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異世界のチートな萬屋店長~一寸神アナザーアフター~  作者: 秋華(秋山華道)
決着編
53/64

天竺教原理主義の町は他種族共生

俺が転生してきたナマヤツハシの町は、『東海地方』と呼ばれる地域の新巻鮭領内にある。

俺たちはこれまで、この東海地方内を旅してきた。

これからは、砂漠を挟んで西側にある『中国地方』へと入る事になる。

中国地方の情報はあまり多くはない。

砂漠を渡って行こうなんてする者が少ないからだ。

商人も滅多に此処を行き来はしない。

どういう世界がそこにあるのかは、行ってみないと分からない。


俺たちは自転車に乗り、朝から砂漠を進んでいた。

砂漠の横断はもう少しで終わる。

間もなく次の目的地、『ジュズの町』が見えて来るはずだ。

十人パーティー誰も欠ける事なく砂漠を渡れたのは奇跡かもしれない。

少し何かが違っていたら、何人も仲間が死んでいた可能性があった。

尤も俺は幸運の持ち主でもあるから、そんな事にはならないはずなんだけれどね。

でも世の中には『不幸中の幸い』なんて言葉もあるくらいで、幸運でも不幸になる事はあり得るのだ。

これからは更に気を引き締めて行かねばなるまい。

そんな決意をした所で、前方に何やら光るものが見えた気がした。

「町の方向から何かが光ったのです!僕の勘ですが、アレはきっと魔法の光です」

想香が言わなくても、そんな事はみんな想像していただろう。

尾花は当然魔力に気づいていただろうし、目の良い狛里には見えているはずだ。

「町が‥‥魔物に‥‥襲われて‥‥いる‥‥」

「直ぐに助けるのです!猫蓮さん!スピードを上げるのです!」

「想香ちゃん、承知したんだお。任せるんだお!ぬおぉぉー!」

少し前に何処かであったやり取りが、再び此処でも行われていた。

「これじゃぁ~間に合わないわねぇ~」

「よし。我が飛んで行って助けるとしよう」

「僕も行きます。あんな魔物は指先一つでダウンなのです!」

「私も‥‥助ける‥‥」

そして結局同じような展開か。

しかし猫蓮の力はかなり増しているぞ。

このまま自転車に乗って行ってもそんなに変わらなさそうだ。

そんな訳で俺はこのまま乗って行く事にした。

それにしても想香め。

神の使いと自覚はしても、今までと行動パターンが変わらないじゃないか。

神の使いは目立たない方がいいんだぞ?

でも今までといきなり行動を変えるのも問題があるか。

もう想香の事は想香に任せるとしよう。

町の方では陽蝕と想香と狛里の戦いが始まっていた。

敵は巨大なサソリのようだな。

なんだあのサソリ。

全く動いている様子がない。

テレポテーションやサイコキネシスで移動とか、なんちゃら探検隊じゃないんだから、動かないサソリが襲ってきたら駄目だろ。

そんな中、なんのモーションも無く毒針を飛ばしてくる。

奇妙なサソリ魔獣に、町の騎士たちも苦労しているようだった。

そこに我らが突撃隊三人が入った訳だけれど、ぶっ飛ばしても再びサソリは襲ってくる。

襲ってくると言って良いのか知らないけどねw

こりゃ誰かが操作しているよな。

その大本(おおもと)を叩かないと、この戦いは少し長引くかもしれない。

サソリの皮膚は硬いし、操作しているモノが防御力を高めている。

一体何処にいるのかね?

「旦那様。九時の方向にスフィンクスがいるぞ」

「あいつが動かしているのか」

「アレは私と同じコントロールの魔法のようじゃ」

「だからアレだけの数のサソリ魔獣でオールレンジ攻撃ができる訳か」

ちなみに尾花は、扇をコントロールしオールレンジ攻撃をする事がある。

それをあのスフィンクスは生きたサソリ魔獣を使ってやっている訳で、常軌を逸していた。

先にスフィンクスを倒した方がいいか。

でもできれば先にサソリを片付けて、スフィンクスは陽蝕辺りに落ち着いて相手させたい。

猫蓮でもいいけど、流石に今やらせるのは酷だよな。

そんな風に迷っていると、陽蝕が魔法を放った。

「爆炎地獄!」

サソリ魔獣が一瞬で焼き尽くされる。

そう言えば陽蝕は魔法を授かっていたんだよ。

ならばサソリ魔獣も簡単に倒せる。

「魔法はズルいのです!僕もやります!超絶風斬り!」

サソリ魔獣が一瞬でみじん切りになった。

想香も神の使いに目覚めた事で、いくつかの魔法を思い出していたんだよな。

「みんな‥‥楽しそう‥‥私も‥‥やる‥‥ロイガーツアール!‥‥」

いや狛里。

お前のそれは物理攻撃最強の魔法だからな。

辺りのサソリ魔獣が一瞬にして斬り刻まれていた。

うわぁ~狛里、魔法のコントロールも成長したなぁ~{棒}

スフィンクスとやる前に、希望通りサソリ魔獣は全滅だよ。

さてそうなると、スフィンクス自ら‥‥。

「あれ?スフィンクスが撤退してゆく?」

「流石に勝てないと考えたようじゃな。アヤツは賢いし逃げて当然か」

追いかけて倒すか?

いや、どうせまたやってくるだろうし、その時に倒せる準備をしておけばいいだろう。

ジュズの町の仕事だ。

などと考えていたら、スフィンクスは完全にいなくなった。

今更だけれど、ジュズの町の騎士にあのスフィンクスは倒せないんじゃ‥‥。

忘れよう。

気がつけば猫蓮の走らせてきた自転車は、町の入口近くまで来ていた。

そこには戦いを終えた狛里たちも集まっていた。

「到着ねぇ~。ようやく砂漠を渡れたわぁ~」

「先輩、お疲れ様です」

「結構疲れたお。でもオデもこれでかなり強くなれた気がするお」

「マイから見ても確かに魔力が別人だぜ!」

「猫っち頼もしいであろう」

本当にな。

オタクがやりたい事に邁進した時のパワーは凄いよ。

案外転生は、チート過ぎてもつまらないのかもしれない。

俺は絶対チート過ぎる方がいいけどね。

だって異世界とか怖いよ?

俺たちは自転車を降りて、砂漠の端に乗り捨てた。

傘もそのまま中に放置する。

これは共有物だからな。

利用したい者がいれば利用すればいい。

つっても誰が使えるのかって話だけれどね。

そして俺たちは町の入口方面へと歩いてゆく。

町はどうやら普通の町だな。

ここは最前線とはいえ、砂漠を越えて攻めてくる国なんてまずあり得ない。

でも絶対ではないし、今日みたいに魔物が攻めてくる事もある。

どうして防壁が低いのかが気になった。

高さはおそらく二メートル程度。

ほとんど村に近い町なのだろうか。

町に近づくと、騎士たちが待ち構えていた。

さてどういう反応をされるやら。

「旅の冒険者ですか?先ほどは助けて頂いてありがとうございました」

「いやぁ~皆さんお強いですねぇ~砂漠を越えて来られたのですか?」

「いやそれならその強さにも納得ですよ」

「ようこそジュズの町へ!」

これも昨日見たような光景だな。

だから一瞬警戒してしまうけれど、今日は違和感を覚える事はない。

普通に歓迎されているようだ。

「こんにちわぁ~」

「世話になるぞ」

「どうぞごゆっくりしていってください」

騎士の男たちに握手を求められたりする中、俺たちは防壁門の方へと進んでいった。

すると目の前に、騎士の隊長らしき者が立っていた。

この中で飛び抜けて魔力が高い。

おそらく今の陽蝕以上で、どうやらモブキャラではなさそうだ。

「旅の冒険者たち、先ほどは助かった。わしは騎士隊の隊長を務める明王(みょうおう)と申す者。この地の領主の長男でもある」

「我は鬼海星の第三王子である陽蝕だ。今は冒険者故、王族としての気遣いは不要だ」

「ほう。王族だったか。ならば強いのも頷けるというもの。助かった礼を言う。それで礼なんじゃが、飯を‥‥」

「お礼ならぁ~、現金でお願いねぇ~」

天冉も昨日の事に()りたか?

いやこれはいつもの仕事か。

取れそうな相手からは金を取る。

それが天冉マネージャーが仕切る萬屋ぼったくりなのだ。

「おっ、おう。そうだな。礼はちゃんと現金だな。だがその辺りも含めて話がしたい。飯もごちそうさせてくれ」

「分かったわぁ~。ではそうしましょう~」

そして飯も奢らせる。

流石天冉だ。

もしも天冉とアルカディアで出会っていたら、出会い方如何では俺はヤバい事になっていたかもしれない。


そんな訳で俺たちは町に入った。

中は思った以上に普通の町だった。

あらゆる人種が見受けられる。

白人も黒人も当然いるし、エルフとドワーフまでもが一緒にいた。

オーガや獣人が避けられているという風でもない。

正に異世界での理想がそこにあった。

「明王隊長!お疲れ様です!」

「隊長!町を守ってくれたお礼だよ。コレを持っていっておくれ」

「隊長こんにちは!」

「おおみんな。今日も元気だな!おかみさんいつも悪いな。ありがとう」

貴族領主の息子が騎士隊の隊長で、町の者からこれだけ慕われている。

この町が素晴らしいのは、この男の力と言った所か。

ただ、おそらくこの明王が神を倒す事はないだろう。

神候補は最初に転生してきた所の近くにいるはずなのだ。

だけど一応名前くらいは覚えておくか。

中国地方阿弥陀(あみだ)領内ジュズの町の騎士隊長明王ね。

さてそれで結局連れられた先は冒険者ギルド併設の食事処。

貴族の城で豪華な料理とはいかないか。

こういう所に無駄な金を使わないのも慕われる理由の一つかもしれない。

まあ俺たちだからこれで大丈夫だけれど、王女王子に対してこれだと上手く行かない事もあるかもしれないぞ。

天冉が王女だとは知らないだろうけれどさ。

「ところでお主たちは、萬屋ぼったくりではないかとお見受けしたのだが?」

「ええそうよぉ~」

「つまり貴方が新巻鮭の天冉姫だな」

知ってたんかーい!

「私も今は冒険者だからぁ~、気遣いはいらないわよぉ~」

「はっはっは。最初からそのつもりだ」

笑い事じゃねぇぞ。

もしも天冉が普通のお姫様だったら、怒ってこの明王を殺していたかも知れない。

いや普通だったら狂乱戦士にはならないけどさ。

「それじゃまずぅ~お礼の件から話しましょうかぁ~?」

席に着くなりいきなりそこから話せる天冉は、絶対日本人ではないな。

「お、おう。こちらもそれほど出せる訳じゃないのだが、これくらいでどうだろうか」

明王はテーブルに指で数字を書いて見せた。

アレだけの魔物を倒したにしては、それほど大きくはない額だ。

冒険者ギルドの依頼でやっていたら、おそらくその倍は貰えているだろう。

さて天冉はどう返す?

「いいわよぉ~。別にこちらも仕事の契約をして助けた訳じゃないからねぇ~。勝手にやった事だしそちらに任せるわぁ~」

此処まで散々プレッシャーを与えておきながらこの返しか。

天冉は交渉の天才か。

結果相手は勝手にやられた仕事に対して金を取られたのに、ありがたいと思ってしまう。

「そうか。かたじけない」

いやこの明王はしてやられたと感じているか。

でもそれを表には出さない。

何故なら話がしたいと言っていたから。

「ところで少し気になったのだが、この町の防壁がこれほど低いのはどういう事なのだ?結界もないだろ?今日みたいに魔物が攻めてくれば守りにくいと思うのだが」

陽蝕の言う通り、俺も引っかかっていたんだよね。

これだけいい町なのに、何故守りがこれだけ薄いのか。

確かにこの明王は強いけれど、もしも俺たちが加勢しなければスフィンクスがやってきた可能性がある。

そうなったら倒せていたかは微妙だ。

魔力では良くて五分。

おそらく剣術スキルを持っているだろうから倒せない相手ではないだろうけれど、スフィンクスだってどんな能力を持っているかも分からない。

「この町は他国からの侵略はまず考えられない。魔物も今日のようなサソリ魔獣やワームが精々だ。わしがなんとか対応できるからな」

「だけどぉ~、今日はスフィンクスも来てたわよぉ~?」

「そうなのか?だけど町には来なかった。わしは日頃の行いがいいからな。それに来た事もない奴の事を考えても仕方がないだろ。来たらその時考えるさ。ははははは」

この男は『因果応報』を信じているのか?

或いは何かが起こってから対処をする『因果』重視の考え方か。

原因がなければその結果は起こり得ない。

何かが起これば、その原因から対処する。

兆候が現れてから『当意即妙(とういそくみょう)』即座に判断すればいい。

でもこの方法だと、対処しきれない事も多々あるんだよ。

町を壊してしまうような失敗をしてから改善では意味がない。

第二次世界大戦の頃、日本はこの辺りが甘かったから駄目だったんだよなぁ。

それは今の陸上自衛隊にも考えが残っているとか。

アメリカはキリスト教の国だから、未来は神が決めていると信じている。

そこに向けて人間がどう動くか考える訳だ。

防衛は予想や想定も必要。

この先こんな事があるかもしれない。

この国が攻めて来たらどう対処できるのか。

前もって準備しておかないと手遅れになる。

せめて戦中の頃の日本陸軍のように、積極攻撃の意思があれば‥‥。

まあ俺には関係のない話だけどさ。

この町がどうなろうと知らんよ‥‥。

こんなに良い町は然う然う無いし、何も起こらない事を祈る。

「因果応報を信じているんだお?でも信仰だけで決めるのは間違っているお」

「助けてもらった客人には悪いが、そちらこそ間違えていると言わせてもらおう。この町は天竺教の教えで成り立っている。善き行いをすれば幸福に、悪しき行いをすれば不幸になる。これまではずっとそれでやってこられた。この町は大丈夫なんだよ」

言っても無駄だ猫蓮。

この町はどうやら天竺教とやらの宗教に染まっている。

その考え自体は悪くないし良い教えだと思う。

でもそれが全てに通じるかと言えばそうではない。

世界は理不尽にできているし、天竺教原理主義じゃ駄目なんだよ。

善き行いだけでなく頭も使わないと神は微笑んでくれない。

「そんな事よりもドンドン食べてくれ。皆が喜んでくれればこの町も安泰だ」

「じゃあ‥‥遠慮なく‥‥食べる‥‥」

「僕はもう食べているのです。とりあえず白飯が倍は欲しいのです」

「はははは。見かけによらずよく食べるな」

想香はマジで人の倍は食べるからな。

尤も中身が兎白と岩永姫二人だから、当然と言えば当然なんだけれどね。

「ところで話がしたいと言っていたが、それは雑談という意味ではないよな?」

「ん?ま、まあな。詳しい話はギルドマスターとしてもらいたいのだが、テロリストを捕まえるのを手伝ってほしいんだ。いや頭の隅に入れておいてもらいたいというくらいの話なんだけどな」

「テロリスト?」

「ああ。この町だけでなく天竺教は我が国の国教なんだが、国の形そのものと言っていい。でもそれが気に入らないのか、天竺教を潰そうとする輩がおってな」

なるほど、今のやり方を疑問視する者もちゃんといる訳か。

天竺教そのものは問題ないけれど、宗教をそのまま政治に持ち込んではいけない。

「フリーハンドという秘密結社が作られているらしいのだ。それに関する居場所やメンバーなんかの情報を知る事があったら、冒険者ギルドが買い取ってくれるから是非提供を頼む」

こりゃまた際どい名前だな。

宗教に縛られず、宗教から脱する政治を目指す結社なんだろう。

或いは自由裁量を目指すか。

似たようなのは地球にも存在したけれど、とにかく極端にならなければ悪いものとは思えない。

宗教が絶対ではないし自由も然り、だからな。

「分かったわぁ~。その辺りギルマスと話をさせてもらうわねぇ~」

「よろしく頼む。ははははは、これで安心だ。萬屋ぼったくりが味方についてくれたぞ!」

別に味方になったわけじゃないけれどね。

天冉がそれだけの情報で判断する訳がない。

テロリストと言っても一体何をしたのか分からないし、正直フリーハンドのやろうとしている事には共感する所もありそうだ。

この後俺たちはとにかく食いまくり、そして明王とは別れた。

天冉と陽蝕は冒険者ギルドの応接室へと移動し、引き続きギルドマスターと話をする。

俺たちは特に興味もないので、町をブラブラとする事にした。

陽蝕が天冉を独り占めするようになって、俺は護衛の仕事から開放されてしまった。

もちろん危険を感じれば対処はするけれど、少なくともこの町では警戒するべきものもなさそうだ。

そんな訳で俺は、みんなと暗くなるまで観光気分を楽しんだのだった。


そして夜。

宿屋にみんなが集まってから、天冉は明王が言っていた依頼についての説明をした。

「フリーハンド秘密結社わぁ~、領主の別荘や行政機関、或いは城への攻撃を繰り返しているみたいねぇ~。あくまで聞いた話が本当ならだけどぉ~」

「それで一応それが事実である前提で、我々は情報提供の約束をした。ただし話に錯誤(さくご)があればその限りではない。情報提供するかはその前にみんなで相談する事にする」

「間違いの可能性があると私たちが判断したらぁ~、情報提供は止められるわぁ~。これなら問題ないわよねぇ~」

天冉らしい条件だな。

現状俺たちは何も知らないわけで、これから自分たちで情報を得て判断するって話。

尤もこの条件で良しとした訳だから、ギルドマスター側も情報には自信があるって事だろうな。

でもどんな対立でも、お互いの言い分はある訳で。

何にしても面倒事には巻き込まれたくないものだ。

「うん‥‥とにかく‥‥悪い人がいたら‥‥お仕置きする‥‥」

「とにかくテロはいけません。テロリストは見つけ次第、砂漠に顔だけ出して一日放置の刑です」

「地味に嫌な刑ねぇ~」

「でもオデには、そんなに単純な話じゃないような気がするお。どちらが正しいなんて百対ゼロでは決まらないんだお」

何人かはそう思っているよ。

だからこそ天冉は条件を出したんだろうし。

さて真相やいかに。

それは間もなく明かされる事になる‥‥かもしれない。

爆音は突然町に響いた。

ドーンという爆発音と共に、人々の悲鳴に似た声が耳に入ってきた。

「なんだこの爆発音は?」

「私‥‥見てくる‥‥」

「僕も行くのです!」

「オデも行くお!みんなついて来るお!」

「畏まりました」

「行くぜ!」

「出撃であろう」

狛里に続き、想香と猫蓮、そして陽蝕と雪月花たちが宿屋の窓から飛び立った。

「旦那様。爆発音は城の方からじゃ」

「魔力はどうだ?」

「距離が遠いので正確には分からん。それに一瞬感じた魔力はもう消えておる。プロの仕業じゃの」

ならば今から追っても見つけるのは難しいか。

尾花の探知能力は五百メートル以内なんだよなぁ。

プロが相手だと事が起こってから対処しても遅い。

分かっていたら町に設置型フィールド魔法『テリトリー』を構築しておいたんだけどな。

なんだかんだ言って俺も日本で育った人間だったよ。

他人を批判ばかりもしていられないな。

「策也ちんは行かないのぉ~?」

「此処でだいたい状況は把握できている」

それに想香が既に俺の使いになっているんだよな。

テレパシー通信もできれば視界のリンクも可能。

想香とは一心同体じゃないので、視界のリンクには許可がいるけれどね。

『想香、状況はどんな感じだ?』

『城の一部、というか柵の一部が破壊されています。でも大事には至っていません。犯人は見つかってませんが、犯行メッセージが残されていました。フリーハンドの仕業と言ってます!」

『サンキュー!もう戻ってきていいぞ』

『そうなのですか?犯人は捕まえてませんが?できれば捕まえたいのです!』

『多分捕まらないよ』

おそらくそうなっているはずだから。

『分かりました。みんなが戻る時に一緒に戻ります』

『了解』

そうだった。

想香一人で帰ってきたらちょっと変だよな。

だけれどだいたい分かったよ。

俺たちが依頼を受けた後にこのテロ事件。

なんのメリットも効果もなさそうな結果。

わざわざ犯行メッセージを残すほどの事もできていない。

良い町だけれど、今のままじゃいずれ滅びるのだろうな。

俺はなんとなくそう思うのだった。

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