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74 征夷大将軍 源朝臣勝頼

第一章 完結!

勝頼として生き残るためだけの戦いは、武家の最高位征夷大将軍にまで昇りつめた。

天下平定には、まだまだ程遠い。


 「中川瀬兵衛! なかなかの武人なり! こうでなければ面白くない」

 山県が馬に跨り槍を突き上げた。

 真っ赤な塊が、押し出してきた中川勢めがけ駈け出した。


 摂津に侵攻した武田軍六万の前に立ちふさがったのは、茨木城の中川清秀だけだった。

 有岡城の荒木も高槻城の高山も城門を閉ざし引き籠ったままだ。

 二万程度の兵力では、やりようがないのが本音であろう。

 だが、中川清秀だけはわずか五千の兵で果敢にも打って出たのである。


 命を捨て、名を惜んだ反撃である。

 武田の武将らは、このような潔い行動に弱い。

 山県の赤備えが出たのも、死を覚悟した中川に対し武田最強の兵で迎え撃つのが礼儀だと思っているからだ。

 喚声をあげ突撃してきた中川の騎馬隊を山県赤備えは真っ向から迎え撃った。

 やはり赤備えは強い。

 見る見る間に中川勢を押し込んで行った。

 剣戟の煌めきと喚声。

 中川勢は押されながらも必死の抵抗を続けている。


 突然、中川勢が崩れた。

 後方の兵士らが逃げ出し始めたのだ。

 「山県を退かせろ。追撃は必要ない」

 「はっ」

 これ以上は必要ない。

 中川勢が突然崩れたのは、中川清兵衛が討死したからだろう。


 「中川清兵衛。見事な武者でありました」

 引き上げて来た山県が清兵衛を討ち取ったことを告げた。

 その場で首実検をおこなう。

 中川の重臣なのだろう、他に兜首十数首が並べられた。

 「首級に化粧を施し茨木城に戻してやれ」

 果敢に打って出た中川に対し、最大の敬意をはらうのだ。

 城に逃げ込んだ中川勢は、城主、重臣らの首に涙したものの、武田の敗者への扱いに感じ入り降伏をした。


 高槻城攻めの土屋隊、有岡城攻めの上杉隊からの伝令は両城の降伏を告げた。

 しかし、土屋、景虎からの報せは首を傾げるものだった。

 高槻城は小者ばかりで、高山左近と諸将ら武者は城を捨て逃げ出していた。

 城下の侍屋敷にも誰もいないなのだという。

 有岡城は荒木と重臣らが逃げ出し、残っていたのは中位の武者だけになっていたのだ。


 「出浦に堺を探らせよ」

 「堺でございまするか?」

 小原が怪訝な声を出した。

 僕はすっかり忘れていた。

 信長は交易で栄える堺に目をつけ、武力で直轄地としたのだ。

 便宜上キリスト教徒なった商人が大勢いるし、商人から大名になるはずだった小西行長がいる。

 歴史が変わったため商人魚屋彌九朗のままだが、実父小西隆佐はキリスト教徒である。

 恐らく、荒木、高山の逃亡に手を貸したのは、堺の商人らだ。


 (いまはまだ、キリスト教徒と揉めるのはまずいか)

 信長同様、堺を直轄地とするとしても、高山らキリスト教徒に手を貸している商人を処罰するには早すぎる。

 利を与え武田に靡かせてからいい。


「今少し早くに小寺藤兵衛殿を救出できていれば、おめおめと見過ごすことはありませなんだ」

 毛利輝元が、さも悔しそうに膝を叩いた。

 後ろに控える吉川元春、小早川隆景ら重臣も頷いていた。


 三月初旬、毛利が入京した。

 和議を結んだ南条、宇喜多は、播磨の別所長治が遅れて連れて来ることになっている。

 遅れる理由は小寺政職の内政立て直しを任せたからだ。

 小寺政職は家老の黒田官兵衛に地下牢に捕らえられていたのだ。

 黒田は小寺家を乗っ取り、キリスト教国設立を計っていた。

 毛利輝元が悔しがるのは、鞆の浦を通過した南蛮の大船団に黒田らが謀反の小寺家家臣が乗り込んでいたためだ。


 「それは仕方がない。わたしも高山に逃げられた」

 先に信孝ら織田の諸将を連れ参内した丹羽に聞いていた。

 蒲生氏郷も信忠の死を知ると、領地を捨て隣国の湊より逃げ出している。

 丹羽が言うのには、切支丹大名が国を捨て九州に集結しているらしい。


 「彼奴等、鎮西に切支丹の国を作るつもりです。何卒、先手を我らに賜りますよう」

 家臣共々頭を下げた。

 足利義昭から征夷大将軍を継承し、任官する運びとなっている。

 鎮撫総督などというこじつけの職ではない。武家の棟梁となるのだ。

 幸いな事に甲斐源氏である武田家は、出自や家柄により他大名に侮られることはない。

 代々甲斐国主を務める家柄に口を挟める者はいないのだ。

 丹羽が望んだように、江戸に幕府を開く内諾もある。

 毛利は幕内に確固たる地位を築くため、九州征伐の先手を務めようというのだ。


 「鎮西の大名らの動きがわからない。将軍宣下により白黒がつく。その時は存分に働いて頂く」

 「ははっ。有難き幸せ」

 毛利主従が平伏した。


 九州の諸大名は、鎮撫総督の勅書に対し無視を決め込んでいて従う気はない。

 将軍宣下でも動くことはないだろう。

 武力による征伐。

 だが、切支丹大名との戦いでは、スペインは痛くも痒くもない。

 思う壺だ。

 派兵されるスペイン軍を徹底的に叩き潰し、手足となる切支丹大名を滅ぼさなければならない。

 それが日本を植民地にと狙う外国の見せしめになるのだ。

 僕は小原に命じ帰国を急いがせた。

 奥州の諸将らに九州征伐を備えさせるためだ。



誤字脱字が多く読みづらかったと思いますが、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

第二章はキリスト教国となった九州の奪回となる予定ですが、再開にしばらくの期間をいただきます。

次の章こそ、評価ポイントを押して頂けるよう頑張ります。

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