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第2章10話〜らしくないなぁ〜

《ギルマス!悪いけど、私がアルゴちん貰っちゃうからね!》


 私はギルマスに個人チャットを送ると、《勝てるならな。好きにしろ。》と直ぐにギルマスから返信が来た。


 良し、お墨付き貰えた。正直ラビッツフットが勝とうが負けようが、私にはどっちでもいい。本当にラビッツフットを裏切っても良かったくらいには、ここに思い入れなんてものはない。他のメンバー達と違って、私はそれほど四大ギルドを潰す事に興味はない。


 私はアルゴちんと二人でイチャイチャ出来てればそれで良かった。だけど、いくら誘惑してもアルゴちんは私に靡かなかった。多分アルゴちんは私以外に好きな人がいるのだろう。まぁ、その相手は十中八九メズちゃんだ。だから、メズちゃんをぶっ潰せた時は最高に気持ち良かった。今でもメズちゃんの首を掻っ切った時のあの絶望した表情を思い出すと、ニヤついてしまう。


 それに、私が最強争いに興味が湧かない理由は、もう一つある。それはメズちゃんよりも、レグルよりも、アルゴちんよりもギルマスよりも、私の方が強いからだ。だから、二番目、三番目を決める最強争いなんて、興味わかなくたって当然じゃない?


 アルゴちんの後ろにいるオーガのアル太は蘇生魔法をレグルにかけ始めている。蘇生魔法はHP回復魔法よりも遥かに詠唱に時間がかかるし、MPの消費も激しい。上級蘇生魔法でも、10分間は最大HPは8割程度になってしまうデメリットも大きい。そういう意味では経験値のデスペナは受けるけれど、戦闘面でのデメリットがほぼなく戦線に復活出来る蒼穹回廊の効果の強さを改めて感じる。


 私は詠唱を中断させる為に、アル太目掛けて突っ込むと、アルゴちんがバックラーと言われる小型の丸盾で私の曲刀での突きを受け止める。それでも機動力重視の小型の盾だ。レグルのようなタンクロールが使うような大きくダメージを減らせる騎士型の大盾とは違い、衝撃によって与えるダメージ量は多少あり、アルゴちんのHPゲージにも変動がある。


 良いね、流石アルゴちん。やはり、今までの雑魚とは動きが違うなぁ。


「ね、戦う前にアルゴちんが私にラビッツフット最強って言った事覚えてる?」


 私の質問にアルゴちんは軽く頷く。


「あれ正解だよ。ギルマスは絶対に認めないだろうけど、PvEだけじゃなくPvPにおいても、ラビッツフットで私が一番強い。ゲームで言うなら、私はさしずめラスボスより強い中ボスって感じかな?」


 私の言葉を聞いても、先ほどからアルゴちんは黙り込んでいる。どうも様子がおかしい。こんなにテンションの低いアルゴちんを見る事は滅多に無い。


 もうっ、せっかくの本気のPvPなのにテンション低いなぁ。もっと楽しんでくれないとつまらないじゃん。


 私は水魔法を発動させる。海賊は水魔法に限っては魔法使いに近い威力を叩き出す事が出来るジョブだ。だから、海賊こそが私はアタッカーとして、最強のジョブだと思っている。


 海賊は魔法による遠距離攻撃。銃による中距離攻撃。剣による近距離攻撃と全ての状況において対応出来るオールラウンダーだ。その分、専門性がない器用貧乏なジョブとも言われがちだが、それは単にプレイヤースキルのない雑魚達の言い訳だと思っている。私のプレイングであれば、近距離、中距離、遠距離とそれぞれ専門にしているジョブを海賊一つで超える自信がある。


 私の手から放たれる水柱はうねり、先端を槍のように尖らせながら、アル太へと飛んでいく。再びアルゴちんはアル太を庇いに行くが、今度は斬撃ではない。魔法攻撃だ。バックラーでは完全に受け切る事は出来ない。


 槍のような水柱はアルゴちんの体に突き刺さり、大きくHPゲージを減らすものの、そんな献身的な動きのおかげで、レグルの蘇生は成功している。


「俺の事はいい。行け!」と言うアルゴちんの声にアル太と蘇生を受けたレグルは砦に向かっていく。


 雑魚達が何人砦に行ったところで、別にギルマス達はそんなに苦労はしないと思うから良いんだけどさ。...なーんからしくないなぁ。アルゴちんなら、私の魔法攻撃なんか隙ありと言わんばかりに、レグルやアル太を見捨てて、私に襲いかかってくると思ったのに。まさか庇うとはね。


 ま、襲いかかってきたら来たで、また別の対処法も考えただろうけどさ。...何だか思ってたよりアルゴちん、歯ごたえないなぁ。もっと本気になってもらわないとつまらない。


 私は大きくため息を吐く。


 ...しょうがない。やる気を出させてあげる事にしよう。嫌われちゃうかもしれないから、話したくなかったんだけどね。


「ね、アルゴちん。覚えてる?」と、私はアルゴちんへと話しかける。


「うまく運営費徴収できなかったから、アルゴちんパワハラまがいの事して、私の事庇ってくれたじゃん。あれって私の策略なんだよね。あの時の音声録音して流したの私。あーすればきっと追放されて行き場のないアルゴちんを支えて二人だけの世界になると考えたんだよね。」


 私の告白にアルゴちんは何も言わない。お、多少は腹立ててくれたかな。


「そしたら私が支えに行く前に、速攻別の女作ってたのは呆れたよ。性格終わってるよねほんと。一人寂しい思いさせたかったから、時間かけて会いに行こうとしたの失敗だったよ。」


 怒気を込めてアルゴちんに私は言い放つと、アルゴちんは消え入りそうな声で私に頭を下げて、「悪かった」と謝罪してくる。


 いやいやいや、おかしいでしょ。普通逆でしょ逆。私に怒ってくれないと。


「...何でアルゴちんが謝るの。予定外なんだけど。私の事怒ってよ。キレてよ。」


 私は焦って、更に言葉をアルゴちんに投げかける。


「んじゃ、んじゃ、メズちゃんの裏アカ、拡散させたのも私。あの子の事大嫌いだったから、思った通りに炎上してくれてマジウケたんだけど。」


 アルゴちんは、私の告白に対して怒る事もなく何度も私に、「すまなかった。」と謝り続けていた。

お読みいただきありがとうございます。

面白く感じていただけたら、ブクマと評価していただけるととても嬉しく思います。


よろしくお願い致します。

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