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異世界のチートな萬屋店長~一寸神アナザーアフター~  作者: 秋華(秋山華道)
決着編
57/64

穏やかな町にある幸せは相対的

アスナロという木がある。

名前の由来には、『明日は檜になろう』という意味があるとかないとか。

小さな木が頑張って、『明日には大きな木になろう』とする前向きな姿勢を表している。

周瑜たちはアスナロ精神で、阿弥陀王国を諸葛亮王国の保護国ではなく、自立した立派な国にする為に頑張ってきた。

そしてそれが今、ようやく叶えられようとしている。

しかしアスナロには、もう一つの意味が考えられるとか。

『明日から本気を出す』みたいな、そんな怠け根性があるからいつまで経っても檜にはなれないってね。

それを乗り越えないと、阿弥陀王国はやはり変われないままに終わるのだろう。


「いやだぁー!僕に領主なんて無理だよ。コミュ障なんだよ」

いや周瑜、お前はただ仕事をしたくないだけだろ。

せっかく思い通りできる立場と地位が掴めるというのに、この期に及んでこいつは子供かよ。

俺の目は節穴だったのだろうか。

こいつに任せればジュズの町も、そして阿弥陀王国も安泰だと思っていたんだけどな。

「フリーハンドはアスナロ精神で此処までやってきたんだろ?だったら領主なんて望む所なんじゃないのか?」

「ふむ。アスナロ精神か。なら僕はずっと明日から頑張るから」

明日こそ大きな目標を達成すると頑張ってきて、それに届きそうになったら明日から頑張るか。

上手い事言いやがる。

でも流石にこれは受け入れられない。

俺たちはずっとこの国にいられる訳じゃないのだ。

というか直ぐにでも次の町へ向けて旅立たなければならない。

狛里の寿命は実際の所分からないのだから。

「今日新しい領主を連れて行くと言ってあるんだ。もう年貢の納め時だと思って諦めろ」

「そんな話は聞いてないよ。そもそも僕に領主は向いてないよ」

賢いから結構やれると思っていたけれど、こいつは名の通り軍師タイプなのかもしれない。

「ならば孫権にやらせるってのはどうだ?明王の隠し子を(かくま)っていたって事にすれば、貴族として民の支持も得られやすいだろ?」

「おおっ!それはいいね。周瑜家は貴族とは言っても末席だからさ。そうだ。面倒な仕事は眷属に任せてしまえばいいんだ」

傀儡とは言えスフィンクスに領主をやらせるって所には、抵抗がまるでなさそうだな。

こういう所は流石か。

そんな訳でこの作戦は実行され、すんなりと上手く行ってしまった。

領主を逃れる為の周瑜の演技は、それは見事だった。

日本で産まれていたら名俳優になれていたかもしれん。

予定通り領主は明王孫権(みょうおうそんけん)、騎士団長は明王大喬(みょうおうだいきょう)という事に決まった。

まあ若いとは言えスフィンクスだ。

魔力は大きく、強さに皆納得するしかないよね。

更にこの人選はこの町をいい方向に進めた。

周瑜の指揮の元、本格的にジュズの町の復興と改革が始まったのだけれど、そこで孫権と大喬が大活躍したのである。

スフィンクスと言えば地属性で高いレベルの魔物だ。

俺ほどでは無いにしても、土を操作して何かを作るのは得意である。

高い防壁がドンドン築かれ、簡易的ではあるにしても民の生活空間が取り戻されていった。

孫権と大喬は民から感謝され、その立場は確固たるものとなっていった。

萬屋ぼったくりも狛里以外は目立たない範囲で手伝って、町はそこから僅か三日で元の生活ができる所まで復興したのだった。

「これで一応仕事は終わりねぇ~」

「はい。まさかこんなに早く町が復興されるとは思ってもいませんでした」

これだけ早く終わったのは、フリーハンドのメンバーが頑張ってくれたお陰だろう。

このジュズの町から阿弥陀王国を変える為に、メンバーみんなが協力したらしい。

言わばジュズの町はフリーハンドの町となった訳だ。

此処からはコレを全ての町に広げて行かなければならない訳だけれど、国防という意味ではもうなんとでもなる。

ジュズの町の軍事力が飛び抜けて強くなれば、国家としてはいくら天竺教原理主義と言えども不安になるだろう。

国家を乗っ取られやしないかってね。

他の町でも軍事力アップが自然と行われていくはずだ。

民は元々よく働く人達が集まっている。

経済面で強い国は、まともであれば軍事力の面でも強くなって当然。

その辺りは天竺教のお陰だな。

天冉はギルドの手続きを済ませ、報酬を受け取った。

「この量は重くて持てないわねぇ~。いいわぁ。半分はこの町の復興の為に寄付しちゃいましょう~」

「えっ?持てないなんて‥‥本当にいいんですか?」

「持てないから仕方ないわよねぇ~」

持てる持てないで言えば、余裕で持てるんだけどね。

俺の異次元収納は無限だし、あくまで天冉の収納には入らないだけだ。

いやもしかしたら入るかもしれないけれど、流石にこの町からぼったくるのは気が引けたのだろう。

「ではまた明日から旅に出発だな」

「こういう人助けも偶には楽しかったと思います。でもやはり冒険の方がワクワクするのです」

「うん‥‥新しいもの‥‥知らないもの‥‥楽しい‥‥」

「オデも冒険の旅は大好きなんだお。RPGのようなんだお」

「先輩、RPGとはなんですか?」

「ロールプレイングゲームの事なんだお。でもこの世界の人には分からないんだお」

「分かるように話してもらいたいぜ」

「猫っちは異世界から転生してきたのであろう。仕方がないであろう」

RPGかぁ。

ちょっと久しぶりにその辺りマジで語りたいわ。

みゆきとは神になってから昔の話はしたけれど、ゲームの話はあまりしていなかったからなぁ。

しかし今更猫蓮に日本人だとは言えない。

何処かできっかけがあるまでは我慢だな。

こうして俺たちはジュズの町での仕事を終え、センコウの町で報酬を受け取ってから宿屋でのんびりと休んだ。


今日は久しぶりに、朝の目覚めが良かった。

そう思ったのはどうやら俺だけではなかったか。

みんないつもよりも早い時間に目が冷めたようで、ゆっくりと時間の流れる朝食をとった。

遠足で眠れないような子供ではないけれど、どうやらみんな次の町に行くのを楽しみにしていたみたいだな。

結局少し早めにセンコウの町を出発した俺たちは、道中はのんびりと歩いた。

阿弥陀王国は強い魔物どころか数も少なく、かなり安全に移動ができるようだ。

辺りは草原や牧場、或いは田畑が広がっており、魔物が出ない事を示唆している。

ジュズの町は明王など強い者もいたけれど、センコウの町ではさほど強い者はいなかった。

これから阿弥陀王国の中心に向かうにつれ、より安全な地域になる事が予想できた。

そんな安全な地域だから、ゆっくりと歩いても昼前にはモクギョの町へと到着した。

此処も他の町と変わらず、防壁はさほど高くはなかった。

平和な証拠だな。

防壁門の所には一人だけ門番が立っていたけれど、挨拶をしただけで特に何かをチェックされたりはしなかった。

中に入ると、凄くのんびりとした穏やかな雰囲気が漂っていた。

この感覚は何処かで感じた事がある。

なるほど、昔の日本を訪れた外国人が書き記していた文章そのままなんだ。

おだやかな笑顔が溢れ、子供は活き活きとしていて、皆幸せそうで全てが愛すべきものに見えた。

こんな町もあるんだな。

ただ、これも昔の日本のようなのだけれど、どこか貧しさも感じる。

おそらくこの町の人々は、質素倹約に努め、他人に迷惑をかけず、人々の為に生きているのだろう。

こういう生活をするのは、もしかしたら最も幸せな事なんだと思えた。

努力をすればもう少し良い生活もできるだろうし、最悪でも誰かが助けてくれるという安心感もある。

阿弥陀王国の中にある町だからこそ、存在し得る事ができるんだろうな。

外敵のない楽園か。

俺が死んだ頃の日本では、江戸時代の幸せを見直す声が高まっていた。

一方で江戸幕府の独裁を否定する声ももちろんある。

どちらが正しいのか、或いはおそらくどちらも一理はあるのだろうけれど、これだけはハッキリと言える。

その頃の日本を見た外国人は、日本の国民が幸せであると見ていた事だ。

この町の住人も、貧しくはあっても幸せであるのに間違いはないだろう。

こんな場所が存在し続けられるのなら、それは素晴らしい事だよね。

「少し早いけれどぉ~、何処かで昼食にしますかぁ~?」

「もちろんです。町に着いたらご飯を食べる。これは当然の帰結なのです!」

「うん‥‥美味しいものが‥‥食べたい‥‥」

毎度の事ながら、この二人は食いしん坊ですな。

「じゃああの食堂はどうだ?価格もかなり安い印象を受けるが」

陽蝕の指差す先に、小さな食事処があった。

下町に残る個人の定食屋みたいな感じだ。

「オデはいいと思うお。偶にはああいう店でも食べてみたいお」

「町に合った店で食うのも、旅の楽しみだよな!」

「では行くであろう」

今日は猫蓮や雪月花たちが先に向かい、その後を狛里や想香がついていく形で店へと入っていった。

中に入ると他に客は無く、とにかく狭かった。

十人でくるのは迷惑だっただろうか。

しかし店のおっちゃんとおばちゃんは快く迎え入れてくれた。

「いらっしゃい!おおっ!大人数だねぇ。狭い店だけど良ければ食べていってくれ」

「お邪魔するんだお。ごちそうになるんだお」

「あんまりええもんも用意できませんが‥‥」

「大丈夫‥‥美味しそうな‥‥匂いがする‥‥」

狛里がそう言うのなら、食事自体はおそらく美味しいはずだ。

ただ従業員は他に無く、大量に食事が用意できるとは思えなかった。

つまり‥‥。

「では僕は焼き魚定食とA定食とB定食をお願いするのです!」

「スマンが、この後昼に来るお客さんもいるんでな。一人一つにしてもらえんか」

「分かったのです。じゃあA定食を大盛りで頼むのです」

「申し訳ないが、大盛りもないんだ。この辺りはじゃがいもが沢山採れるから、フライドポテトならいくらでも出せるんだが」

「そうですか。ではフライドポテトのLをお願いします」

「了解した」

あまり用意されていないのは、普段これだけ沢山の客が来ないのもあるのだろう。

或いは来る客が決まっていて、用意している物が限られていたりするのかもしれない。

ただおっちゃんからは、少しの申し訳なさと、精一杯美味しいものを作ろうとする意思だけが伝わってきた。

申し訳なく思う事はないよ。

俺たちは突然押しかけた客に過ぎないのだからさ。

料理はとても美味しかった。

しかし思っていた以上に量が少なく、正直俺たちの胃を満足させられるものではなかった。

仕方がないので食事の後、更に冒険者ギルド併設の食事処へ食べにいった。

此処ならどの町でも同じ物が同じ値段で食べられるからね。

客も多く忙しそうだったけれど、従業員も充実していて料理はしっかりと提供されていた。

こうして俺たちは満足いくまで腹を満たした。

お腹がいっぱいになれば、次は当然情報収集や観光気分を楽しむ。

この所この時間に限らず、行動は三組に分かれる事が多い。

十人でゾロゾロと動くのも大変だからね。

天冉は陽蝕と、猫蓮は雪月花たちと、そして残りといった感じで別れた。

「この町は時間の流れが遅い気がします。人がのんびりしているのです」

「うん‥‥マッタリで‥‥穏やかな‥‥気分になる‥‥」

「私はこういう生活の方が好きかもしれんの。ただもう少し豊かな方がいいか」

偶にこういう町でのんびりするのはいいかもしれない。

ただ一度贅沢を覚えてしまったら、ちょっと辛い所もあるんだろうな。

他の町に行けば、もっと美味しい物が沢山食べられる事を俺は知っている。

この町にいる俺は、何処か物足りなさを感じる訳だ。

幸せは絶対的なものではない。

だからみんなが貧しければその中で人は幸せを感じられる。

しかし相対的なものだから、自分が他人よりも貧しい生活していると認識した時点で、幸福感ってのはなかなか味わい辛いのだ。

現代の日本に暮らしている人は、昔よりも良い生活をしている。

でも自殺者割合は昔よりも多いかもしれない。

平安時代を生きる人は、皆不幸だったのだろうか。

そんな事はない。

だからある意味社会主義を目指したくなる気持ちも分かる。

世界が揃ってそうであれば、おそらく人はある程度幸せにはなれるのだろうから。

だけれどなかなかそう上手くはいかない。

世界には色々な国もあれば、色々な人もいる。

常に上を目指したい人は必ずいて、差はどうしても生まれてしまう。

大国は貧しい国をそのまま見過ごしてはくれない。

力で幸せを邪魔してくる。

この町も、世界に悪い奴がいる限り、ずっとこのままとはいかないだろうな。

それに今、阿弥陀王国はジュズの町から変わろうとしている。

次にこの町に来た時は、違った町になっているに違いない。

それでも今は、この幸せのお裾分けをいただこう。

そんな気持ちでほんのひと時、俺は幸せを感じていた。

しかしそれを(つんざ)く声が聞こえてきた。

「なんでだよ!この町の人にももっと幸せを提供したいんだよ!」

「駄目だ駄目だ!そんな事をしてもこの町では上手くいかない!融資はできない」

「駄目だったらちゃんと死ぬまで働いて返すよ!俺はモクギョの町の男だぞ!」

どうやら商人ギルドの職員と、融資を求める男が言い争っているみたいだな。

「だったらこんな事を言っては来ないさ」

「くそっ!後で後悔しても遅いぞ!」

まあ日本にも気違い染みた奴はいる訳で、この町に変わり者がいてもおかしくはない。

関わらない方が無難だよな。

俺はそう思って気づかないフリをした。

でもそんな事をすれば逆に目立つんだよね。

「策也ちゃん‥‥あの人がどうか‥‥したの?‥‥」

「何か困っているようですね。策也さんはきっと助けたいのです」

「旦那様。奴を連れて来ようか?」

みんな勘違いしないでくれー!

俺は勘違いってのが最も嫌なんだよぉ。

そんなやり取りをしていると、先程のキ印野郎が俺たちに話しかけてきた。

「君ら見ない顔だな。服装もこの町じゃあまり見かけない。もしかして旅の人か、或いは冒険者なのかい?」

結局関わっちまうのかよ。

「そうです。僕たちは旅の冒険者なのです!」

「両方‥‥正解‥‥」

「そうなんだ。あれ?そう言えばその珍しいあまり見かけない服装‥‥。もしかしてあの有名な萬屋だったりする?」

「またまた正解なのです!僕たちは萬屋ぼったくりで間違いありません」

へぇ~狛里の服装で萬屋と分かるのか。

確かにセーラー服はこの世界に無い服装だもんな。

他はなんだかんだあったりするし。

想香の巫女服は、少ないけれど神社がある事は分かっている。

尾花の着物も貴族に限らず見かける事がある。

俺の服装は‥‥。

その辺に似たようなのを着ている人はいるよな。

「確か萬屋って、何でも屋なんだよな?だったら一つお願いを聞いてもらいたいんだけど」

うゎ~、絶対面倒なヤツだよ。

だから関わりたく無かったのに。

せっかく避ける為に目を合わせないようにしていたけれど、それは無駄だったようだ。

むしろそれが悪かった可能性もあるけれどさ。

「困っているのですか?僕たちはとりあえず話を聞く人です」

「うん‥‥とりあえず‥‥話だけは聞く‥‥」

俺は知らんぞ。

さっきの言い争いを聞く限り、どうせ厄介事に決まっているんだ。

融資がどうとか言っていた訳だし。

聞いた本人が対処しろよ。

「単刀直入に言うよ!お金を貸してくれ!萬屋ならきっと金持ちだよね?俺には今金が必要なんだ!」

ほらみろ面倒な‥‥、転生前だったら一番嫌なお願い事かもしれない。

でも今なら割とどうとでもなるから、そんなに酷いお願いだと感じなくなっているな。

「僕は死んだおじいちゃんに、『金だけは貸してはいけない』って言われているのです」

「私も‥‥家訓が‥‥『金貸すな』‥‥だから‥‥」

「私は金を貸せるほど持っておらぬな」

三人が俺の方を見た。

「おいお前ら、話を聞いたのは俺じゃないぞ?自分たちでなんとかしろよ」

「策也ちゃんは‥‥困っている人を‥‥助けたい‥‥」

「いや勝手に決めないでくれ」

「あのぉ?本当に萬屋なの?なんだか凄く貧乏そうなんだけど?」

貧乏じゃないけれど、狛里は多くを夢の城に寄付しているし、想香は人一倍食うから食費でかなり持っていかれる。

それに今では神の使いって事で、尾花同様多くの金は俺が預かっているんだよな。

仕方がない、俺が話を聞いてみるか。

「仕事の話は、マネージャーの天冉がする事になっている。でも今はここにいないから、俺がとりあえず聞くよ。金を貸してほしい理由を明らかにしてくれ」

美少女フィギュアを買いたいとか、NISAで株に投資したいとか、そんなんだったら秒で却下してやる。

ちなみに株式投資をするなら、ドル円百円くらいで日本の景気が良くなってきている時を狙いなさい。

でも投資は自己責任よ。

「金を貸してほしい理由、そう言えばまだ言ってなかったね。俺はこの町でパン屋を四店舗出したいんだ。この町は貧しい事に慣れすぎている。もっと良い生活ができることを知って頑張れる町にしたいんだよ」

なるほどねぇ。

維新の頃の坂本龍馬が『亀山社中』というカンパニーを設立したのに少し似ているか。

アレは『会社』という新しい形を取り入れ、貿易を活発に行うようにした訳だけれど、こいつはチェーン店を作って似たような事をしようとしている。

つまり経済を活性化させたいんだ。

あの頃はそれによって富国強兵に繋がる訳だけれど、今回も似たような所はある。

今阿弥陀王国は自立した国になろうとしている訳だからね。

きっとその辺りを知っての事なんだろうな。

或いはフリーハンドのメンバーかもしれない。

何にせよ、こういう事ができる人材は貴重だ。

俺が死ぬ前の日本は、借金をする事自体駄目な事だと考える人が多かった。

だから多くは社会の歯車にしかなれない。

でも借金をしてでもやろうとする人物は、歯車の軸となれる。

そして会社と云う名の機械を作り上げるのだ。

借金ができない真面目な奴には、堅実な人生しか送れないしそうするべきだろう。

ならば借金できる奴には『挑戦しろ!』と言いたい。

しかし問題はこの町だ。

これだけ民が幸せに暮らせる町を、普通に裕福な暮らしができる町に変えていいのだろうか。

おそらく断られたのは、そういう意味もあるんじゃないだろうか。

とは言え今、この国自体が変わろうとしている。

それにこの町にある方向の幸せってのは、別の国が存在する以上いずれは壊されてしまうものだろう。

日本も黒船が来た事によって、嫌でも国家の方向を変えざるを得なかった。

このままって訳にもいかないはずだ。

「分かった。前向きに検討させてもらおう」

「おお!本当か!必ず金は返すから」

「ただし‥‥、金を貸す場合には『返済能力』があるのかないのか、確認してからじゃないと貸さないのが当たり前だ。パン屋をやると言ったな?」

「ああ。パンの販売と、パンを食べられる食事処も用意するつもりだ」

「ならばどんなパンを売るのか?実際に作って見せてくれ。そうだな。最低三つだ。それらを食べて売れると判断すれば融資はしよう」

正直俺はパンってあまり好きじゃないんだよな。

いや、味がどうとかって話ではなくて、食べ過ぎは健康に良くないからさ。

それに日本人はやっぱり白飯。

この俺を満足させられる物が作れるのなら、たとえ金が返ってこなくても納得はできる。

「たった三つでいいのか。俺は二十種類を超えるパンを売るつもりなんだ。何人か仲間もいる。余裕で美味いパンを作ってやるよ」

「そうか。それは楽しみだ。では日時を決めよう。おっと名前がまだだったな。俺は此花策也だ」

「俺は坂本龍犬(さかもとりゅうけん)。絶対に此花さんを唸らせるパンを焼いてみせる」

こうして俺は、この龍犬という男に金を貸すかどうかを決める為、次の日試食会を行う事になった。

まあ一日くらい出発が伸びても大丈夫だよね?

一応萬屋ぼったくりの仕事になる訳だし、天冉たちも巻き込むという事で。

2024年10月17日 言葉を一部修正

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