最終章4話〜そんな気がした〜
この世界に来て、二日目で私のレベルは12になっていた。多分これは相当早いペースだと思う。親は私が部屋で何かしてるのに気づいてはいたと思うけれど、特に何も言ってくる事はなかった。その事に安堵した私は夢中になってプレイし続けて、久々に徹夜までしてしまった。それほどまで没頭して、この砂漠でモンスターを狩り続けていると、気づいた事が一つあった。
それは、もしかしたら私はこのアバンダンドの世界ではかなり上手いプレイヤーなのかもしれないという事だ。
...分かってる。こんな事を言ってたら、初心者特有の万能感で自分がゲームの主人公のように感じてしまうアレだろと思う人もいるかもしれない。だが、私は自分で言うのもなんだが、私の自己肯定感は終わってる。高校も中退。アルバイトも続かない。あげくの果てに、精神のバランスを崩して、病院にまで入院した現役の引きこもりだ。自己肯定感なんかとうの昔に捨てている。その私が自分で自分の事を持ち上げるくらいにはかなりの確信がある。
最初の数戦は慣れてない事もあり、モンスターにやられ、戦闘不能になってしまったりもしたが、今はモンスターにやられるなんて事はまず無い。推奨レベルよりはるかに高いレベルの敵と戦っても、難なく攻撃は避けれるし、ソロで倒す事すら、さして難しくはない。まぁ、これだけなら私もここまで自惚れた考えを持つには至らなかったろう。
私が確信を持つに至ったのは弓が大部分を占めている。単純に矢は消耗品であり、初心者でお金のない私には絶対に一本も無駄に出来ない。そんな思いから、集中して矢を射ていたが、途中で私は気づいた。
私は狙った所に一本も矢を外した事がない。
最初は弓は簡単な武器と思っていたが、周りのプレイヤーを見ていると、どうもそうではないらしい。そんなに遠くでもない敵にすら、矢を当てれていないプレイヤーが大半だった。これは我ながら多分相当凄い事なんじゃないかと思い始めている。
かと言って、私がこの世界で弓の才能があるから、現実でも弓道やアーチェリーなどの才能があるかというと、きっとそういうわけではないのだろう。きっと、現実で弓道をしてみてもボロクソな筈だ。あくまでも、私はゲームの世界で弓の才能があるというだけだ。そこをいっしょくたにはしない。現実とゲームを同一で考えるほど愚かではない。だけど、少しだけ私は自信がついていた。この世界なら、こんな自分でも輝ける。自分は生きていける。そんな気がした。
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