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異世界のチートな萬屋店長~一寸神アナザーアフター~  作者: 秋華(秋山華道)
東海林編
46/64

猫蓮ミッション!対オークの森

戦争において、戦略レベルの負けを戦術レベルで逆転して勝利する事は難しい。

一万の兵で十万の兵に勝つのはほぼ不可能だ。

しかし一万の兵で一万一千の兵が相手なら、戦術レベルで十分勝利する可能性はあるだろう。

もちろんそれでも同じ条件で戦えば、一万一千の兵を持つ方が有利な訳だけれどね。

そんな戦争で、日本兵はアメリカ兵を驚かせる戦いを何度もやってきた。

毎回アメリカ軍は日本軍の約五倍から十倍の兵を投入してきたにも関わらず、死傷者の数はほとんど変わらなかったのだ。

日本軍は戦略レベルではボロボロだったけれど、戦術レベルでは信じられない強さを誇った。

だから日本軍は、司令官は馬鹿だけれど兵士は超優秀だったと言われている。

それは別に間違いではないけれど、数が少ないからこその戦い方が結果に繋がった所もあったりするんだよね。


八神教という宗教の信仰者が九割以上を占めるアゲハの町を出て、俺たちが次に向かうは『カマキリの町』だ。

この町も港町で評判は上々だった。

「アゲハの町はいい町だったお。神の町と言われるだけはあるお」

「宗教の町ではなく神の町と言われているのも、やはりいい町であるが故なのか」

陽蝕の言う通り、宗教の町とか言われていたら、きっと町の雰囲気も違っていただろうな。

宗教の町だと、教団が力を持っていてそれに従わされている町という感じがする。

神の町ならなんとなくみんなが神の存在を感じている、そんな幸せな雰囲気になるだろう。

「それで‥‥次の‥‥カマキリの町は‥‥どんな感じ?‥‥」

「そうねぇ。普通にいい町だと聞いているけどぉ~、最近はオークに悩まされているとか言っていたわねぇ~」

姫巫子からの情報によると、カマキリの町の北東には、オークの森というオークの縄張りがあるらしい。

そこは八神の教えによって不可侵の森とし、決して人間が入ってはいけないとされてきた。

オークと住み分けをして平和を得てきた訳だね。

しかし近年、どうやらオークの数が増えすぎたせいで、森からオークが出てくるようになったらしい。

森の近くまで人間が開発の手を進めていった事も、オークが出てくる理由の一つかもしれないとも言われている。

当然討伐する事になる訳だけれど、そこから争いが始まりそれはドンドン大きくなってきているとか。

既に戦争状態という話もあり、また何やらトラブルに巻き込まれそうな予感はしていた。

海に近い道を歩いて行くと、昼前にはカマキリの町へと到着した。

外から見た感じ、特に変わった様子はない。

ただ、町に入る防壁門の所にいる門番が、たった一人だけだったのが気になった。

「こんにちわぁ~。ご苦労さまですぅ~」

天冉が声をかけると、門番は少し疲れた様子で挨拶を返してきた。

「ああ‥‥こんにちは‥‥」

少し疲れているといったレベルじゃないな。

相当疲れているご様子だ。

これじゃ門番の仕事もままならない。

「お疲れのようですね?休んだ方がいいのではないですか?誰かに代わってもらうのです!」

心配して想香が声を掛けた。

「いや、他は皆‥‥もっと大変なんだ。俺はまだ‥‥此処で楽できていい方なんだよ‥‥」

代わってもらえるならとっくにそうしている、か。

そして此処で門番をするのが楽ってどういう状況なんだよ。

決して楽そうにも見えないぞ。

「何か‥‥あった?‥‥助けが‥‥いるなら‥‥聞くよ‥‥」

そうだな。

狛里でなくても困っている人は助けたくなるもの。

これだけ疲れているのに楽な方とか、話くらいは聞かせてほしい。

「あれ?‥‥もしかしてあんたたち‥‥」

そう言いながら門番は俺たちを順番に見ていった。

「十人‥‥萬屋ぼったくりか?!」

門番は大きな声を張り上げた。

「うん‥‥そうだけど‥‥声が‥‥大きい‥‥」

狛里が耳を押さえて顔をしかめていた。

でもお構いなしに門番は大きな声で話す。

「待っていたんだよ!萬屋が来てくれるのを!オークの問題を相談したくてさ!」

なるほどね。

そういう事か。

しかし門番、さっきが嘘のように元気だな。

それでどういう事か門番に話を聞くと、『とにかく冒険者ギルドへ行ってくれ』と言われた俺たちは、町に入るなり冒険者ギルドを訪れるのだった。


とにかく寄り道をする事も迷う事もなく、俺たちは冒険者ギルドへと到着した。

すると何故か俺たちがくる事を知っていたようで、すぐに応接室へと通された。

また応接室かよ。

ワンパターンはやめろよな。

なんて思って部屋に入ると、そこにはテーブルが置かれ食事が順次並べられていた。

「是非食事でもしながらお話をさせていただきたいのです」

そう言われて断れるメンバーじゃない。

既に狛里と想香はテーブル席に座って、箸を両手に持ち食べるのを待っていた。

昔はその役、想香じゃなくて天冉だったよな。

流石に男ができたらもうできないか。

「美味しいの‥‥お願い‥‥」

「白飯はまだですかー!大盛りでお願いするのですー!」

こいつら‥‥、少女隊のようにツッコミを入れてやろうか。

駄目だ。

狛里と想香は食べ物の前でだけ我を忘れるに過ぎない。

此処は大きな心でスルーしよう。

ギルドのおっちゃんだって汗を流しながら苦笑いするだけで我慢しているんだからな。

俺たちは適当な席に順番に座っていった。

そして最後に、おそらくギルドマスターである吉田さんが席についた。

「あらためまして。俺が冒険者ギルドマスターの吉田だ」

ほらな、やっぱり吉田だよ。

モブキャラのギルドマスターはみんな吉田で間違いなさそうだ。

「私はこの萬屋ぼったくりのマネージャー新巻鮭天冉よぉ~」

今更だけれど、加工してある鮭なのに天然とか詐欺だよな。

加工前が天然ものならオッケーなのだろうか。

「よろしく。それで今日は相談したい事があってな。とりあえずみんな料理は好きに食べてくれ」

ギルドマスターの言葉に、今までお預け状態だった狛里と想香が勢いよく食べ始めた。

「なかなか‥‥美味しい‥‥」

「やっぱり白飯最高なのです!新鮮な魚はべらぼうに美味しいですね」

このカマキリの町も城塞都市ではあるけれど港町だ。

料理には美味しそうな魚が沢山並んでいた。

「それで相談とは何かしらぁ~?」

そんな中でも天冉は、やはり王族といった立ち居振る舞いをしていた。

一応食事を始めながらも、しっかりと目的は忘れない。

むしろギルドマスターの方が、一瞬食事に集中して話を中断させていた。

「おっと、相談だったな」

吉田はそう言ってから一旦口の中の物を呑み込んだ。

そして再び話し始める。

「もう聞いているかもしれないが、実は最近オークの森からオーク共が人間のテリトリーに侵攻してきておってな。さてどうしたものかと領主共々悩んでいるんだ」

聞いていた通りか。

しかしオークの件に関しては、昨日今日の問題でも無いだろう。

まあ理由は大体分かるけどね。

さっきギルド内を見た感じ強い冒険者も少なそうだし、俺たちが来るまで何ともできなったんだろうな。

「オークを全滅させたらよろしいのかしらぁ~?」

吉田の話を聞いてざっくり解決策を推測すれば、それが一番シンプルで分かりやすく確実だ。

俺たち萬屋ぼったくりにはそれが可能でもあるしベストの方法でもあるだろう。

しかしだったらこんな相談はしてこないんだよな。

「それがそうもできない事情があってな。アゲハの町に寄ってきただろうから知っていると思うが、東海林王国では八神姫の教えは絶対に近いんだ。そしてオークの森は不可侵の場所と定められている」

絶対に近いか。

姫巫子の教えは、住み分けをして多様なものたちが共に暮らせる世界を実現する事だ。

いくらオークが人間に危害を及ぼすものだとしても、決して全滅させようなんて考えない。

それはある意味正しい。

転生前の世界でも、熊を全て殺そうとは考えなかったし、ゴキブリですら全滅は考えなかった。

理由は『命あるものだから』というのもあるけれど、『何かの役に立つかもしれない』可能性は必ずあるから。

自然にある生物の成分・機能が、科学技術に、或いは医療に役立つなんて事は結構ある。

だからできる限り生かしておかなければならないのだ。

もちろんそれはメリットとデメリットの天秤にかけて判断するべきだから、常に正しいとは言えないけれどね。

オークなんて魔物は、正直野蛮で人間に害しかもたらさないように感じられる。

そして世界中にいて、この東海林王国にいるのを全滅させても大したデメリットもない。

だったら国内のオークを全滅させる事が一番良い解決方法だと俺なら考える。

でも八神姫の教えが今回は枷となるのか。

良い教えも、時と場合によるんだよなぁ。

だから宗教ってのは‥‥。

いや、宗教だけに限らないか。

どんなルールもそうだ。

だけれどルールはバグが見つかれば改善していく事ができる。

改善が難しい宗教はやっぱり厄介だよ。

「となるとオークの森の中のオークには手を出さず、それでオークが森から出てこないようにしなければならないと?我にはオーク共とそんな意思疎通ができるとは思えんが」

「それでもオークの数が増えすぎる前までは、今ほどひどくはなかった」

「それでは数を減らせれば良いわけだな?」

「しかし森には入れない。森から出てくるのだけ討伐していても数は減らないだろう」

それでは結局、今の状態を続けるしかないんじゃないか?

「それじゃあ~私たちにも解決は難しいわねぇ~」

森に入れない。

数も減らせない。

あぶれたオークは必ず出てくる。

これはお手上げだな。

「オデがこの町で冒険者をやっていたら、オークなんてすぐに討伐できるんだお‥‥」

だよな。

オークなんてアッサリ討伐できるだけの力を持った者がこの町にいれば、ぶっちゃけ何も問題にはならないんだよ。

って!おおっ!それだ!

猫蓮もちょくちょく良い事言うようになってきたな。

どうやら天冉も気がついたようだ。

「この国には東海林久美王子がいらっしゃるわよねぇ~。ちょくちょく来てもらって一掃してもらえないのかしらぁ~」

「実は一度討伐に来てもらった事がある。しかし一週間もしない間に元通りさ。流石にそう何度も来てもらう訳にもいかないんだよ」

一週間で元通りか。

オークって繁殖力強そうだしなぁ。

となると方法は一つ。

この町の騎士や警備兵がオークよりも圧倒的に強くなるしかない。

「この町の討伐軍に強くなってもらうしかないわよねぇ~」

「その為に騎士隊やら討伐軍の訓練は始めているのだが、すぐには強くなんて無理だしな」

確かにすぐに強くはできないが、戦力をアップさせる方法はいくつかある。

最も簡単なのは数を増やす事だ。

徴兵して圧倒的有利な数を揃えればいい。

ただ今回の相手はオークで、倒しても倒しても数が増える魔物が相手では厳しい戦いとなるだろう。

となると後は‥‥。

「策也ちん?何か方法はあるぅ~?」

「そうだな。全く無い訳じゃないけれど、とりあえず状況確認してみない事にはなんとも言えないかな」

「という訳だからぁ~、とりあえず状況確認させてもらえないかしらぁ~?当然相談料、状況確認料等代金はちゃんといただきますよぉ~?」

えっ?それも金取るんだ。

まあ出張料を取る事もあるもんな。

弁護士には相談するだけで金を払う訳だし。

でも見積もりにまで金を取っているみたいで、ちょっと気が引けるぜ。

「わ、分かった。一応解決する方法はあるんだよな?」

天冉が俺を見た。

「あ、ああ。いくら金をかけても良いというのなら解決方法はある。ただなるべく安く現実的な対処方法を探りたいと思っているだけだ」

いくらでも金をかけていいなら、自動回復する宝石システムを使って森を丸ごと結界で包めばいい。

でも流石に現実的じゃないよね。

「そうか‥‥」

「では料金の交渉をしましょうかぁ~」

「じゃあそれがまとまり次第、俺と猫蓮で状況確認に行く事にする」

「オデも行くんだお?」

「当然じゃないか。猫蓮の優れた知識でいいアイデアを考えてほしいんだよ」

「おおっ!分かったお!オデの知識が必要というなら仕方ないお」

ぶっちゃけマジで期待しているんだぞ?

俺よりも長く日本で暮らしていたなら、新しい戦略戦術を知っているかもしれない。

或いは新しい発想の武器が開発されている可能性だってある。

その辺りこいつが転生者の強みを見せてくれれば良いんだけどさ。

その後天冉と吉田の話し合いはすぐに終わり、俺と猫蓮は町の北東にあるオークの森近くへと向かった。


森が遠くに見える辺り、思った以上に大規模な戦闘が繰り広げられていた。

これはちょっとした戦いではない。

完全に戦争状態と言える。

お互い陣を築きにらみ合い状態だ。

そんな中時々どちらからか戦いを挑んでは引き返すようなのが繰り返されていた。

「猫蓮、どう思う?」

「騎士や町の兵の方が人数は多いお。なのに勝てないのはどういう事だお?」

人数が多いのに勝てていない。

敵陣に乗り込むとなればそれも分かるのだけれど、そこに至る前に痛み分けのような感じで両陣営引いている感じだ。

個々の戦力も差は無いように見える。

体力的にはオークが上だけれど、こちら側の武器の方が優れているからな。

戦術も特に差が感じられない。

何がこの人数の差を埋めているんだ?

あっ‥‥、そういう事か。

「こちら側は敵のオークを完全に仕留めるまで攻撃を続けている。一方オーク側は人数が少ない分そこまでやれない。結果こちら側は負傷者の回収にも兵を割かずにはいられなくなっているんだ」

「なるほどなんだお。死者は死者だけど負傷者は足手まといになるんだお」

それでも本当ならこちら側が有利のはずだけれど、オークは繁殖力が半端ないからなぁ。

毎日の戦いとなればすぐに埋め合わせて来る訳だ。

オークは基本的に魔法が使えないか苦手な魔物。

負傷したオークはそう簡単に戦場には戻ってこられないのだから、そもそも放置で十分なんだよな。

「どうだ猫蓮。こちら側が圧倒的に強くなる方法は見つかったか?」

「正直この戦いは戦略面でも戦術面でもお粗末過ぎるんだお。相手に合わせて戦う必要はないお。近代戦をするんだお」

なかなか頼もしい事を言うじゃないか。

後は猫蓮に任せても大丈夫かもしれない。

「そうか。じゃあ俺は何をすればいい?」

「策也殿はなんでも作れるお?」

「なんでもって訳じゃないけれど、必要な魔力をなんとかできるなら、結構いろいろできると思うが?」

「じゃあドローンを作ってほしいお!それに攻撃用ミサイルを搭載するお。レールガンも最強だお。後はロケットランチャーとか、いっそ戦車や戦闘ヘリを作ったら楽勝だお!」

おいおい、それは俺が知らない事になっている物ばかりだろうが。

つかそんなもんこの世界に持ち込んでどうする。

科学技術は持ち込まないのが異世界転生のマナーじゃないのか。

でも魔法でできる範囲ならやるか?

いやコストもかかりすぎるし、そもそも難しそうだな。

「ちょっとそれが何か分からないから、具体的にどういうものか教えてもらっていいか?」

「悪かったお!そう言えばそれはオデのいた世界のものだお。策也殿が知っている訳がなかったお」

知ってるけどさ。

たかだか十五年くらいの差だし、そんなに大きな変化もなさそうだな。

ただドローンにミサイルとか、話はあったけれど今は実際に使われていたりするのだろうか。

それにレールガンって、戦場に投入されていたりするのかねぇ。

俺が転生する前にアメリカでは開発を中止していたんだけどな。

ちょっと気になるよ。

「じゃあまずは戻って構想を話そう。了解が出たらできる範囲で俺は魔道具を作るさ」

「戦略戦術面の説明はオデに任せるお」

「頼んだ」

そんな訳で、なんとかなりそうだと俺たちは判断した。


戻ると早速天冉と吉田の話し合いは行われ、料金面で折り合いがついた所で俺と猫蓮の仕事が始まった。

つか働くの俺たちだけじゃねぇか。

他はみんなでのんびりと町を楽しんでいる。

どうも俺は貧乏くじを引かされるなぁ。

でも猫蓮は割と楽しそうだった。

「流石に攻撃ヘリや戦車は無理だけれど、自動装填クロスボウくらいなら作れるな」

「本当はもっと強力なのを作れれば圧倒的なんだお」

圧倒的過ぎても問題があるだろ。

東海林王国が将来の敵になる可能性だってある訳だし、あまりに強力なのは作らない方がいい。

だから俺は作れそうな物も作れないとした。

尤もやってみなくちゃ分からない訳で、作れたかもしれないし作れなかったかもしれない。

それはいずれ機会があれば試す事にしよう。

「でもクロスボウでも数が揃えば有利な戦術が使えるようになるお」

「そうだな」

この町の騎士や警備兵は、概ね近接戦闘員ばかりだ。

魔法使いも少なくて、遠距離からのサポートもそれほど強くはない。

八神教の祝福魔法で皆が若干強化されているくらいでは、戦いを有利には進められなかった。

概ね両者入り乱れての喧嘩だし。

サッカーで言えば、ボールを持ったらゴールに向かってただ蹴るだけの戦いだ。

まあそこまで酷くはないけれど、この世界の冒険者が百人パーティーを組んで戦うのよりもお粗末な戦いと言わざるを得なかった。

組織には組織としての戦い方がある。

それによって力を高められるのだ。

自動装填クロスボウという高性能で使いやすい飛び道具が沢山あれば、織田信長の鉄砲隊以上の戦いはできるだろう。

敵の負傷者をわざと残しておけば、更に有利な戦闘も可能だ。

そして多対一の状況を常に意識する。

戦術面の基本は各個撃破。

これできっと圧倒的な勝利を収められる。

「じゃあオデは騎士隊と警備兵に戦術の基本を叩き込んでくるお」

「よろしく」

猫蓮はそう言って鍛冶場から出ていった。

さて、猫蓮がいなくなれば全力で作れるな。

あまり楽勝で作れる所を見せる訳にはいかないし。

本気の所を見せたら、俺が圧倒的能力を持っている事がバレてしまう。

既に一部バレているだろうけれどね。

つか一日で五百のクロスボウと一万の矢を作る時点でチートなんだよなぁ。

孔明は頭を使って十万本の矢を一晩で集めたけれど、俺はガチだし。

まあ既に作ってある分が結構な数あるって話で納品するんだけどさ。

そんな訳で本気(ガチ)でやって、日が沈む前に終わってしまった。

暇だから前々から作ろうと思っていたアレも作っておくか。

マジックアイテムの方が作るのは何百倍も大変なんだよね。

結局この日俺は、ずっと鍛冶場に籠もるのだった。


そして次の日、俺と猫蓮は戦場にいた。

「地形を利用して多対一の状況を作るんだお!何もない所での戦いはなるべく避けるお」

「そうか。だけどもっと森の出口で叩きたいんだが」

「今のこの町の戦力じゃ無理だお。森近くの開発はまだ早いお。もっと戦闘力を上げてからにするお」

「俺たちが弱いばっかりに‥‥」

森の近くだと流石にオーク側に有利だからな。

森から直ぐに援軍も送れるし、そこから攻撃もしてくる。

こちらに優位な戦場を設定する事は大切だ。

「誘い込んだらクロスボウの一斉射撃だお!」

「撃てー!」

指揮官の命令で、ほとんどのオークが倒れた。

「凄い‥‥」

クロスボウの威力も魔力によって上げているからな。

「今なら数で圧倒してるお!チャンスに畳み掛けるお!」

「お、おう!騎士隊一気に叩け!トドメを刺す必要はない!とにかく戦闘不能状態にすればいい!できれば足を狙え!」

地形を利用し優位な状態で戦い、敵が優位と見れば誘い込んでクロスボウの餌食だ。

そしてまた優位になれば畳み掛ける。

常に優位な状態で戦えばほぼ無傷の勝利だ。

「押し返している隙に怪我人を回収だ!一人の死者も出すな!」

救助専用の部隊も作っておけば、戦えなくても十分に役に立つ仕事ができる。

なんだかんだ猫蓮もチート転生者か。

尤もこれくらいの事は、普通の軍ならできて当然なんだけどな。

ただ東海林王国は久美の力に頼りすぎているし、このカマキリの町は今まで平和すぎた。

簡単に言えば平和ボケした町だった訳だ。

今後はこれを基礎として強い軍が出来上がるだろう。

願わくばそれがヒューマンに向かわない事を祈る。

「これが戦術だお。戦略と合わせてみんなでどうしたら楽に勝てるのか。日々相談してほしいんだお。楽に勝つ方法を考えるのが大切だお」

「楽に勝つか。そういう発想はなかったな」

『楽に勝つ』ってのを『手を抜いて勝つ』と勘違いする奴もいるかもしれない。

でも念の為に言っておくけれどそうではないんだ。

戦う前に限界まで苦労するからこそ楽に勝てる。

これをすると転生前の世界では上司に怒られたんだよなぁ。

会社での仕事を楽にする為に、俺はコンピュータをカスタマイズして効率化プログラムを組んでいた。

そうして仕事で楽をしていたらサボっているように見えたらしい。

魅せる勝負には過程も大切だけれど、仕事や政治は結果が全てだと俺は思うんだけどな。

何にしてもこれで萬屋のミッションはコンプリートだ。

この大勝利を続けて行けば、直にオークも森から出て来られなくなるだろう。

少なくともカマキリの町方面にはね。

2024年10月16日 言葉を一部修正

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