番外編11〜連れて行って欲しい。〜
高校を退学した後も、私は私なりに頑張って生きようとした。このままじゃいけないと思って、アルバイトだってしてみた。でも、何で皆アレやソレと指示されただけで、すぐに何の事を言ってるのか分かるのだろう。
何で私だけ皆が当たり前のように分かる事が、理解出来ないのだろう。何で皆が当たり前に出来る事が私には上手くこなせないのだろう。バイト先で叱られる度にちゃんとそれを改善しようと、頑張ってみるけれど、すぐにまた同じ失敗を繰り返してしまう。そんな自分が嫌になる。
私は人から言葉で説明されるのが苦手だ。急に口で何か言われても、私の頭の中には中々入っていかない。それが大事な事だと分かっているのに耳から入った言葉がもう一つの耳から記憶として定着する事なくそのまま素通りしてしまう。そんな感覚に近い。でも、そんな人はバイト先には私くらいしかいない。不思議な事に皆スラスラと頭の中に入っていってるようだ。文面で見ればすんなり分かる事も口で話されると、全然分からなくなる。まるで、言語の分からない別の国に一人取り残された気さえしてくる。そんな私に出来る事は、それでも頑張って辛くないようにぎこちない笑顔を見せる事だけだった。
きっと、私は別の星からやってきた宇宙人なのかもしれない。この星には私が何か間違いを犯し、その罰として、生まれてきてしまったのだ。両親の元には私じゃなく、本来は別の子が生まれてくるはずだったんじゃなかろうか。そうじゃなければ、こんな出来損ないの欠陥人間があの優しい両親から生まれてくるはずがないのだから。
両親は学校を辞めても、アルバイトがうまくいかなくても、一度も私を責める事をしなかった。それどころか、逆に両親は、「ごめんね。」と何度も私に謝った。
...両親は何も悪くない。そんな事本当は分かっている。悪いのは私だ。
私は普通になれなかった。普通になりたかった。友達の家に行って遊んでみたかった。友達と恋愛話だってしてみたかった。昨日見たテレビ番組の内容を語り合いたかった。部活で皆と一緒に一つの目標に向かって、何かを成し遂げたかった。おしゃれもしてみたかった。化粧もしてみたかった。色んな所に行ってみたかった。沢山してみたい事はあった。でも、何かをしようとすると、私如きがそれをしては許されない気がした。私に出来る事は、この部屋から星を眺める事だけだ。
私をこの地球に送り出した宇宙人が、この宇宙のどこかにいるのなら、私を早く見つけ出して欲しい。私が何か罪を犯して、流刑としてこの星に送り込まれたのだとしたら、許して貰えるように謝るから、償うから、早く元の星に帰してほしい。
宇宙船で私をこの部屋、この星から連れ出してほしい。私が分かる世界に連れて帰って欲しい。
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