02
天使は赤黒い地肌ばかりの荒野をとぼとぼ歩いていた。追放先の地獄に着いてからは、こんな景色ばかりである。天使は自身の翼に目を向ける。翼は心の有り様を表しているように灰に染まっていた。堕天の儀式の影響だ。とぼとぼ歩いてはため息をつくこと数回、不意に声をかけられた。小柄で非力な小悪魔がいた。
「よう!そんなにため息ばかりでどうしたんだよ?」
「おいらはイービス。お前さんは?」
小悪魔は返答を待たず名乗る。
「私はエリー。」
「そんでどうしたんだよ?」
「実は・・・」
エリーはことの顛末をイービスに話す。
それを聞いたイービスは・・・
「バカバカしい邪神様なら指さして大笑いしてるさ。天界の神様もケツの穴の小さいことで」と笑って話す。
エリーからすれば笑い話では無いのだが。
これが堕天使エリーと小悪魔イービスの出会いであった。
その後も二人は語り合った。
と言うかイービスが畳みかけるように語った。
「お前さんは考えすぎだ!」
「もっと気楽に行こうぜ!」
「堕天使と小悪魔の地獄旅行と行こうぜ!初めは強欲の街だ!」
エリーとしても行く当ても無かったのでイービスと旅をする事に反対する理由も無かった。
地獄は管理人足る大悪魔と手足となる中級、下級の悪魔と本能を司る異界のため獣人と幻獣ばかりが住まう地。
エリーはこれから訪れる地に少しばかり心が躍る。
そんなエリーを見透かしたかの様にイービスが言う。
「これから二つばかり山を越えた先さ。」
イービスの言葉に気恥ずかしいあまり誤魔化す様にエリーは尋ねる。
「飛んで行こう?」
「合点承知!」
二人は飛び立った。