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異世界のチートな萬屋店長~一寸神アナザーアフター~  作者: 秋華(秋山華道)
東海林編
49/64

北都尚成の目的は此花策也の目的

歴史を語る時、端っから『そんな事があったかどうかなんて分からない』と否定する人がいる。

確かに、どれだけ歴史的資料が残されていたとしても、その場にいた訳でもないのだから百パーセントあったかどうかなんて分からない。

しかし真実として語られている以上、それはあったとする方が正解だろう。

もしもそう思えない人がいるとしたら、それは歴史から何も学べない人なのだと思う。

あったと信じる事こそが、過去を作り現在を通って先の未来を作る為に必要となるから。

今という時は、過去の真実を信じた人たちによって築かれてきた訳だしね。

信じ込んだ事が現実となるのが世界と言える。

我々の生きる世界はそういうものだと理解できた時、きっと未来への道は開かれる。


俺が北都尚成だった事は間違いない。

それが事実なら、俺はいつこの世界に来たんだ?

異世界とこのイスカンデルを行き来する存在?

異世界とはおそらく地球であり日本。

何故行き来する事になった?

俺が死んだのは、あの時七色に輝くきのこを食べたからだ。

あれ?どうしてあんな所にそんなものがあるんだ?

大体どうして食べたりなんかしたんだ?

ゲームに負けたからと言えばそうだけれど、いくら酔っていたとはいえ流石に怪しすぎて食わないだろう。

というかあの世界に存在するべき物ではなかったのではないか?

そして俺は死んだ?

いや、その後ワクチン接種するまで生きていたではないか。

直ぐに死んでいない?

いや、きっと死んだ?

そうか。

おそらく死んだようで生きている、生きているようで死んでいたんだ。

七色のきのこを食べた日、あの日は確か‥‥萌え萌えだったよな!

そうだ十月十日だった。

そしてワクチン接種は次の日‥‥いや違う。

あれは確か年の暮れ十二月だったはずだ。

どうして二ヶ月も間が空いているんだ?

二ヶ月だと?

ちょっと待て。

みゆきが亡くなったと聞いた日時は確か‥‥。

カレンダーを見たよな。

そうだ、平成二十一年、西暦だと二千九年だった。

おかしいじゃないか。

あの新型コロナウイルスは令和二年、西暦だと二千二十年からだ。

つまりワクチンを接種したのはその次の年の十二月。

七色のきのこを食べてから十二年の時が流れている。

そうか!この十二年の間、俺はどういう理由か分からないけれど、日本とイスカンデルを行き来しながら半分死んだように生きていたんだ。

俺が三十九歳の時から五十一歳の時まで。

そしてワクチン接種の時に完全に死んた事になって、俺はアルカディアに転生した。

だから北都尚成はこの世界から忽如と消える事になった。

ハッキリと思い出せた訳では無いけれど、おそらくそういう事だ。

なんとなくずっとあった違和感がようやく解消された気分だよ。

二千九年と二千二十一年にあった二回の死を、ずっと一回の死だと考えていたんだから。

おそらくだけれど、俺は二千二十一年に死ぬ運命だったんだ。

だけど七色のきのこによってイレギュラーが起こった。

その辻褄を合わせる為に、俺は十二年間の半分を生き、半分を記憶喪失という形で失っていたに違いない。

思い出してしまったらどうなるんだろうな。

それにしても今の所、此処まで分かっても思い出さないのを見ると、本当に無かった事になっているのかもな。

「策也ちゃん‥‥どうしたの?‥‥動いて‥‥動いてよ‥‥」

狛里の声に俺は一瞬にして現実に帰ってきた。

気がつけば狛里が俺の体を必死に揺らしながら涙目状態だ。

完全に自分の中の世界に入っていたようだ。

「あ、悪い悪い。ボーっとしていただけだ」

狛里が口をあけた状態で俺を見ていた。

「良かった‥‥このまま‥‥策也ちゃんが‥‥消えそうだった‥‥から‥‥」

「そうなのか‥‥。消えそうだった‥‥のか?」

「うん‥‥策也ちゃんの気配が‥‥消えてゆくような‥‥」

俺そんなにヤバい状態だったの?

『ん?妖凛か』

なるほど。

俺が記憶の整理をしている間、邪魔が入らないように妖凛がそうしてくれていたんだな。

「でももう大丈夫だから安心してくれ。北都尚成のメッセージを読んで、ちょっと頭の中で記憶の整理をしていただけだよ」

「そうなんだ‥‥」

狛里はようやく安心した表情に変わった。

こんなに心配してくれるなんて。

惚れてまうやろー!

「それで‥‥何か思い出せた?‥‥」

おっと落ち着け落ち着け。

思い出せた、か‥‥。

正直何も思い出せてはいない。

だけど今まで何故か意識の及ばなかった所に思考を巡らすことができるようになった。

そして憶測ではあるけれど、全ての仮説は立てられた。

「そうだな。思い出せはしないけれど、北都尚成は確かに昔の俺だと思う。そして尚成がこういう物を残した理由もおそらく分かった」

「それは良かったのです。それで‥‥僕と似た名前の人の事は何か分かりましたか?」

気にしないフリをしていても、やはり想香はそこが気になるみたいだな。

でも残念ながら記憶が戻らない以上分からない。

「悪い。その辺りは何も分からないままだよ」

「そうですか」

その辺りハッキリさせる為にも、なんとか思い出したい所だよな。

「それじゃぁ~、ソロソロどうするか決めましょうねぇ~」

そうだったな。

北都尚成が魔法と能力を与えると言ってきている。

これをもしも陽蝕が受け取るのなら、神候補の一番手は陽蝕だと判断せざるを得ない。

少なくとも神を倒すために必要な人物である事は間違いないだろう。

「それで策也は我にどうしてほしいんだ?」

ん?愚問だな。

「いや、普通に魔法と能力を受け取る為に一人でこの先に行ってもらいたいけど?」

「それでいいのか?色々調べたいと思っていたが?」

ああ、言われてみればそうだな。

でも俺がもしもこれを作ったとしたなら、きっと何も出てはこない。

出てきてもそれからは何も分からないだろう。

「問題ない。みんなにはまだ話していなかったけれど、北都尚成の望みと俺のやろうとしている事が一致している事が分かったんだ」

そう、おそらくは北都尚成もこの世界の神を倒そうとしていた。

そして俺の任務も、その神を誰かに倒させる事。

尚成が陽蝕に魔法と能力を分け与えようと言うのなら、それはきっと必要なんだ。

「策也ちゃんの‥‥やろうとしている‥‥事?‥‥」

「なんですか?僕には全く目的のないプーな人のように見えていたのですが?」

想香にはそんな風に見えていたのか。

ちょっとショックだよ。

だけれど確かに、目標を明確に示している人って格好いいよね。

俺もみんなに話しておいたほうが良いのかもしれない。

この十人はもう仲間なんだ。

うん、話しておいて問題無いだろう。

もちろん全てを話すつもりはないけれどね。

「いい機会だからそろそろ俺の目的というか、任務をみんなに聞いてもらいたいと思う。ちょっとだけ時間、いいか?」

俺はそう言ってみんなを見回した。

「そこまで言われたら我も気になる。さっさと話してくれ」

陽蝕の言葉に皆が頷いた。

俺は整理してゆっくりと話した。

「まず最初に言っておきたい。俺がこの世界の人間じゃない異世界人である事はみんな知っての通りだ。猫蓮とは少し違うけれど、別の世界からある任務を帯びてこの世界にやってきたんだ」

「おお!マジかお!オデと仲間だったんだお!」

いや猫蓮よ。

俺が元の世界に送り返されそうになってたの見ただろ。

「ま、まあな。ただ俺のいた世界はアルカディアって言って、似ているけれどちょっと違う世界だ」

「そうかお。同じ日本かと思ったお。残念だお」

いや同じ日本人でもあるんだけどな。

今更ちょっと言いづらいんだよ。

「その任務ってのが、この世界の強大な悪を倒す手伝いをする事」

「ん?倒す手伝い?自分で倒す訳じゃないのか?」

さてどう説明するか。

「残念ながら俺では倒せないんだ。俺はもう今以上に強くはなれない。その敵は俺よりも圧倒的に強い」

「つまり我は策也以上に強くならないと駄目って事になるのか」

「そうだな。陽蝕がその巨大な悪を倒す者だとしたらそういう事になる。だけど今の所、いやきっと最後までそれが誰なのかはハッキリとしないだろう。倒した者が結果的にそうだったという事になると思う」

俺はアルカディアで神になったけれど、少し違っていたらなんとなく神には別の者がなっていた気がするんだよな。

「じゃあオデかもしれないんだお!」

「最初はそうかもしれないと思っていたよ。ただ今日の一件で陽蝕がそうではないかと考えてはいる」

「旦那様。強さで言えば狛里がそうではないのか?」

「男性って決まっているんだ。理由は分からないんだけどな」

狛里だったら分かりやすくて良かったんだけどなぁ。

「と言うわけだ。まあこの事についてみんなにはなるべく迷惑はかけないようにする。一応タイムリミットは百年あるし慌ててもいない。だから基本的には気にしないでくれ」

そうは言ってはみたものの、狛里と想香があからさまにションボリとしていた。

うおー!そんな顔しないでくれー!

きっといつか別れの時がくるって考えてくれているんだろう。

俺だって正直帰りたくない気持ちも出始めているんだよ。

「それじゃ‥‥策也ちゃんは‥‥純粋な‥‥気持ちで‥‥助けてくれていたんじゃ‥‥ない?‥‥」

「仕事の為に僕たちと一緒に冒険の旅をしていたのですか?」

別れの日を思ってションボリしていたんじゃなかったんかーい!

いやでも確かに、仕事だから自分たちと一緒に冒険の旅をしていたって考えると、寂しい気持ちにもなるか。

「そうだな。仕事の為ってのが全くなかったと言ったら嘘になる。でも仕事がなくても俺はきっと狛里や想香と一緒に冒険の旅に出たと思うぞ。それももっと楽しんでな。俺はお前たちが好きだからさ」

あっ、やべ。

そういう事はあまり言わない方が良かったかな。

『スケコマシなのです』

『勘違いするくせに勘違いさせる男なのね』

ホント少女隊は、こういう時必ずテレパシー通信でツッコミを入れてくるよなぁ。

「なら‥‥良かった‥‥楽しいの‥‥大切‥‥」

「そ、そうですね。楽しんでくれていたらいいのです。だったら協力できる所は協力してあげるのです」

「ああ。ありがとうな」

そうだな。

楽しい事が大切だよ。

でも正直、俺の今の一番の目的は別にあるんだけどな。

狛里を一刻も早く不老不死にする事。

寿命までおそらく五年もないはずだ。

最近そんな気がするんだよな。

だから神を倒す前にまずはそっちだ。

その為に願いが叶う伊勢神宮へ行く。

「じゃあそろそろ我は行くぞ。次に会うのは砂漠の真ん中。遺跡のある場所でいいんだよな?」

「そうねぇ~‥‥。気をつけてね陽蝕くん」

特に何かがある訳でもないとは思うけれど、やはりこの中を一人で行かせるのは心配か。

でもこれくらいはやってもらわないと。

いや、これくらいできないと男としてどうかと思うぞ。

そんな訳で俺たちは扉から出た。

陽蝕はこちらに手を振ってから、洞窟の暗闇の中へと消えていった。

ライトの魔法も使わずに行くのか。

確か初級の魔法書は持っていたよな。

暗闇の中でちゃんと使えたらいいけれど。

砂漠の広さは二百キロ以上あるから、普通に考えて百キロ以上洞窟内を歩く事分かっているよね?

あっ!洞窟の奥に光が灯ったぞ。

良かった良かった。

そう言えば陽蝕は、光のカーテンとかっていううっすら光る結界が作れたよな。

でも百キロ以上かぁ~。

大変そうだなぁ。

尤も、俺たちはこれから砂漠を歩くわけだから、もっと辛いと思うけれどね。

暑さの耐性を持っているならいいけどさ。


そんな訳で砂漠。

蟻の巣ダンジョンを出られたのは夕方前だったので、一日休んでからの出発となった。

全耐性を持っているのは、想香、猫蓮、尾花の三人だけ。

狛里と雪月花の三人は、バンテージだから直ぐに薄着仕様にはできる。

でも天冉はそのままだと流石にバテるよなぁ。

「大丈夫か天冉?」

「流石にきついわねぇ~」

どうして砂漠って暑いんだ?

緑があるとどうして気温が下がるんだ?

水分が蒸発する時気化熱によって気温が下げられるとか、理屈では分かっていても納得いかんよな。

「宝石があればなんとかできるんだけど。残念ながらゴミ宝石しか残ってないんだよなぁ」

宝石と言えば千年竜を倒した時に手に入れた、ルビーのような妖凛曰く『愛の小石』が残っている。

でもどうやらそれは宝石では無いようなのだ。

よく分からないので、とりあえずそれは闇の家に飾ってある。

それ以外だとまともな宝石は数個しか残っていなかったはずだ。

当然それだけだと、みんなをなんとかする事はできない。

陽蝕のも含めてなんとかするとなると、大きさの合った同じ宝石が六組必要となる。

それにできれば全耐性にしておきたいから、できるだけ良い宝石でアイテムを作りたい。

「分かったわぁ~!これ、使って良いから作ってくれるぅ~?」

天冉がそう言って異次元収納から取り出したのは、いかにも王女の証と言ったような特別感のあるネックレスだった。

そこには左右大きさの揃った宝石が丁度六組あった。

クッソ!またこんな所にもご都合主義がきたか。

こんな事されたら作るしかないよ。

「これ大切なものなんじゃないのか?」

「暑くて死にそうになるくらいなら、バラした方がマシよぉ~」

「みんなのも作っていいんだよな?」

「一番大きな宝石のは私に頂戴ねぇ~」

そりゃまあ当然だとは思うけれどさ。

つかこの大きさなら全耐性どころか完全耐性のが作れそうだな。

そんな訳で直ぐに移動用の家を出して、みんなが食事休憩中に俺は魔道具の制作に没頭した。

まず天冉と陽蝕の二人分は、異次元収納のベルトに能力を追加する形で作った。

陽蝕は此処にいないから、予備のベルトに追加しておいて後で交換してもらう事にする。

そして狛里のも異次元収納ベルトに全耐性を追加した。

残る雪月花三人の分は、新しく全耐性ベルトを作った。

なかなか良いデキだな。

「できたぞー!これを付けておけば、暑さ寒さだけじゃなく、炎耐性、氷耐性、雷耐性はもちろん、状態異常にもならないぞ。完全耐性の方は無酸素状態でも多少生きられるかもしれん」

知らんけどw

「ただし天冉のと陽蝕の以外は完全耐性じゃなく全耐性だから、自分の魔力よりも圧倒的なものに対しては耐性が機能しない場合も考えられるから気をつけてくれ」

「ありがとう~これで砂漠も大丈夫ねぇ~」

「暑かった‥‥良かった‥‥」

「ありがとうございます。ただアイのサファイアバンテージは暑さには強いので大丈夫でしたが」

そっか。

愛雪はサファイアバンテージを付けていたんだったな。

水属性なので冷やす事は得意か。

でも他には対応できないから、一応付けておいてもらった方がいいだろう。

「マイは助かったぜ。ありがとよ!」

「ミィも助かったであろう。例を言うであろう」

「礼なら天冉に言ってくれ。大切な宝石を提供してくれたのは彼女だからな」

「いいわよぉ~礼なんてぇ~。でもどうしてもって言うならぁ~、現金でお願いねぇ~」

流石は天冉、恐ろしい子。

皆それ以上は何も言わなかった。

薄っぺらい礼だった。

まあ冗談だって分かっているからな。

つか、マジで冗談だよな天冉?

そんな感じで少し休んでから、俺たちは再び砂漠の砂とお友達になった。

暑さが感じられなくなったとはいえ砂漠は砂漠。

歩くのはかなり大変だ。

「想香ちゃんは草履だから大変なんだお」

「ここならむしろジェットブーツの方がいいのです」

想香はそう言って草履からジェットブーツに切り替えた。

今ではこのジェットブーツも改良を重ね、リビングバンテージのような変化によって草履との切り替えが可能になっている。

普段は草履と靴下のようなものになっているけれど、それが飛ぶ時にジェットブーツに変化するのだ。

でも流石に砂漠だと、ジェットブーツでも歩きにくいと思うぞ。

そう思って見ていたら、想香は空中にプカプカと浮いていた。

正直砂漠は飛んでひとっ飛びと行きたいよな。

ただうちには飛べない者もいる。

「俺は天冉をチラッと見た」

すると天冉も俺の言いたい事が分かったのかこちらに寄ってきた。

「砂漠は飛んでいった方がいいかしらぁ~?」

あれ?天冉は飛べたっけ?

「あ、ああ。おそらく今のままだと陽蝕が先に着くだろうし、待たせるのもアレかと思ってな。でも天冉は飛べたっけ?」

「私飛べないって言った事あったかしらぁ~?」

そう言えば聞いた事はなかったかも。

「じゃあ飛べるんだ?」

「ん~‥‥。正直飛べないと思っていてくれた方が良いかもぉ~?」

どっちやねん!

「飛べるけれど気持ち的には飛びたくない、そんな感じ?」

「そうねぇ~。一度だけみんなにも見せておこうかしらぁ~」

何を見せるというのだろうか。

飛んでいる姿があまりに恥ずかしくて見せられないとかそんな感じか?

「じゃあ行くわねぇ~。『一霊四魂の死魂(しこん)』!」

一霊四魂の死魂だと?

四つの能力だけじゃなかったのか!

次の瞬間、天冉の姿は何も変わらずただ宙に浮いていた。

「あれ?普通に飛べているじゃないか?」

「天冉さんが飛んでいるのです!」

「凄く優雅に飛んでるお!」

「飛べはするんだけどぉ~‥‥。このままじゃ分からないわよねぇ~。じゃあちょっと失礼してぇ~」

天冉は俺の顔に顔を近づけてきた。

おいちょっと待て!

お前陽蝕が好きなんだろ?

なんでいきなり俺にチューしようとしているんだ?

「天冉姫が策也殿にキスをする気なんだお!?」

「天冉さん!いきなり人前で何をするのですか!羨ま、じゃなくて駄目です!」

俺は目を閉じた。

しかし唇には何も感じなかった。

目を開けると、天冉は目の前にはいなかった。

いやどういう事だ?

俺の体に入っているような、何とも奇妙な状態になっていた。

これは、アルカディアの頃の金魚と同じか?

「天冉姫が策也殿を通り抜けてるお!」

「どうなっているのです?まるで幽霊なのです!」

「なるほど霊体化のような能力なのか」

「正解~。でもこれって半分死んでいるようなものでしょ~?ずっとこのままの状態でいると徐々に存在が薄れていくのよねぇ~。どれくらいもつのか分からないんだけどぉ~、だからあまり使いたくない能力なのよぉ~」

確かに天冉の言った通り、先程よりも極わずかではあるけれど存在が薄らいでいる気がする。

この状態だと一日は持たないな。

持ってせいぜい六時間と言った所か。

でも逆に言えば、六時間くらいならこの状態でも平気でいられるはずだ。

「じゃあソロソロ戻るわねぇ~」

そう言って天冉は砂の上に降りた。

しばらくすると足が砂に沈んでいった。

元に戻ったか。

あれ?元に戻ったはずなのに、薄らいだ存在がまだ戻っていないぞ?

「存在が完璧に戻るにわぁ~、能力を使っていた時間と同じだけの時間が必要なのよねぇ~。そしてその間~、減った分魔力が制限を受けるのよぉ~」

「そうなのか。つまり存在が半分くらいになるまで霊体化していたら、天冉の魔力は半分になるって事か」

「そういう事ねぇ~」

こりゃあまり使いたくない意味も分かるな。

おそらく六時間以上霊体化していたら死ぬんだろう。

そしてこの能力を使った後に即戦闘なんて事になれば、全ての力を発揮できない。

「とは言え、天冉ほどの強さがあれば、三時間くらいは使っても平気じゃないか?おそらくそれで半分だ。俺の見る限りその能力は六時間がタイムリミットだぞ」

「そうなのねぇ~。じゃあいざって時は三時間を目安に使う事にするわぁ~。でもぉ~普段は尾花ちん、乗っけてくれないかなぁ~?」

まあそれが一番無難ではあるけれど‥‥。

「私は構わないぞ?人間一人乗せるくらいどうって事はない。じゃが乗る時には振り落とされないようにちゃんとしがみついておれよ」

尾花がそれで良いならそれでいいか。

でも普段の天冉だと振り落とされるのは確実だし、振り落とされない用のアイテムが必要だな。

「策也ちん、振り落とされないようにアイテムよろしくねぇ~」

「はいはい」

こうして又俺たちは休憩する事になった。

陽蝕大丈夫かなぁ。

あいつなら絶対先についているはずだ。

この炎天下の中で待つ訳だから、俺たちが到着した頃にはミイラになっている可能性もあるぞ。

少し陽蝕を心配しながらも、俺は再びアイテムを作らされる事になった。

2024年10月16日 言葉を一部修正と追加

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