アイドルのDNA外伝
アメリカに渡るのは控えて海外ロケを利用して二人で静かな外国で戦略を練っている。やってしまった後問題あったかも?なんて思ってる。やはり映画卒業の後と言う現実は描くべきじゃないのだ。問題を帳消しにするという犯罪者的発想で動いている。
胡桃「信也、早川雪州の自伝を撮るって考えていたけどやめ」
信也「なんで?」
「あの人晩年までドラマたっぷりで映画でやるのもったいない。一部切るとるのもさらにストーリーとしてもったいない。後ね全体像で描くより一部を切り取って誤解される人格で描きたい」
「何それ無茶苦茶じゃない?」
「それがそうでもないのよ。そもそもそういうやり方で政敵を貶めるって手法って現代のマスコミが絡む政治家の王道の戦術だから」
「それ駄目なやり方じゃない?」
「これはリアルじゃないって事への反論で、善悪ならテーマの先鋭化って事でなんとかなる。どこかで虚構で良いのよ。その辺りも自伝とりたくないのもあるんだよね。まず自分がそんな脚本書けない…。書こうと思ったらかけるよ。ただ観客魅了するような自伝になるか?分からない」
「あれ役者では否定してたじゃない?」
「あああれはね、うちはどっちかと言えば書き手なの、それは信也も遠回しに指摘してたじゃない」
「まあそういう意味じゃないけど、確かにコンプレックスからそっち側に立ちやすいよね」
「まあそんな感じ。役者の魅力的な役は全方位なんて無理ってのが持論だけど、確かに信也が言う役者の飛躍的インスピレーションは否定できないね。当然サイコ知ってるよね?」
「うん」
「アンソニー・パーキンスがどんな人格だったかは?あまり突っ込まれてないみたいね。実はの顔?みたいな見方もあるみたい。どちらにしろうちが考えるような単純な自己の引き出しとは限らないと思う。それでも映画史に残るハマり役になったのだから」
「そこまで分かっててなんで?」
「まあ言われて気が付いた、自分ではこの手の視点は冷静なつもりだけど、目が曇ってたんだろうね。まあでも今回のテーマでもあるのよね。売れる役者を雪州は理解してたんじゃないかな?と見てる。この人自分で映画作り関わってるけど、何故ハリウッドですごい功績なのにまるで偉業が残ってないか?と言うと作品がね…」
「同時代のチャップリンが後にも語り継がれるのに比べて日本人が日本人スターとして知ってるだけなのよね。死んだのも日本だしね。その原因が売れる映画は分かるけど、良い悪い映画には鈍感だったのじゃないかな?とね」
「玄人受けするってやつね」
「重なることが多いけど、後世に影響を与える映画って玄人受けが多い。普通に見ると映画会社が求める役を演じるしかなかった時代となるけど、そう単純じゃないのよね…。その枠を同じ視点で楽しんでいた節がある。同時に、自伝として描くと後半生が出ると当時からインチキな日本人像に葛藤があったってが強くなるの」
「ああもう1つの面が見えにくくなる?」
「そう、うちは今のマイノリティを画面に出せってハリウッドの姿勢気持ち悪い。観客が楽しめる映画のどこが悪いんだ?それを裏テーマにしたいんだよね。だから自伝は邪魔なの」
「かつリアリティの要求が強くなるから」
「そう。まあ後さ自伝じゃないと描く価値が薄い」
「ええ」
「それぐらいあの人の人生濃いの、戦争を描かない戦争ドラマ作れるよ。まるで戦場のピアニストみたいな。敵国アメリカの映画俳優でナチ占領下のフランスにいた反ナチの日本人香ばしすぎる…。こんな重厚なドラマ魅力的に描けないよ、うちだと背一杯頑張って重いだけのつまらなさになると確信できる」
「リアルさに自信が無いから逆にリアルに頑張って、つまらないもの出来る事ね」
「あなんで分かる?」
「たびたびくるみんってそういう映画作るからー」
「お前つまらないと思ってたのかー」
「いくつか微妙なのがあるとは思ってるでしょ?」
「まーね逆に描写に自信が無いから妙にリアルにこだわるんだよね。んで思い切りファンタジー色出すんだけど、奥さんが夢で未来の映画を見て面白いと思ってそれを雪州にやらせてみたくなる話」
「それくるみんじゃん」
「これがそうでもないのよ、有名な戦場にかける橋って奥さんいなきゃ断って終わってた。奥さんが目を通してこれやるべきってやる気が無かった雪州に力説したんだよ」
「意外とリアル」
「まあこれタイトルさ早川雪州の妻にする」
「はい?」
「作中劇にする。たびたび奥さんしゃしゃり出てくる。でもそれが自然なようにこのEPが生きるわけ。セブンか羊たちの沈黙にしたいけど、これ元ネタの許可居るよね?」
「いるだろうね」
「めんどくさいな。雪州リスペクトで片づけてくれんかな?」
「無理だろうね、両方の権利者、雪州リスペクトある?」
「無いだろうね。うちが勝手に抱いてるハリウッド黎明期の貢献者へのリスペクトだからね」
ドラマの撮影後日本に帰るのも問題があるので、ついでに渡米して駆けずり回った。単純な自伝じゃないってのでなかなか大変だった。だがこれが漫画テイストだと分かってくれた映画の上層部が面白いと思ってくれた。なんでそんな偉い人に?まあいろいろ伝手があったとの大半クローンガールだ。
元々この計画はうちの知名度を利用したところがある。なおかつうちが主役のように受け取れるタイトルも効果的だった。役者としては圧倒的に日本では知名度は信也が上だが、単純な知名度ならうちが上だしネットフリックスの経験も生きてる。
問題はちょい役で真田さんに出演依頼した点だ…。マジちょい役、いろいろ調べたけど重要な役で登場するための史実が無い。じゃフィクションじゃないか?年齢的に微妙な役者が当時出演できずにくすぶっていて、それを拾上げるって形で良いかと。映画史には残らずとも多分そういった無名のアジア人役者が雪州の周りにいたと思ってる。
ある意味史実かもしれない想像。まあキングダムキョウかいはいるけど、かりょうてんは怪しいからな…。史実において問題のないオリキャラってある。絵的に、当時の雰囲気が難しいだけで後はそれほどは問題ない。そうなると順調に進んだ。
くそめんどくさい日本人キャストはもうすべてアメリカに任せた。当然中国人のオンパレードだろう。どーせ英語の劇なんだ問題ない。日本にも帰らないし、そこも自伝を嫌った部分。いやいつか日本に帰るよ?たんにスタッフが日本とアメリカ行ったり来たりじゃ金かかりそうって思ったから。
いろいろ考えていてリスキーな自伝は、この映画がヒットしたら夫婦役で出してくれれば一切問題が無い。多分これがヒットして続編ならキャストさえ同じならすべて任せられる。ヒットしたらドラマで長い自伝をやろうってなったら当然この作品のキャストが意識される。
くそ苦手な部分全部任せて美味しい役者だけできる必殺のやり方。これがこけたらまあそれまでさ。奥さんは良いが、早川雪州は千葉信也以外考えられないって常識にしたい。
撮影中ブラッ〇ラグーンの放送が始まっていた。
胡桃「うーん」
信也「不満だね?」
「いや悪くない、ネットの評価も見てるけどキャストは文句なしと言ってくれる。一番これが嬉しい。なのにこれアニメ版の方が面白くない?」
「それは役者としては言ってはいけないのでは?」
「いやーその今回は君よりうちの方が重要なので言わせてもらうよ。これね、問題のある実写化の一例になるかも。大体の実写化の失敗って絵的なものなんだよ。役者を含めてね、その文句がほぼない。ネットの特徴なんだけど、悪い点があると嬉々として叩くんだよ。これ欠点が無いがだからってアニメ見た人はどうなのかなこれ…」
「確かに明確にこれって悪口無いね。中にはくるみんがやった日本でのあれでかなり怒ってるファンの人がいるけどさ」
「お前のせいだー」
「そうだけど相談なしにあれは無いんじゃない?」
「クローンの時は任せてくれたじゃないか」
「そっちよりあっちの方が問題になってるのがね…」
「まあ良いやおいておいて、つかー君もファンの一人だからか良く気持ちが分かるんだろうね…。それでもおいておいて、この作品って実写的設定に巧みに漫画的嘘があるよね…」
「多分そこだろうね。アニメは漫画的嘘を動画として吸収できるんだろうね」
「うん絵が持つものだろうね。この作品の根底がハリウッド映画のクライムムービーに多分影響受けてる。それを漫画的嘘で大胆に想像を豊富に追加して作ってる。そこから漫画的嘘を取り除いてアメリカドラマに落とし込んでしまうと他のクライムムービーとの差別化が出来てない」
「悪いところはないが、アニメにあった刺激が弱いんだよ」
「ありふれてる?」
「ものすごく問題点を大雑把に言うとそうなる…、これかなり古い作品で見た目実写向いてるのに、何故実写化無かったのかなんとなく分かるな。ハリウッド知ってた?」
「かもね。ただ映画にするには章ごとに区切ると短すぎて、原作をある程度長くやるには長すぎる。そっちかもしれないよ」
「まあ白人がものすごく出るが、主役とヒロインがアジア系なので、舞台が東南アジアなのでホワイトウオッシュしにくいのもあるかな…」
「まさにこれからやる映画のテーマだよね」
真田さんカットできるようにぎりぎりまで交渉粘ったら出てくれた。ちょい役なのにそこまで何故こだわった?まあラストサムライみたいに剣道の試合やりたくてね…。馬鹿忍者映画じゃないか?ならまあ実は早川雪州ってスポーツ万能で、剣道をはじめ格闘技の有段者なんだよね。だからある意味リアル。
元々真田さんに殺陣の稽古つけてほしくて、上手く仕事を絡めてこの部分友情演技指導で無料にならないかなと…。つかーお前くるみんに青春捧げないで部活やれよ言いたくなる運動神経が良い…。絶対こいつスポーツやって活躍出来ていたらモテたぞ。
撮影は順調に終わった。真田さんそのためもあった。うちが原案だから日本的なアメリカ知らない、アメリカ的な日本知らないの両方を指摘できるから。ただ歴史考証は多少雑にやった。だってそのために自伝って形とってないんだから。さあでき合ったものを見てみますか。
時は1920年代前後のアメリカ。早川雪州は日本人に向けられた悪意あるステレオタイプを演じる事と決別を考えるが、それじゃ儲からないと経営的視点からチート以来の路線に戻していく。葛藤と言う言葉で言い表すには単純すぎると感じる心理の中、妻鶴子からおかしな夢について話をされる。
鶴子「おかしな所が一杯あるけど、そこは大目に見て話を聞いて、夢の中で面白い映画を見たのだけど、役者が話す映画なのよ」
雪州「なんだそりゃ」
「でも蓄音機で声は聞こえるわ。ただレコードの分じゃ短いでしょうけど。映画の間ずっと声が出てる。そうね、まるでそういう機械が発明されたみたい」
「なるほど、アメリカ暮らしが短いから分からないが、長いものなアメリカではよくある事か」
「ええまるで未来の話、そうそう夢って色をあまり意識しないのだけど、その映画には色がついてた」
「未来の映画か」
「これ以外はそうデザインが何もかも違う。電話が出てくるけど見た事が無い形。服も、いや近いわね、和服と洋服ほどは違わない、何かが違う。細かいところはいっぱい変だけど、まあその辺りは良いわストーリーとしては問題ないから」
「土台見たいのはシンプル。大雑把に言ってしまえば、刑務所の凶悪犯が似たような事件を女性警察官と解決する話」
「女性警察官は珍しいな」
「ある事はあるらしい。ほらジュールベルヌ?言ってみれば未来の映画SFなのよ。でもほぼ現代に置き換えられるから、その時どうしても外せないのが、女性警察官なのよ。フィクションだからその辺り一応ぎりぎりリアルなら良いのじゃない?」
「なぜ必要?」
「ちょっと二人の関係がいやらしい。ちなみにこの犯罪者年取ってる。要するにこれあなたに向いてないか?と思ったから」
「おいおい今そういうのはやめようと」
「いや私にはその辺り良いよ。理想と現実ってやつでしょ」
「うん、現実ってわけでもないんだ。スターとしての地位の維持ってエゴと言えばエゴだ。金のためとかそんな単純なものじゃない。なんと言うか、実際自分で経営者となって理想の映画を作ってみると売れない」
「じゃもう良いでしょ?そうね、これね老人だけど若くても良いと思う。結局ねあなたと元の役者どっちが適役か?なら元の役者よ。でもそれは世界で私しか知らないの。じゃあなたが似合わないのか?ならこの役者を知らなければものすごくはまると思う」
「実際ある映画じゃないからな。君の頭の中の映画か、ならなんらその役者に引け目を感じる事は無いな」
お金はすぐに集まった。またチートの再来ともいえる映画を早川雪州が撮るの言うのだから、しかも内容が見た事もないのに早川雪州を魅せるツボはきちんとついてるっておまけつき。
スタートは皮膚をはぎ取られた若い女性の連続殺人から始まる。ただ撮影は思ったよりスムーズには進まなかった。絵としてみると何か違和感がある。そこをその都度直していった。
雪州「実際見ると刑務所の中にいる凶悪犯罪の東洋人何故死刑にならない?」
鶴子「外交的にね、日本でも有名な教授でアメリカに請われてやってきたと。人種差別的な言動をはかれて憤慨して殺人に至ると、まあ相手がろくでもないってのがキーね」
「元聞いた話と偉く違う。それどうやって伝える?」
「まあざっとで良いと思う。ミステリアスがあなたの売りなんだから。すべてを説明する必要ないかと、そもそも天才的頭脳と、凶悪犯罪者って経験から解決のために選ばれたんだから」
「こんな制度ある?」
「ああそれは良いと思う。これよく考えられてる。シャーロックホームズ読んだ事ある?」
「無い」
「あれ当時の警察の捜査に参考にされたらしいから、これもそうなったら嬉しいでしょ」
「そうだね、すでに表ざたになってないだけで秘密裏にあるかもしれないし。だが殺した相手を食べるのはどうなの?」
「あなたいろいろやりすぎたのよ、より過激にってなる。後ね、食べるって前代未聞によってそれについて裁けなくなると見てるの。殺した時点で終わってない?後料理するのがポイントね、そこは描かないけど、そこに知性を感じる」
「知性ね…」
「人が人を食べるなんて、世界中にある。日本でもあったらしいから、あなた知らない?」
「近所であったらさすがに話題になる」
「飢えて食べる。これは当たり前にある事だから刺激的じゃないの、殺した相手を食う。教授は知的な人よ。なのに食べるの、初めて見た時衝撃だった。それで頭が止まってしまう」
未来の映画と仮定して、現代とのずれ、ぞれが進行を遅らせた。でもこれは問題ないと思う。その分刺激的なメリットがある。この問題は必要経費、SFとして撮るわけにはいかないから。
度々違和感が出て脚本の修正と演技へのアドバイスが入る。ちなみにこの女性は私ではない。これは白人女性じゃないと駄目。
「そのこれら卑猥な問い詰めとか刺激的とわかるが下品では?」
「そこはあたなの演技にかかってるから。その辺りは元と違って声が無いのは良いわね。私は原案で脚本雇ってほしかったのだけど?」
「いや大半がこっちが飲み込んで消化するから、間に入れない方が良い。そもそもこれなんて相手に伝えるんだい?」
「ああ未来の話ね、すごく良くできてるから問題ないと思ったけど、夢で見たんだけどと私が言ったら相手にされないかな」
「そうだねそう思う」
やがて映画のタイトル「The Silence of the Lambs」ともいえる核心部分にくる。
「これすごく良いね」
「分かる?」
「君が何故東洋人でもと言ったのかわかる。これは東洋人が言うと意味が違ってくる」
「西洋の牧畜文化とまあ東洋じゃない、日本の仏教の影響の食に対する禁忌があるからね」
「今は普通に食べるけどさ」
「それでも圧倒的に肉の消費量が違うよ」
「後、この二人の話す内容って演技に似てないか?」
「ああうん、犯人の立場になるってのが確かに似てるね。スタニスラフスキー・システムと似てるかも」
「何それ?」
「ロシアの舞台人。そういう話を小耳にはさんだことがある。まるで体験したように演技するって」
「なるほど、現実的なものなら良いけど、すべての作品に当てはまるのかな」
「そうだね、それ以外の演技を否定してるわけじゃないから。今回の話が似てる部分ね」
映画の合間合間に、二人の生活を取り巻くものも見えてくる。当時邸宅は城と言われてて、実際城に似せて作ったものだった。そこでは様々な映画の著名人とのやり取りや宴のような場が度々あった。ただそういったものだけじゃなくて、雪州は日本人や貧しい映画関係者を面倒見てるところもあった。
その一人であり城の警備員みたいのをやってる武術の達人の中年の役者がいた。二人は剣道の稽古をしていた。雪州は日本の体術や剣術などの有段者でたまに気晴らしで稽古をしていた。真田はその相手になっていた。
真田「最近また排日的な映画を作ってるようだが?」
雪州「そりゃ協会のトップだから矛盾に見えるけどさ、それでも金のためだけとは言えない。仕事で見る人がいない売れない映画を作る意味ってなんだ?」
「結局金のためじゃないのか?」
「そうだけど、前なら悩んだ、でも実際理想通りの作品を作って、アメリカ人からは全く評価されずに金がどんどん出ていくこの現実にどうすればいいんだ?他にもだ金のためだけじゃないと言ったのは、この邸宅は日本人の成功者として日系人も妬むより希望になってる。そういったスター性の維持というのも欲求としてある」
「自分の満足のために日本を利用するなと言ってるわけじゃない。誤った日本人像で良いのか?と言ってるんだ」
「真実は描けるし、同じ日本人委は伝わる、それは良く分かった。だが、それでアメリカ人の観客の楽しみになるのか?今までは映画会社の作りたいものって意識してた。だが自分の思い通りの作品が作れると逆に自分は経営と言う視点を持つようになり、これは意味が無いのでは?と思えてきた」
「例えばだ、お金を儲ける排日に繋がる映画を作って、そのお金で正しい日本人像の映画を作る。この事であんたは満足してくれるのか?」
「おそらくだが、誤った排日に繋がりやすい邪悪な日本人像の映画を数多く作り、一部そうじゃない映画を作ればなんとかなるんだな?」
「そうだ、現実的にそうなる」
隙になったんだろう、雪州が一本取れて試合は終わる。話は終わってしまったが、雪州はその数多くの映画が正しい日本人像の映画の意味を無くすだろうなと考えてはいた。もう葛藤やジレンマと言うところで考えては無かった。実際理想の映画を創ってしまったからだ。
当然これ以上の理想はある。アメリカ人にも受ける、正しい日本人像の映画を作るしかない。ただ雪州にはその映画が創れる確信が全くなかった。
ストーリーはクライマックスに、教授のヒントから犯人に徐々に近づいてくる。物語は核心に迫っていき、裁縫道具と殺人現場で被害者の口にあった特殊な蜂を見つける。これらから犯人の居場所に確信を得て犯人を捜すと見つけた男は地下室に逃げ込む。これを追って危機一髪で射殺して次のターゲットの被害者を助けて事件は解決する。
最後が問題になった。
雪州「電話ってそんな普及してない」
鶴子「あらそこまで酷くないでしょ?」
「人による、彼女は何か特別な人なのか?」
「そこは無視しましょう。そこに強く違和感を覚えるほどの普及の悪さじゃないわ。あなた日本の事情のせいじゃない?」
「確かにそうかもしれない。アメリカは本当に機械が発達して社会に普及してるな。彼女は持ってるかもしれないが、持ってないかもしれない。そんな曖昧な立場の人間だ。確かに神経質になりすぎた」
最後のやり取りは夢の通り電話になった。雪州は手紙と言う代案も考えていたようだ。ただ女性警察官から2,3返答したのでやめた。羊の悲鳴はまだ聞こえるかい?で二人の独特の関係が上手く出せた。陳腐な言い方ならこの時の教授は気遣いが出来て優しいんだ。ただその後古い友人とディナーをするのでと電話を切ってしまう。
教授の視線の先には冒頭に出てきた彼を侮辱した他の知り合いが移り、雑踏に消える教授で物語をしめる。
出来上がった作品の試写を見る。字幕がどういう効果になってるか確かめる意味もあった。
雪州「どう?」
鶴子「問題ないわね。それよりこれ、何か違和感がある」
「ああ感じた。受けるとは思う。ただこれまでとは何かが違う」
「ああ分かった、これ東洋人じゃなくて良い」
「ああ、受けるとは思うが、これは怖いね…」
「私の話を聞いたからじゃない?」
「うーんそうじゃない、鉄板のパターンってのがあるんだよ。それを外れるのが怖い」
「そうね、ただこれあなたの理想に近づく一歩では?」
「なるほど、悪役を演じるのが問題じゃないんだ。日本人像って見られるのが問題なのか。確かにこれでも自分への受けは出せるかもしれない。ただ自分としては観客が求めるイメージを演じるのが悪い事じゃないようにも思るようになってきたんだけどな」
「難しいわね」
ラストはいつもの城での宴が流れて、また真田とのやり取りになる。
真田「映画と見た」
雪州「どうだった?」
「勝負の後にな」
雪州は考えていた、前回一本取られたの不満らしい。こっちも有段者なんだ。だが最終的には一本取られて負けてしまった。有段者と達人の違いか。警備のため銃は持ってる。ただその前のやり取りがある。そんな時接近戦なら銃より刀の方が強いんだこの人。刀持ってる警備員もなんだけど、日本人俳優の家と分かってるから良いのだろう。
「誤った日本人像とは言えないかもしれない」
「それはそれで問題だけどな、原案が鶴子だが、彼女が言うにはあれは善人とは絶対に言えないが、日本人じゃなくても良いらしい。こういう役もあるのかと思ったが同時に、日本人じゃなくても良い悪意ある人物を自分が演じて観客は納得してくれるのか?は分からない」
「まあ結果次第だろう」
「自分がどう受け止められてどういった魅力で受けてるのか?それは分かってるつもりで、満足できる役になった。それでもだ怖い、白人の誰かに奪われそうで」
結果として、興行的に大ヒットとなり。批評家たちからも帰ってきた早川雪州と大絶賛だった。
胡桃と信也は出来上がった映画の試写を見ていた。
胡桃「どう?」
信也「面白かったよ。しかし馬鹿な話だよね。早川雪州でこんな映画とろうって誰も思いつかないよ。自伝が普通じゃないかな?」
「お前を早川雪州でアメリカで使いたかったから執念で、冷静になるとなんて馬鹿な映画だと思う。これ下手したらB級テイストだよな?」
「漫画っぽいからね。でもこれ今のハリウッドのマイノリティ問題すごく盛り込んでない?」
「伝わると良いね、真田さんに出てもらったのがその意味だから。こういうのはね差別されてる側が言わないと言いづらいからね、ただ葛藤してたのは確かで、そういった意味で真田さんってある意味雪州の心の声なんだよ」
「それに剣道させる?」
「葛藤って内なる声が戦ってるイメージあるじゃない?」
「ある意味ポエムだよね。ところで邸宅に道場あったの?」
「知らんよ…」
「くるみんって結構ハリウッドの雑な日本像に近いような…」
「真田さんには悪いけど、分からんでもないよってのはある。ただね、史実で例えなくても、金持ちだからありそうってのがかなり雑にやれるんだよ」
「後チャップリンのそっくりさんどこで見つけてきたの?」
「あああれ、映画会社が用意してくれた。さすがハリウッド準備してるんだろうね。でもちゃんと自伝作ってくれるならネットフリックスが良いけどね」
「そこは仕方ないよ。映画会社の動画配信でも良いんじゃない?」
「そうだね、質の高い人間ドラマはそっちにおまかせだ。これはさ、ある意味フォレストガンプなんだよ」
映画はぼちぼちだった。ただ映画会社狙いがあったようで、日本で大ヒットした。割合的には白人ばっかり出てて、かつもろアメリカの時代劇なのだが。メインと真田さんのおかげかな。というかうち嫌われてないの?いやまあ層がファンじゃないのかな…。ああ忘れてたこれ信也のファンが混じってるな…。
ただ映画好きには信也とアニソニーホプキンスとの比較でイマイチとさんざん言われた。アホ!その見方邪道だ。そんなの分かってて、ビートルズが出る前にビートルズの曲だしてしまうSF的話なんだよ。それより当時羊たちの沈黙受けるのか?の方が何とも言えんわ。
今の時代なら早川雪州って難しいかもって別の意味でSF的な考えになっていた。アメリカ人が当時と比べて日本人に慣れてしまっている可能性。早川雪州って初見殺しな面があったかな?って思える。他にもまだある。アイドル飽和と似てるんだ。スクリーン上のイケメン俳優にアメリカの観客が慣れすぎてる。
純粋に早川雪舟ってイケメンなんだ。もうちょっと目がなと思って信也は拘ってるけど。あまりに目が特徴的なのでアジア人として見すぎてしまっていた。他のパーツがかなり整ってるんだよな。鼻が特に特徴的なんだよな。彫は浅い、でも高さも全く違うのに白人のイケメンの鼻に雰囲気が似てるんだよな。
ゆえに当時の受け手側に立った時浴びてる刺激が少ないってのがかなり重要なんだ。うちとあろうものが、人種を超えた美を見落とすとは…。まあアメリカでぼちぼちだったのが引っかかってね。目的が達成できなかった。アメリカに千葉信也を見せるって点では完全燃焼できたので、がっくりは来てない。
映画の日本での反響を見て、映画会社が出資してる制作会社と関係のある動画配信で早川雪州と言う人物は金になると、自伝のドラマ化決定をした。ただこれはそう単純ではない、どうも韓国でそこそこ良いようだ。中国での公開がキーになるかな。
日本アニメで独特の親和性が3国にはある。これと似た現象があるのではないか?と考えての事の様だ。なんでこんな内訳を?すぐにアメリカにいる間にうちらにオファーが来たからだ。早く帰れよって所だけど、クローンガールとしていろいろ呼ばれて映画の宣伝も兼ねてほいほい出かけてる。
信也はその後帰っている。まあネットで話すんだけどさ、またこっち来たそうにしてる。だがな…、君仕事途切れさせたら不味いから…。こっちに活動拠点を移すようなヒットはしなかったからな…。ただ自伝の話が決まったらオファー全停止だな。アメリカはとりあえず企画立ち上げてボツがものすごく多いからな…。
なんていうかな、すごく複雑な気分。これ脚本次第で良い映画になるから受けないといけない。ただ大ヒットはアジア圏だけかも。アメリカが生んだ外国人スターだぞ。ネットがある意味国境を壊してしまったので、国にこだわるって変かなって思いも出てきた。
どの地域で偏りが出るか?そんなデータ分析みたいな気持ちになってしまってるんだよね。ハリウッド黎明期の人物と重ねたうちが古かったのかもしれない。動画配信は映画の没企画よりマシなので、まあまだ日本帰りたくないから本決まりになるか様子見て、クローンガールが飽きられるまで映画の宣伝しますか…。