみれたスポーツマンを喰いたいと言っていただろう?」


 カーニバルはそれを聞くと、るんるんとした足取りで屋上を去っていく。


「良かった良かった。?まだ、何かあるのかい?」


 陰陽師が尋ねると、カーニバルは配電盤を指差す。


「法陣のことかい?大丈夫さ。君も知っての通り、今の人類じゃあ、あれは感知できない。気づくことあるとすれば、余程勘のいい人間だけだ」


 陰陽師が説明する中、カラスが一羽、肩に止まる。


「そもそも、配電盤(あれ)自体にちょっとした仕掛けを施してある。業者に開けられでもしたら困るからね。精神が強靭じゃなければ、開ける前に興味薄れて去ってしまう」


 カラスを追い払うと、陰陽師歩き出す。


「そろそろ、行こうか。どうやら、Z.M.Z(ザムザ)がここに向かって来ているらしい。してやられたね」


 月が彼らを照らす。夜風が一瞬だけ髪をなびかせると陰陽師はほんの少しだけ微笑む。


「計画が大分ズレるね。あの子達が死んだし、術式も当日用に、新しく練らないといけないか」


 最後にただ一言だけ、彼は呟いた。


「何にせよ、ネームレスがやって来る前に計画を事を進めねばね」

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