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異世界のチートな萬屋店長~一寸神アナザーアフター~  作者: 秋華(秋山華道)
決着編
63/64

チートな萬屋狛里死す‥‥

『勝ったと思うな思ったら負けよ』

スポーツや戦いの世界ではよくある話だ。

相手が勝ったと油断した時が反撃のチャンスってやつだね。

『野球は九回ツーアウトから』なんて言われるのは正にそれだ。

そうすると最初から勝ったと思っていた者は、その時点で負けが決まっていたのかもしれない。


襲い来る諸葛亮に対して、俺は防戦一方だった。

本気でやれば直ぐに反撃はできるだろう。

しかし相手にダメージは届かない。

神の仕事というのも辛いものだ。

なるべく魔力を節約して戦わないと駄目なんだけれど、おそらく俺の方が消費が激しいんだよな。

つか戦っているとは言えない状態なんだけれどさ。

「僕も手伝うのです!」

想香か。

「少し頼む!」

十秒も持たないと思うけれど、これでも多少はマシだろう。

「オデも手伝うお!」

猫蓮も手伝ってくれるか。

「ああ」

二秒も持たないと思うけれど、以下同文。

でもお陰で十二秒の余裕ができたな。

俺は一旦地上へと降りて狛里の横に立った。

どうやって倒すのか、或いは倒せるのか分からない状況だけれど、俺は狛里の事が気になっていた。

このまま倒してしまったら、俺は直ぐにアルカディアに戻る事になって狛里を不老不死にはできない。

だから俺は迷っていた。

今は倒せる確証もないんだけどさ。

「策也ちゃん‥‥あの相手を‥‥ぶっ飛ばしたら‥‥いいんだよね?」

「まあできるならな。でも目的はそこじゃない。諸葛亮が何もできない状況を作って、その間に姜好を見つける事かな」

仮に見つかったとしても、この相手を瀕死状態に持って行くのは難しそうだな。

その上で姜好のワンドによる攻撃が必要になる。

「姜好ちゃん?‥‥」

「ああ。姜好が持っているワンドが必要なんだ。おっと想香たちがやられた。行ってくる!」

俺は想香と猫蓮が殺られたのを見て、再び諸葛亮と相対する。

そしてまた時間稼ぎだ。

どう見ても不利だな。

俺の魔力消費の方が圧倒的に大きい。

俺の回復力をもってしてもおそらく負ける。

こっちのダメージが通れば一発で終わるんだけどなぁ。

魔力は圧倒的に俺の方が上だし、いくら超飛龍剣術があったとしても、魔法なら力押しで絶対魔法防御も撃ち抜ける。

クッソストレスのたまる戦いだよ。

「戻ってきたのです!変わります!」

「オデも大丈夫だお!」

「任せた!」

俺は再び狛里の横へと降り立った。

「姜好ちゃんの‥‥ワンド‥‥どうして‥‥必要なの?‥‥」

「それが無いとあいつにトドメをさせないんだ。あいつ不老不死だからさ。それを無効にする武器が必要なんだよ。ダメージはこの世界の奴なら誰でも与えられるんだけどさ。想香や狛里でもね。それでまあ瀕死状態に持っていければ、猫蓮にワンドを持たせてトドメを刺してもらおうと考えている訳よ」

おっとまた殺られたな。

俺は再び飛び上がって諸葛亮の前に立ちふさがった。

「こんな事、何時まで続けるつもりだ?」

「何か突破口が見つかるまでかな?」

とは言えもうストレスで頭の中がウニョウニョ状態だよ。

そろそろマジで突破口が見つからないと‥‥。

そう思った時、地上から大きな魔力が感じられた。

なんだこの魔力は?

俺よりも大きな魔力だと?

直ぐに誰の魔力かは分かった。

「狛里か!」

「うん‥‥」

俺は地上に目線を向ける。

だけれどその前に、狛里は諸葛亮を殴り飛ばしていた。

殴られた諸葛亮は地面に叩きつけられ、広がった波紋は一瞬にしてクレーターを形成した。

「そんなに‥‥強くない‥‥」

いやちょっと待て。

一体何が起こったんだ?

狛里がこんなに強い訳がないじゃないか。

魔力はレベル三百を少し超えたくらいだったはずだ。

何故俺よりも大きな魔力を持っている?

俺は狛里をマジマジと見つめた。

「狛里‥‥カチューシャを外している?」

「うん‥‥あのカチューシャ‥‥魔力を抑えて‥‥安定させる‥‥効果もある‥‥」

魔力を抑えて安定させる効果だと?

それって、カチューシャを付けて狛里が強くなったと感じたのは、魔力を抑える必要がなくなり、安定した魔力で戦えるようになっていただけって事なのか?

つまり俺と初めて会った時も、狛里は魔力を抑えていたんだ。

抑えるのが苦手なんじゃない。

大きすぎて抑えきれてなかっただけ。

ちょっと誰かさんを思い出すな。

俺は失笑した。

こんな大きな魔力を戦闘で使ったら、周りの者達にも被害が及ぶ。

だからカチューシャを付けるまでは、周りに気を使いすぎていて力を発揮できていなかった。

「ははは‥‥」

しかしどうして狛里にこんなに大きな魔力が集まっているのだろうか。

この世界には強い奴が極端に少ないのに。

いやだからこそ狛里に魔力が集まってしまったんだ。

世界ってのはバランスをとるようにできている。

神が強さを制限した分、一人にそれが集まってしまったんだ。

「狛里!力を貸してくれ!とにかくこれから時間を稼ぐぞ!」

「うん‥‥最初から‥‥そのつもり‥‥」

俺は小さくなって狛里の肩に乗った。

「俺は此処で狛里のサポートに徹する。とにかく力を温存しつつ諸葛亮をこの場に留めておく」

「分かった‥‥」

これで勝ちが見えてきたぞ。

後は姜好が見つかれば確実に勝てる。

「尾花!手の空いた者を連れて、とにかく姜好を探すんだ!奴を倒すには姜好の持つワンドが必要になる。なんとしても見つけてワンドを借りてきてくれ!」

「了解した。任せておくのじゃ」

よし!後は諸葛亮の相手に集中だ。

そう思ってクレーターの真ん中を見た時、上空から笑い声が聞こえてきた。

「ははははは!お前が探している姜好とは、この女の事かな?」

そういう諸葛亮は、一人の女性を抱きかかえていた。

「姜好ちゃん‥‥」

なんだと?!

狛里がその女性を見て、間違いなくそう言った。

アレが姜好か。

そしてそいつは今、諸葛亮の手の中にいる。

「あらぁ~狛里ちゃん久しぶりね。元気だったかしら?」

「うん‥‥元気‥‥」

姜好は女性の理想なんじゃないかと思わせる容姿をしていた。

そんな女が、そこにいるのが当然といったような顔で諸葛亮に抱きかかえられている。

やはり姜好は敵だったか。

「お前が姜好か?今そこにいるって事は、お前は狛里の敵だったという事で間違いないな?」

「狛里ちゃんの敵?そんな事考えた事もないわよ?」

「狛里にリスクの高い召喚の魔法を教えたのは、狛里の寿命を短くする為なんじゃないのか?」

「それは心外ね。私はコンサルタントなのよ。金を出してくれた人に最適のアドバイスを提供するの。狛里ちゃんには『強くて死なない仲間が欲しい』と頼まれたから、召喚魔法を教えただけよ」

なるほど、こいつは善悪で動く人間じゃなさそうだな。

雇い主の希望を叶えるのに最適な方法を提供するだけの女。

「つまり今の雇い主は諸葛亮って事か」

「その通りよ」

「姜好ちゃん‥‥中央村の人たちには‥‥どうして‥‥あんな事‥‥やらせたの?‥‥」

そうそうそれも聞きたかった事だ。

「ああ、あの連中ね。『楽に稼げる方法が知りたい』って言うから教えて上げたのよ。みんな喜んでくれたわ」

楽に稼ぎたいってのは誰もが思う事だ。

その弱い心に付け込んでやらせた感もあるけれど、この女にはそんな気持ちも無かったように見える。

ただ純粋に相手が望む答えに導いただけ‥‥か。

「暗殺者組織ワクチンのコンサルタントをしていたのも、ただ金の為なのか?」

「そうね。でも困っている人がいれば、助けたくもなるものでしょ?狛里ちゃんと何も変わらないわよ」

「お前と一緒にするな!」

狛里が汚されたような気持ちになって、少し感情的になってしまった。

しかし正義なんてものはみんな違う訳で、確かに変わらないのかもしれない。

それでも狛里には揺らがない軸があって、姜好にはそれが全く感じられない。

比べて良いものではないはずだ。

「それじゃ~姜好さん?お金を出せばこちらに味方していただけるのかしらぁ~?」

なるほど、仕事と言うのなら天冉の言う通り金で解決できる可能性はある。

「そうなるわね。だけど無理よ。貴方は私にこの世界をプレゼントする事ができるのかしら?」

「俺はこの女に約束した。お前たちを全滅させる事ができたら、この世界をこの女の望むように変えてやるとな」

神にしかできないものを対価にされちゃ、姜好を金で買う事なんてできる訳もない。

これでこいつを倒す術は全て失われてしまったか‥‥。

いやまだ諦めるな。

姜好のワンドを奪ってしまえばいいじゃないか。

「じゃあそろそろ姜好よ、力を貸してくれ」

「はい。仰せのままに」

ワンドを渡すのか?

そう思った時、姜好の体が光り輝いた。

そして次の瞬間には、姜好自身がワンドとなっていた。

姜好のワンドって、そういう意味なんかーい!

これだと、奪って使う事もできやしない。

姜好に拒否されておしまいだ。

右手に蛇矛を持つ諸葛亮は、そのワンドを左手に持った。

「それじゃ試させてもらうか。まずは不老不死のお前からだ。超絶爆裂(ちょうぜつばくれつ)!」

諸葛亮はワンドを使って、この世界の最上級魔法を放った。

「お、オデかお?」

この魔法にやられたら、たとえ不老不死でも死んでしまう。

一瞬恐怖が俺を襲った。

転生してから此処まで、死ぬ恐怖というものをほとんど味わった事がない。

アルカディアでは、たとえ死んだとしてもきっとみゆきが助けてくれるという安心感があった。

イスカンデルに来てからも、死ぬ事はないという状態だったから恐怖なぞ感じない。

でも今、俺は直ぐに動けなかった。

くっそ!俺はヘタレか。

体が動かせない。

『大丈夫ですよ。わたくしたちがいます』

『コクコク』

俺は姫ちゃんたちの意思によって、魔法が放たれた猫蓮の前へと立ちはだかった。

そして魔法を自らの身体で受け止めた。

『助かったよ。姫ちゃん、妖凛』

『どういたしまして』

『コクコク』

「ありがとう助かったんだお!今のは流石に死んでたんだお」

「問題ない」

しかしこの状況でみんなを守るのは大変だぞ。

一ヶ所に集めて絶対魔法防御しておくしかないか。

あれ?問題ない?

今の攻撃はワンド人間である姜好の攻撃とみなされるはずだ。

蛇矛人間の攻撃は俺に届いたからな。

でも全くダメージがない。

神が神にダメージを与えられない効果が発動している?

魔法だからか?

或いはもしかして、本当は姜好がこの世界の神なのか?

いやそんなはずはない。

尚成の手紙は間違っていないはずだ。

「さてそろそろこちらも本気でいくか」

諸葛亮はそう言って、ワンドを口の中へと押し込んだ。

「何を?」

「姜好が裏切らない保証もないからな。食って力を我が物としておく。そうすればもうお前たちに勝ち目はないのだろう?心配するな姜好。お前の意思は俺の中で永遠に生きる事になる」

やられた。

これで本当に勝機が完全に失われた‥‥。

「ではいくぞ!」

『またきます!皆さんを集めて絶対魔法防御を!』

俺は姫ちゃんの言葉に、咄嗟にみんなを集めて絶対魔法防御を発動した。

自分一人を守るものではなく、大きな結界なので消費魔力はかなり大きい。

「そんな事をしていて大丈夫か?魔力が直ぐに尽きるぞ?」

「これくらいなら一日続けても大丈夫だよ」

とはいえ身動きが封じられてしまった。

少女隊に任せる手もあるけれど、元の世界に戻る魔法を使われたらまた合体するしかなくなる訳で、結局この形に戻ってしまう。

そう思った時、狛里が再び諸葛亮をぶっ飛ばしていた。

「私が‥‥いる‥‥何度でも‥‥ぶっ飛ばすから‥‥策也ちゃんは‥‥勝つ方法を‥‥考えて‥‥」

そうだよ。

狛里が何度でもぶっ飛ばしてくれる。

まだ手はあるはずだ。

「分かった!頼む!」

とは言ったものの、トドメをさせるのは北都尚成以外に俺は知らない。

あれ?乱角はどうだろうか。

あいつは六歳の頃の北都尚成を完全コピーしていると言っていた。

ならば蘇生を阻止する能力ももっているかもしれない。

俺は直ぐに分身を使って乱角を闇の家へと誘った。

「少女隊!闇の家から乱角を連れてきてくれ!」

「分かったのです!」

「直ぐに連れてくるのね!」

二人で行く必要はないんだけどさ。

でもどっちか片方に命令すると、もう一方が寂しがるし面倒な二人だよ。

だけど俺は、そんなこいつらが好きなんだよな。

「つれてきたのね!」

「なんなんでしょう一体?」

「乱角!今すぐ北都尚成に変身だ!」

「そうです!変身なのです!」

「えっ?あ、はいはい。分かりましたよ」

乱角は直ぐに六歳の北都尚成へと変化した。

「乱角!もしかしたらお前には、北都尚成の特殊能力も引き継がれている可能性がある。奴にトドメを刺せる能力だ。だから狛里がぶっ飛ばした後に、お前がトドメをさしてくれ!」

「なんだかよく分かりませんが、殺ればいいのですね?」

「頼む」

「分かりました。任せてください」

よしこれでもしかしたら倒せるかもしれない。

いや、頼むから倒せてくれ。

「ほう。俺を倒せる能力だと?なるほど確かにあの時の小僧に似ているな。しかしまだガキじゃないか」

やはり諸葛亮は尚成に会っているんだな。

でも会ったのはどうやらもっと大きくなってから‥‥。

「じゃあ‥‥もう一度‥‥ぶっ飛ばす!‥‥」

狛里はそう言って再び諸葛亮をぶっ飛ばした。

諸葛亮は瀕死状態で、動きが一瞬止まる。

「今だ乱角!」

「了解しました」

乱角はテレポテーションで一瞬の内に近づくと、諸葛亮に触れてゼロ距離から魔法を放った。

爆炎地獄(ばくえんじごく)!」

そして直ぐに離れる。

確実に殺れたはずだ。

後は不老不死の蘇生が機能するかどうかだけれど‥‥。

爆発で飛び散った肉片は、直ぐに動き始めた。

そして人の形を形成してゆく。

駄目か‥‥。

「ありがとう乱角。手間を取らせたな。ナマヤツハシの町に戻っていていいぞ」

「あ、ああ。私がいても役にたてそうにないから行かせてもらうよ」

乱角はそう言って、俺の作った深淵の闇へと落ちていった。

「次は陽蝕だ!尚成から力を受け継いでいるはずだ。もしかしたら倒せるかもしれない!」

「一応やってみるが、我には倒せないと思うぞ」

分かっている。

分かっているんだけれど、やれる事は全て試したかった。

俺は少女隊を見た。

いつものとぼけた笑顔を返してくれた。

なんとか、なんとか倒さないと。

「狛里。もう一度頼めるか?」

「うん‥‥策也ちゃんが‥‥助けてほしいなら‥‥私が‥‥助ける」

助けるか。

今の俺には余裕なんてこれっぽっちもないんだろうな。

それだけ追い詰められている。

姜好が食われた時点で、俺にはもう選択肢は失くなっているのだ。

狛里が再び諸葛亮をぶっ飛ばした。

「陽蝕頼む!」

「鬼海星流剣術!啄木鳥ウッドペッカードラミング!」

陽蝕の突き攻撃で、諸葛亮の体はミンチになった。

しかしやはり直ぐに体は再生されていった。

駄目なのか。

本当にもうどうしようもないのか?

嫌だ。

まだ何かあるはずだ。

「そろそろ限界じゃないのか?萬屋狛里よ。もうお前たちに勝ち目などない」

なんだ?狛里がどうかしたのか?

俺は狛里を見た。

すると何故か狛里が瀕死の状態に見えた。

なんだ?何があった?

そうか!

今まで全力で戦ってきた事などなかったんだ。

自分の大きすぎる魔力を持て余し、それでも抑えられるだけ抑えて戦ってきた。

でもそれを開放した今、自分の魔力に体が耐えられていない。

「少女隊!直ぐに回復魔法だ!」

「分かっているのです」

「でもこれ、それだけじゃないのね」

それだけじゃない?

こいつらまた俺の心の中を勝手に見たな。

まあ許可しているから良いんだけどさ。

「ははははは。とうとう終わりの時が来たんだよ、萬屋狛里!俺には分かっていたぞ。もうすぐお前の寿命が尽きる事を!」

やっぱりそうなのか。

俺は結局狛里を助けられないのか。

「まだ‥‥大丈夫だよ‥‥策也ちゃん‥‥勝つ方法が見つかるまで‥‥私が‥‥守る‥‥」

狛里は再び諸葛亮へと向かっていった。

しかしスピードが格段に落ちていた。

これは駄目だ。

狛里の命はもう尽きる。

拳は諸葛亮に届かない。

狛里は諸葛亮の目の前で力尽き‥‥そして、死んだ。

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