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異世界のチートな萬屋店長~一寸神アナザーアフター~  作者: 秋華(秋山華道)
東海林編
47/64

角を取ったら鬼は神さん?

『弱い犬ほどよく吠える』という(ことわざ)がある。

意味は『力が無い人ほど威張り散らし横柄な態度で牽制する』という事らしい。

しかし実際の所小さく弱い犬が吠えるのは、別に威張り散らしているからでは無い。

不安や恐怖を感じた時に逃げ隠れできなければ、犬は吠えて自分を奮い立たせるのだ。

攻撃的になるのは、全て自分の方が弱いと自覚しているからである。

これって、差別の本質と似ていると感じた。


差別がいけない事だというのは、以前から何度も言っている事だしみんなの共通認識だろう。

しかし差別するのには正当不当あるにせよ必ず理由がある。

正当な理由であればそれは差別ではなく区別と呼ばれるし、不当と思われる理由でも理由がある以上全否定はできない。

だから世界の共通認識は最低限と見る必要がある。

『人種や民族など生まれが違えど、基本的人権は守る』というものだ。

基本的人権とは、その人が『人間である』という事である。

それ以外は道徳や倫理の域であり、他人があまりとやかく言うものでもない。

何故なら差別の最も大きな理由は『恐怖』から来るものだからである。

『怖がるな』と言われても、それが本能である以上どうにもならない。

自分たちと違うもの、或いは強いものに恐怖し吠えてしまうのは仕方が無いこと。

当然怖い者と一緒にはいたくないと思ってしまう。

ずっと恐怖を感じて生きては行けないからだ。

日本民族はどの人種や民族と比べても、体が小さく肉体を鍛えるのも難しい。

体力的には最も弱い種族である。

だから別の民族や人種に対して恐怖心を持ってしまっても仕方がないだろう。

それでも日本人は吠えずに世界の中でやってきているのだから大したものだ。

俺個人としては、正直恐ろしいので外国では生きて行けないけれどね。

ただ最近は日本に来る外国人も増え、自国でも恐怖の中で暮らしていかなければならなくなってきている。

そんな中で一方的に『差別をするな』と言われても、『だったら怖くないようにしてほしい』なんて思わなくもなかったんだよな。

無理な注文と知りつつも、転生前の俺はそんな風に思っていたよ。


俺たちは朝早くからカマキリの町を出ていた。

朝食も食べずにマジで早い朝だった。

そんな時間に町を出たのには理由があった。

昨日俺と猫蓮が最前線で仕事をしている間、他の者たちも色々と依頼を受けていたみたいなのだけれど、正直あまり良いものではなかったみたいなのだ。

困っている人たちは助けたいけれど、流石に誰でもできるような事を安いギャラでやるつもりはない。

だから今日は逃げるように町を出ていた。

尤もギャラが安かったのは、俺と猫蓮でやった仕事の報酬が高すぎて、出せるお金がもう無かったからかもしれないけれどね。

でも俺たちは俺たちを安売りするつもりはない。

それをしたら他の冒険者にも迷惑がかかる。

相場価格はみんなで築き上げていくものだからさ。

安くする事がみんなの為だと思っている人は考えを改めた方がいい。

巡り巡ってそれは経済状況を悪くしているのだから。

正当な報酬を受け取る事こそが全ての人に役立つのだ。

まあそれが正論なんだけれど、今貧乏な人にとっては安い店は助かるんだけどさ。

おっと話が脱線してしまったな。

そんな訳で俺たちは、街を出てすぐの所で移動用の家を出し、朝食をとっていた。

「これを天冉や雪月花にも渡しておくよ」

俺が取り出して渡したのは、魔法無効化の腕輪だった。

三つしか無かったけれど、先日の空いた時間にようやく複製ができたのだ。

「あらぁ~私にもぉ~?尾花ちんには無いのぉ~?」

「尾花には既に変化にも対応できる伸縮自在の特別製を渡してある。遠慮なく付けてくれ」

「そうなのねぇ~。だったら頂いておくわぁ~」

「アイたちも貰ってよろしいのですか?」

「むしろ魔封じの結界を扱えるのは俺以外だと猫蓮だけだからな。一緒に戦うお前たちが無いのは問題だろ?」

「ありがたくいただくぜ!」

「これでもっと強い敵にも立ち向かえるであろう」

尤もコレが必要になるような敵がそうそういるとも思えないけれどね。

むしろ狛里のロイガーツアールに巻き込まれない為なんだよな。

俺はチラッと狛里を見た。

目が合うと少しションボリしていた。

いや信用していない訳じゃないんだよ。

ただその方が狛里も戦いやすいだろうからさ。

とりあえず頭をポンポンして気持ちは伝えておいた。

『狛里だけズルいのです!』

『妃子たちには三倍のポンポンを要求するのね!』

『分かった分かった。後でな』

こいつら何故か頭ポンポンとかナデナデには執着するよな。

確かに嫌な人でなければ、触られるのは動物の本能として気持ちが良かったりするけどさ。

概ね嫌がるのは人間くらいなもので。

あっ、こいつらシャドウデーモンだったわ。

とりあえずそれで納得しておこう。

そんな感じで朝食をとった後、俺たちは再び次の『アリの町』を目指して歩き出した。


アリの町には午前中早い時間に到着した。

いつも町への到着はだいたい昼前後だけれど、今回は少し早いせいか町を出る冒険者を多く見かけた。

この町は近くに砂漠があるせいか、或いは事実上の最前線だからか、割と強めの冒険者が多い印象を受けた。

「なんだこの町は?東海林王国は王子の力で守られているとか言っていたよな?我にはそれだけではないように感じるのだが?」

「そうねぇ~。確かにこの町は冒険者に限らず門番も含めて、人間離れした人が多いように見えるわねぇ~」

陽蝕と天冉の感想は、おそらく誰もが感じているだろう。

とにかく此処まで強そうな人物をまとめて見るのは初めてだ。

特に不思議なのが、強靭な肉体と大きな魔力を兼ね備えている事。

本来魔力というのは、身体的に劣る者の方が大きくなる傾向にある。

男女で言えば女性の方が魔法使い比率は多いし、男性の魔法使いであれば割と華奢な人が多い。

鍛錬に充てる時間も影響するし、素質という面でもそうなっている。

魔力を鍛えれば身体能力を超える力が得られる事も、両方を鍛える者が少ない理由になるだろう。

なのに強靭な肉体と大きな魔力、両方を兼ね備えている者がほとんどだった。

一体どうなっているんだ?

俺たちは不思議に感じながらも、そのまま町へと入っていった。

何にも感じていない奴もいるけれどね。

街の中に入っても違和感は拭えなかった。

「町の中も普通とは少し違うわねぇ~」

「ただの町民にしては魔力の強い者が多いと我は感じるぞ」

「確かに強い人が多いですが、僕ほどではないので気にしません」

「いや想香。そういう問題じゃないだろ?」

「別に‥‥何も‥‥変わらない‥‥」

「狛里はもう少しデリケートになろうな」

「策也ちゃん‥‥デリカシーがない‥‥」

「そうなんだお。女の子はみんなデリケートなんだお」

「いやどう見ても‥‥。なんでもない」

狛里はデリケートではないだろ!

そうツッコミたい気持ちもあったがやめておいた。

つかついつい狛里や想香には一言いわずにはいられなくなっているな。

俺は目立たないパーティーメンバーを目指しているのだから、スルーだ!

スルーするのだ!

「でも確かにこの町は普通じゃないお」

「先輩の言う通りです。それにこれは人の魔力でしょうか?」

「どういう事なんだお?」

「確かに普通じゃねぇ。マイたちははぐれレッサーデーモンだからな。なんとなく違いが分かるんだぜ?」

「でもハッキリとは分からないであろう」

人の魔力と少し違う、か‥‥。

雪月花は何かを感じているようだ。

「尾花はどうだ?」

「この魔力は間違いなく人のものだの。しかし別の何かが少し混じったような感じがするのじゃ」

「ふむ‥‥」

もしかしたらこの町は、別の亜人種の血が多く混じっているのかもしれない。

しかしそれでもこんな風に身体能力、魔力共に高い素質の者が生まれて来る事は稀だ。

獣人やオーガと人間が交配した場合、ほぼ人が生まれてくる。

それは生まれてくる確率でも能力的にもだ。

エルフやドワーフの場合は混血種が生まれ、その次となれば完全に血が濃い方に寄る。

こういう人間が生まれてくる事はどの例でもあり得ない。

「人となったフェンリルやはぐれデーモンとの混血種ではないのか?」

「その場合確かに素質の高い者が生まれるかもしれん。でもここまで数が多いのは考えられないし、私たちは完全に人となるから魔力に違和感はあり得ない」

「そっか」

全く分からねぇ。

もしかしたら単純にこの町の者は両方の鍛錬をしているのかもなぁ。

一般人が此処までやる意味は感じられない訳だが。

そんな事を思いながら町を歩いていると、馴染みのない会話が町民の間から聞こえてきた。

「覚醒者が産まれたらしいぞ。三丁目の磯野さん宅だ」

「へぇ~。覚醒者は今年二人目だな。今じゃこの町だと年に三人以上は生まれるもんな」

「それで断角式(だんかくしき)は何時なんだ?」

「女の子だから今週中にはできると思うぞ」

覚醒者だと?

それに断角式?

何かの能力に覚醒した子供でも産まれてくるのだろうか。

もしかして強い者たちはそういう事なのか?

だとしてもちょっと人数が多すぎる気がする。

断角式ってのも気になるな。

とりあえずあの暇そうなおっさんに聞いてみるか。

俺がそう思った時には既に想香が動いていた。

「すみません。今『覚醒者』とかって言葉が聞こえてきたのですが、それは一体なんでしょうか?」

ナイスだ想香。

やっぱ男が聞くよりも可愛い女の子が聞いた方が教えてくれるだろうしな。

「ん?お嬢ちゃん見かけない顔だな」

「はい。僕は旅の冒険者なのです。だから僕もあなたの事は見かけません」

「そりゃそうだ!ははははは!」

「はははのはー!

おいっ!笑ってないでちゃんと聞け!

「それじゃあな!」

「はい。お気をつけて」

おい想香!何故話しかけたのか忘れているぞ!

「ちょっと待ってください!僕の質問に答えてほしいのです!」

おっ!思い出したか!?

よく頑張ったぞ。

今度はちゃんと聞けよ。

「おおっ!そう言えば何か聞かれていたな」

「そうなのです。『覚醒者』ってなんでしょうか?僕は気になります」

「ん?覚醒者を知らないのか?」

「はい。僕は旅の冒険者ですから」

「そうだったな。この町の事を知らなくて当然だな。ははははは」

「当然なのです。はははは」

「まあゆっくりしていってくれ」

「ありがとうございます。では!」

「じゃあな!」

やっぱりこうなるんかーい!

「それで覚醒者とはなんなのかしらぁ~?」

去っていこうとするおっさんの前に天冉が立ちはだかっていた。

何処か少し怒っているようだった。

そりゃ天冉も気になるよな。

「おっ!お嬢ちゃんも見かねない‥‥」

「覚醒者ってなんなのかしらぁ~?」

天冉の必殺技、『威嚇の瞳』が炸裂だー!

流石におっさんもこれ以上はボケられまい。

「あ、ああそうだったな。覚醒者ってのはオーガや獣人の血が入っている者の子供として突然オーガや獣人として産まれて来た者の事だよ。この町じゃオーガの子供って意味だけどな」

なるほどそういう事ね。

でもだからといってコレがこの町の違和感解消には繋がらない。

この町で年に三人以上のオーガが生まれて来るのなら、この町の何パーセントかにはオーガの血が入っているのだろう。

だけどみんな人なのだ。

人として産まれてきた者の能力は、人相応になる。

「では断角式って何かしらぁ~?」

「断角式ってのは、産まれてきたオーガの子供の角が生えきったら、それを切る儀式の事だよ。この町じゃオーガは角を切って人になる事になっているんだ。ただの人よりも強いから、この町じゃ『神さん』って呼ばれているけどな」

そんな事になっていたのか。

しかし角を切ると(オーガ)が『神さん』と呼ばれる人になる、か。

なんとなく昔の日本のようだ。

日本では昔、未婚の女性を『鬼』としていた。

そして女性が結婚する時、角隠しによって角が失くなるとされている。

結婚する事で女性は鬼から『かみさん』となるのだ。

鬼という漢字の角の部分を取った字を、昔は『かみ』と読んでいたらしい。

今では存在しない漢字となっているけれどね。

だけど今でも鬼子母神(きしもじん)の神額や御朱印には角のない鬼の字が使われていたりする。

この話は一説に過ぎない話だけれど、元日本人の神が創った世界なら十分にあり得る設定だよな。

「そうなのねぇ~。じゃあこの町で魔力の大きく強そうな人は、神さんって事でいいのかしらぁ~?」

「俺は魔力とかあまり感じられないからよく分からんが、おそらくそうだろうよ。もっと詳しい話が知りたかったら冒険者ギルドで聞くといい。あの北都尚成も何か関係があるって話だしな」

なんだと!?

この話に北都尚成が?

どういう風に関係しているっていうんだ?

「ありがとう~!じゃあちょっと冒険者ギルドで聞いてみるわねぇ~」

「お、おう!じゃあな!」

開放されホッとした様子で、おっさんは去って行った。

「と、いう事らしいわよぉ~」

天冉が振り返って俺にそう言った。

助かったよ。

ありがとう天冉。

さて正直、一刻も早く聞きたい気持ちってほどではないけれど、俺はやるべきことは先に済まさないと嫌な質だ。

これは今すぐ冒険者ギルドに行かなければ。

「だな。ならこれから冒険者ギルドでいいんだよな?」

「まだ食事の時間には早いけどぉ~‥‥」

「問題ない‥‥美味しいものは‥‥別次元‥‥」

「そうです!一日耐久の食事もやぶさかではありません」

「そうか。サンキュー!」

偶にはこいつらがアホの子でも助かる時があるんだな。

食いしん坊バンザイだよ。

『なんだか最近ジェラシーなのです』

『妃子たちのポジションを奪われつつあるのね』

いつもの如く、俺が他の女の子を馬鹿に思っていると、こいつらがテレパシー通信を入れてくるんだよな。

『いや大丈夫だぞ。おまえらほどアホの子にはなれないからな。それにおまえらにはうんこがあるじゃないか!?』

そうだ。

現在のヒロインは狛里や想香ではあるけれど、おそらく読者人気なら少女隊の方が上だろう。

うんこネタを言える萌えキャラに、勝てるヤツなんていやしないのだ。

『なんか複雑な気分なのです』

『最近うんこネタも言ってないのね』

なんだ、今日はやけに立ち直りが悪いな。

俺は町に飛んでるコガネムシを一匹捕まえて影に落とした。

『うわっ!カナブンなのです!』

『これは妃子のものなのね』

『違うのです!菜乃のものなのです!』

『こうなったら勝負なのね!』

よし!効果は抜群のようだな。

二人とも元気だ。

何はともあれ、しばらく影の中では仁義なき戦いが繰り広げられるのだった。

一応結果を言っておくと、コガネムシの御臨終で戦いは終わった。


さてやってきました冒険者ギルド。

いつも通り中に入ると、時間が早いせいか冒険者の姿は数えるほどだった。

そして食事処で食事をする者もいなかった。

俺たちはとりあえず席について注文をした。

毎回のパターンだと、食事が終わる頃にギルド職員がやってくるはずだ。

しかし流石に待ってもいられない。

つか俺はまだお腹が減ってないしね。

そんな訳で俺は一人席を立ち、先に聞いてくる事にした。

俺はギルドの受付前に移動すると、職員のお姉さんに声をかけた。

「えっと、聞きたい事があるんだけど良いかな?」

「はい、なんでしょうか?」

「さっきそこでこの町のオーガの角の話を聞いたんだけれど、それに北都尚成が絡んでいるっていうのは本当なのか?その辺の詳しい事を知りたければギルドで聞いてくれって言われたんだが」

「はい。確かに英雄の北都尚成が絡んでいるという話はありますね。でも私もあまり詳しくは知らないんですよ。失礼ですが貴方はどちら様でしょうか?」

「失礼。俺は萬屋ぼったくりの末端メンバー、此花策也だ」

俺はそう言いながらギルドカードを提示した。

「おお!そう言えばそろそろこの町にも来られるという報告は受けてました。予定よりも早いですね」

そりゃ逃げるように出てきたからな。

「メンバーもみんなあっちで食事をしているよ。何か依頼があるのなら食事の後にでも話し掛けてくれ」

「ありがとうございます。ですかこの町は、もうお分かりでしょうが、レベルの高い冒険者が沢山いますし、騎士団も充実しています。指名依頼は特にないですよ」

「だろうな。それで北都尚成とオーガについて、詳しく聞ける者はいないか?」

俺がそう言った時、タイミングよくギルドマスターらしき者が現れた。

ナイスタイミングというか、当然のご都合展開だな。

そしてその者は間違いなくギルドマスターだと分かった。

また吉田かな。

「萬屋のメンバーが北都尚成に関して知りたがっているという話は、既に聞いているよ」

そりゃどの町に行っても聞いてりゃ、そういう情報も伝わっているか。

「そうか。ならば話してもらえるのか?」

「一つ聞きたいのだが、何故北都尚成について聞きたいんだい?」

むむ‥‥そう聞かれるとちょっと困るな。

全てを話す訳にもいかないし、かといって嘘を言って話を断られるのも困る。

仲間のみんなにも話している範囲で話すにしても此処じゃなんだな。

「理由には少し個人的な秘密も含まれているから、他言無用という事でいいなら話す。とにかく此処じゃちょっと話せないから、場所を移動しないか?」

「それはこちらとしても望む所だ。実はこの話は他言無用でお願いしたいものなんだよ。お互い秘密同士であれば、話される心配もないからね」

あまり話せない事なのか。

でももし北都尚成が俺であるなら、秘密を条件に何かをする可能性はあるよな。

現に今俺は秘密を条件にして話をしようとしているのだから。

「なるほどそれはいい」

「では応接室に移動しよう。あそこなら二人で話ができる」

「助かる。ただ、話せる範囲で後で仲間に話す事になるけれど構わないか?」

「こちらも話したとなれば納得できる範囲で何人かに話す事にはなると思う」

「分かった。その辺りも含めて話をしよう」

こうして俺とギルドマスターは、お決まりの応接室へと移動した。

部屋には二人きり。

俺とギルドマスターは向かい合って座った。

「まずは自己紹介をしておこう。私はギルドマスターの鬼丸です」

吉田じゃないんかーい!

まあでも確かに今までのギルマスとは少し違うもんな。

体も大柄で魔力も大きい。

モブではない感じがある。

「俺は此花策也。よろしく」

「よろしく。それで早速なんだが、知りたい理由を話してもらえるかな?その理由如何ではこちらも話せない可能性がある」

「分かった。話をさせてもらうよ。じゃあまずコレを見てくれ。菜乃!妃子!出てきていいぞ!」

俺が呼ぶと、少女隊は俺の座るソファーの後ろの影から生えてくるように姿を表した。

「おっ!なんだ?」

「これは俺の分身みたいなものだ。俺の中にいる別の存在だな。俺自身でもある。その二人が合体すると‥‥」

「合体すると?」

『おい!お前らさっさと北都尚成に合体しろ!』

『そういう事なのね?』

『そう言ってくれないと分からないのです』

いつもは心を勝手に見るくせに、こういう時はやらないのかよ。

二人は合体して北都尚成の姿になった。

「おお!女の子二人が一人の男になった?」

「北都尚成を知っているのなら、この姿を見て分からないか?」

「ん?スカイブルーの髪‥‥。もしかして北都尚成なのか?」

「ギルドカードを見せてやってくれ」

俺がそう言うと、少女隊の北都尚成はカードを鬼丸に差し出した。

「これは‥‥。この町で発行した北都尚成のギルドカードじゃないか!」

へぇ~、何処で発行したかも分かるのか。

そりゃそうか。

「そうなのか。だけど俺も分身も正直何も覚えていないんだ。だからその記憶を取り戻す為に、北都尚成が何をしてきたのか聞いているという訳さ」

「なるほどな。十五年前に北都尚成がこの世界から忽如(こつじょ)と消えた。それはもしかしたら記憶喪失だったかもしれないって事か」

それはないんだけどね。

俺がこの世界に来たのは最近だからさ。

「どうだ?話してもらえるか?」

「分かった。話そう」

こうして俺は、今から二十年程前にアリの町であった、北都尚成が英雄としてスタートする最初の話を聞かされる事になったのだった。

2024年10月16日 言葉を一部修正

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