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異世界のチートな萬屋店長~一寸神アナザーアフター~  作者: 秋華(秋山華道)
法螺貝編
37/64

輿論を築け!風で決まる世論は危うい

世論(せろん)輿論(よろん)は違う。

世論とはみんなの単なる多数派意見だけれど、輿論はみんなで議論し相談して出した結論だ。

どちらの方が結果正しいかは分からないけれど、輿論の方がより多く正解を出せると考えられる。

だから日本や世界の多くの国では、『間接民主主義』を採用している。

選挙という世論で代表者を決め、その代表者が議論して輿論という結論をだし政策に採用する。

これにより、国民の意見がより良く政策に反映される訳だ。

ただ残念ながら、この政治体制は上手く機能しているとは言い難い。

何故なら、政治家が選挙を意識するあまり、結局輿論ではなく世論が政策に反映されてしまうからだ。

そのバグを、今後どのように改善していくのかが民主主義国家の課題といえるのかもしれない。

でないと世論に押し切られ、取り返しのつかない過ちを犯す事になるだろう。

俺が生きていた頃の日本でも、ヤバい世論が叫ばれていた。

『女系天皇』だ。

国民の半数以上がこれに賛成し、『女性天皇』に至っては八割が賛成するという異常な状態だった。

確かに、『男女平等』とか『英国王室』なんかを理由に賛成するのは、一見正しいようにも感じる。

その視点から見れば、それはもしかしたら正しいのだろう。

しかし別の聞き方をすれば、おそらく多くの国民が反対することになるのだ。

『二千年以上ご先祖様が命がけで守ってきたものを、あなたは壊すのに賛成ですか反対ですか?』

そう聞かれたらどうだろうか。

ほとんどの国民は、答えは次の二つに絞られると思う。

『反対だ!』と言うか、『反対だが、みんなで話し合って壊すべきと判断できるものなら壊す事も仕方がない』と。

少なくとも積極的に壊すべきだという人はおらず、女性天皇の世論とは真逆の結果となる。

しかしどちらも皇室についての実質同じ質問なのだ。

何も知らない状態での判断か、少しだけその意味を踏まえられた判断かの違いである。

ご先祖様が命がけで守ってきたものだから、当然今も命がけで守ろうとする人はいるはずだ。

もしも女系天皇をやることになったら、命がけでそれを阻止しようとする人が現れて然るべきだろう。

そうなると国内は混乱し、内戦になる可能性だって大いにある。

それに賛成できる人なんて、『無知』か『日本を壊したい』人以外にはありえない。

このように世論は、時に誰かの手によって間違った方向に形成される事もあるので、世論ではなく輿論を大切にする姿勢は忘れてはいけないね。


俺たちはハマグリの町へと入っていた。

「何やら賑やかねぇ~」

「祭りの準備でもしているのだろうか?」

天冉や陽蝕の感想通り、祭りでもあるのかといった感じで賑やかだ。

ただ、祭りを前に楽しみにしているといった雰囲気ではない。

これから何かが起こるかもしれない。

そんなピリピリとした空気が漂っていた。

気がついたら想香が町の者に尋ねていた。

「何やら町が騒がしいのですが、祭りでもあるのでしょうか?」

「祭り?まあある意味祭りごとかもな。明日から住民投票があるんだよ」

住民投票ねぇ。

確かに政治の『政』は『まつりごと』と読む訳で、この世界でもそれは同じなのか。

「どんな投票なのです?」

全く想香は好奇心旺盛だな。

記憶がほとんどないから子供みたいなもんだし、そうなるのも仕方の無い事かもしれない。

「今回は、冒険者が町に出入りする事を禁止するかどうかって投票だ。最近冒険者の犯罪が多くてな。多くの住民が町へ入るのを嫌がっている。俺は違うぞ?でもおそらく決まりそうだよ」

『今回は』って事は、この町では毎回住民投票で町の事を決めているのか。

でもそれはやめた方がいいよなぁ。

世論なんて風で決まるから、悪意を持って誘導する事だってできる。

民から認められた領主や知識のある民の代表が、しっかり議論して輿論で決めた方がいい。

まあ俺が心配する事でもないか。

しかし冒険者を町に入れないとなると、相当なリスクがあると思う。

冒険者ギルドは失くなるだろうし、魔物退治は全て騎士の仕事になるから負担が大きい。

雑用係がいなくなるようなもんだから、薬草や素材が集まらなくなる。

流通にも問題が出るだろう。

護衛を雇えなければ、商人は自前でボディーガードを持つ必要が出てくる。

それにハマグリの町だけに、追放された冒険者が怒って何かする可能性も‥‥。

蛤御門(はまぐりごもん)の変は無いかw

ちなみに蛤御門の変とは、京都から追放された長州藩の者たちが町で暴れたアレね。

とにかくそういったデメリットやリスクを知らない一般人の意見で決めるとか、後で後悔する事になるんだろうな。

転生前の世界の日本でも、外国人犯罪ってのは問題になっていた。

それで日本から完全に外国人を排除するような論調がなかった訳じゃない。

でも当然そんな事はしない。

それにはそれ相応のデメリットやリスクがあるからだ。

大抵の場合は、その間に答えがあるんだけれどな。

「策也ちゃんは‥‥どう思う?‥‥」

いつの間にか狛里が横に来て聞いてきた。

「民が決めるのは一見正しいように見えるけどな。でも結果間違いも多いし、今回に限って言えば大間違いだろう」

「やっぱり‥‥そう‥‥なんだ‥‥」

それにしても懐かしくもあるなぁ。

アルカディアにいた頃も、世論には苦労したよ。

戦争しちゃいけない所で戦争をしろと煽られる。

なんとか住民を説得はしたけれど、国ってのが民の集合体であるとつくづく思い知らされるよ。

「冒険者がいるぜ?」

「町に入ってきちゃ駄目だろ?」

「お前も冒険者じゃないのか?」

「俺か?俺は冒険者を辞めて今はただの無職だ!」

「ははは!なら町に入っても問題ないな」

ガラの悪そうな元?冒険者たちの話し声が聞こえてきた。

そうそう、こういう奴らみたいにルールの抜け穴をついてくるのもいるんだ。

もしかしたらこういう輩が今回の件、裏で扇動しているのかもな。

今後はまともな冒険者だけが排除され、犯罪を犯すような悪い奴だけが入ってくる事になる。

まともな冒険者がいなくなる分、悪いこともしやすくなるって所か。

なんかムカつくな。

こんな奴らににそそのかされて、冒険者反対の声を上げた者もいるはずだ。

「よく見ると、冒険者に向ける目線が冷たく感じます」

「オデたちは別に悪い事しないお」

「なんだか嫌な感じー」

「これでは食事ができる場所を探すのも一苦労であろう」

雪月花の言うとおりだ。

この町はとっとと出た方が良いかもしれない。

「旦那様。食事は冒険者ギルドでとるしかないのでは?」

「そうだよなぁ」

尾花の言う通りではあるけれど、冒険者ギルドの食事処で食べるくらいなら自前でも変わらない。

皆がそんな風に町を出ようかと考えていると、一人の商人らしき者が声をかけてきた。

「貴方がたは萬屋の冒険者でいらっしゃいますか?」

最近少しずつ狛里に気づく者も減ってきてはいたけれど、当然まだまだ気がつく者もいる。

「そうだが?貴方は?」

「申し遅れました。私はこの町の商人ギルドマスターの補佐をしております、佐藤と申します」

佐藤キター!

っていうか、おそらくこういうありふれた名字もモブが多い。

ほらこういう世界を作るのって大抵オタクって相場が決まっているでしょ?

だから重要じゃないキャラにはありふれた名字がふられるんだよね。

それで次に会った時には鈴木に変わっていたりするんだよなぁ。

「我は鬼海星王国第三王子の陽蝕だ。で、こっちが新巻鮭王国第一王女の天冉姫だ」

「これはこれは、両者王族の方であらせられましたか」

「王族とか気にしないでねぇ~。今はただの冒険者よぉ~」

とは言われても、王族と分かったら恐縮せずにはいられないよな。

「そうですか。ではそうさせていただきます」

切り替え早!

「ところで鈴木さん、我々に何か御用かな?」

早速陽蝕が名字を変更してきたー!

「はい。確か萬屋は戦争以外あらゆる仕事を引き受けてくれると聞いております。間違いございませんか?」

そして元佐藤もスルーするー!

「そうねぇ~。あくまで常識の範囲内よぉ~。殺しを依頼されても無理だしぃ~、それに仕事に見合うお金が貰えないんじゃやらないわぁ~」

まあ当然だよな。

萬屋はボランティア集団ではないのだ。

でも俺、アルカディアではほぼボランティア活動やってたなぁ。

力があると相応の働きをしなければならない。

それが日本人に染み付いた宿命というか。

「そうですか。ならば是非お願いしたい案件が御座います。至急商人ギルドの方でお話させて貰えないでしょうか。お昼がまだでしたら商人ギルドランチをご馳走させていただきますが?」

「ランチ!‥‥」

「天冉さん、すぐに行きましょう!ランチが僕たちを待っているのです」

こいつらチョロ過ぎるだろう。

でもそう思うのは二人だけではないな。

みんなランチに期待している。

これは満場一致で可決のようだ。

そんな訳で俺たちは、商人ギルドでランチをしながら、ギルマス補佐である高橋の話を聞く事となった。

あれ?田中だったかな?


とりあえずまずはみんな料理にがっついた。

我がパーティーはこうなるのも仕方がないのです。

お腹も減っていたからね。

味は冒険者ギルド併設の食事処がファストフード店の集合体のような感じだとすると、こっちはちょっと高めのレストランといった感じだろうか。

個人的には冒険者ギルドの食事処の方が好きだけれど、まあこれはこれで美味いので当然誰からも文句は出なかった。

食事を思う存分楽しんだ後、ようやく山田がホッとしたように話し始めた。

山田じゃなく佐藤だな。

「えっと‥‥。この町で明日住民投票があるのはご存知のようですね」

食事をしながら少しその話をしていたので、佐藤もその辺りは聞いていたようだ。

「冒険者が町に入るのを禁止するかどうかを決めるのよねぇ~?」

「その通りです。そこでお願いしたいのは、その住民投票でこのルールの賛成票が半数を超えないようにしていただきたいのです」

当然と言えば当然か。

商人にとって冒険者は必要なのだ。

町まで護衛してもらって、町の外で『さようなら』という訳にもいかない。

往復する場合、外で待ってもらうとなると引き受ける冒険者もいなくなるだろう。

それだけじゃない。

冒険者は金を落としてくれるお客様でもあるのだ。

来なくなれば商人ギルドとしては死活問題になるかもしれない。

「具体的にどうしてほしいというのはあるのですかぁ~?」

「残念ながらどうしたら良いのか我々も分からないのです。口コミで反対活動はしていますが、なかなか厳しくて‥‥」

口コミだけじゃ厳しいけれど、この世界の住人の識字率は低い。

だから高札やチラシなどで知らせても効果は限定的だ。

猫蓮が領主になって苦しんでいたのも、住民の識字率の低さ故だった。

テレパシー通信も使える者が比較的多い世界ではあるけれど、それでもマジックミサイルが使える魔法使い程度もいないだろう。

「テレビがあれば世論誘導も一発なんだお‥‥」

猫蓮がボソッと独り言を呟いていた。

確かになぁ。

多くの民主主義国家に言えた話だけれど、選挙が政治家にとって最も重要になってしまっている事で、世論を左右するテレビメディアが最も権力を持つようになっている。

多少インターネットによってその地位は揺らいだけれど、それでも世論コントロールはテレビが一番なんだよなぁ。

「テレビとはなんでしょうか?」

「テレビは映像で情報を伝える魔法の箱みたいな物だお。オデの世界では各家庭に一台はあったお」

「へぇ~そんなのがありゃ一発で情報が伝えられるよな」

「でもそれは夢の魔法であろう」

残念ながらその通り、そんな魔法があれば苦労はしない。

「天冉ちゃん‥‥」

狛里が何かを訴えるように天冉を見ていた。

あれれ?もしかしてそんな魔法があったりするのだろうか。

「そう言えばわたくし、こんな物を持っています。このような物が沢山あれば‥‥」

そう言ってギルマス補佐の佐藤が取り出したのは、一枚のチラシのようなものだった。

そしてそれをテーブルに広げた。

「これは狛里店長ですね」

「確かに。何やら書かれているぞ」

「萬屋狛里、魔王アスモデウスを瞬殺する!って書かれているお」

これは‥‥なんだ?

間違いなくそこには狛里が描かれている。

そしてそれはアイドルポスターにも見えるし、狛里を宣伝する為のチラシにも見えた。

尤も、だからと言ってその程度で驚きはしない。

紙媒体がこの世界に無い訳じゃないからな。

だけど俺はこれを見て驚いていた。

理由は、おそらく文字が読めなくてもここに書かれている内容は理解できるはずだからだ。

書かれている文字が頭の中に音として流れてくる。

こんな物があるのか。

だから新巻鮭を出た事もない狛里の事を、他国の者が知っていたのだ。

なるほどねぇ。

しかし一体誰が‥‥。

「天冉なのか?」

俺は本人の顔を見た。

「策也ちんは勘が良いわねぇ~。それは新巻鮭が発行している喧伝用紙媒体(メディア)よぉ~」

ご都合主義来ちゃったよ。

「天冉ちゃんの‥‥魔法の一つ‥‥紙媒体化魔法‥‥」

「よくわかりませんが凄いですね!僕も一枚欲しいのです!」

想香は狛里のファンかよ!

「だったら、とにかく天冉姫がこれを沢山作れば、一気に住民の世論を動かす事が可能なんだお!」

「おお!本当ですか!」

「ただ問題があるのよねぇ~。私の魔力じゃ‥‥一日一枚作るのが限界なのよぉ~」

「‥‥」

一瞬皆が盛り上がっていたけれど、一気にそれは冷めていった。

仮に冒険者の出入りを禁止してはいけない理由の書かれたチラシを作ったとしても、それが一枚しかないのでは話にならない。

できれば町の全員に行き渡るくらいの枚数が必要だ。

それを例えば上空からばら撒くくらいしないと駄目だろう。

この町の世論を動かす事はできないのか?

いやちょっと待て。

天冉が一枚でも作れるなら、それを解析して俺が大量生産できるのではないだろうか。

「天冉。もしも明日の住民投票の結果を覆せる方法があれば、この仕事は受けるのか?」

「そうねぇ~。困っている人を見捨てるのは狛里ちんも嫌だろうしぃ~」

「だったら一枚でいいから、そのメディアとやらを作ってもらうぞ?」

「策也ちゃんに考えがあるのねぇ~?」

「考えってほどでもないけどな」

そんな訳で俺たちは、明日の住民投票で提案を否決させる為に動く事となった。


まずは天冉に喧伝用のメディアを作ってもらう。

内容は『冒険者の出入りを禁止すると起こる問題』を考えられる限り詰め込んだものだ。

ただそれだけじゃ俺は駄目だと考えた。

仮にそれをばら撒いて世論を覆したとしても、きっと同じ間違いをこの町の住民は繰り返してしまうだろう。

それに世論誘導だけでは単なる工作と同じだ。

もしもその結果が駄目だったとしても、住民はきっと反省しない。

情報を広めた者が悪いと思うだろう。

今後正しい情報すら信じなくなる可能性だってある。

情報を手にしたら、それを元にみんなで相談したり議論する事が大切であると伝えないと。

そして世論ではなく、輿論を形成して町の方向性やルールを決めていく事が大切だと分かってもらいたい。

ただの民主主義では転生前の世界と同じ過ちを繰り返すから。

「じゃあ天冉、こういう感じでメディアを作ってくれ」

「分かったわぁ~」

天冉は小さい魔力で、紙に絵や文字をゆっくりと記してゆく。

ペンなどは不要で、天冉から出る魔力が紙に張り付いていくようだった。

当然俺はその魔法そのものも神眼で解析していた。

これなら俺でも使えそうだな。

『妖凛、この術式は覚えられるか?』

『コクコク』

魔法記憶をこの世界では持ってはいないけれど、妖凛と融合した事で妖凛に覚えていてもらうという手が使えるようになったんだよね。

妖凛の記憶力はメチャメチャいいからさ。

妖凛最高!

ちなみに記憶にあってもその魔法を使う事は不可能だよ。

このイスカンデルでは、使える魔法や能力として登録しないと駄目だからね。

全く面倒な世界だよ。

そうこうしている間にメディアは完成した。

「おお!仮に作ったチラシにソックリなんだお。でも天冉姫のは文字が伝わってくるお!」

「イラストに書かれている猫が可愛いのです。こんなものが目の前にあったら、みんなで取り合いになるのは確実ですね」

「うん‥‥でも一枚じゃ‥‥駄目‥‥意味がない‥‥」

「本当に策也はこれを複製できるのか?」

「多分な」

やった事が無いものを絶対にできるとは言えない。

ただ最悪天冉の能力は盗ませてもらっているから、それを登録すればいくらでも作れるし問題はもうない。

でもまずは鍛冶魔法でコピーだ。

その方が紙も必要無いし早いだろう。

材料は異次元収納から適当に使う。

とりあえず一枚コピーしてみた。

しっかりと文字内容が伝わってきた。

「できそうだな」

「流石は旦那様」

「策也殿はやっぱりオデよりもチートなんだお」

「色々できるから良いという訳ではありませんが、今回は褒めてあげます」

「やっぱり‥‥策也ちゃん‥‥凄い‥‥」

「鍛冶魔法良いわねぇ~。まさかその魔法でコピーができるとは思わなかったわぁ~」

いや天冉。

鍛冶魔法だけではできない可能性もあるんだよ。

俺には神眼があるから、すぐに解析できて作る事ができた。

でも神眼がなければ、自力で解析していかなければならない。

もしかしたら解析できないかもしれないし、解析に何年もかかるかもしれない。

萬屋ぼったくりメンバーはその辺り知っていると思うけれど、天冉には後で話しておくか。

その後俺は猛スピードでメディアを刷り続けた。

そして一時間ほどでこの町の人口分、五万枚のメディアが出来上がった。

「じゃあ暗くなる前に撒いちゃいましょうかぁ~」

「分かった‥‥」

「空から撒いて風の魔法で拡散させるのですね?」

「町の外に出ないよう我が光のカーテンで町を囲っておこう」

陽蝕の言う光のカーテンとは、普通の物理結界よりもとても弱い結界のようなものだ。

紙程度なら止める事はできるが、人の出入りを止められるようなものではない。

その代わり広範囲で使えるし、その内側は薄っすらと光り輝くのが特徴である。

「魔法はチート魔法使いのオデに任せるお」

つっても猫蓮は弱い風魔法を持っていない。

だから拡散用の風魔法は、魔法書を使って行う事となった。


少し町が赤くなり始めた頃、空に沢山の紙が舞っていた。

明日の投票まで、どれくらい話し合いをしてもらえるかは分からない。

ただおそらく、これで冒険者が出入りできなくなる事態は避けられるだろう。

冒険者ギルドだって町から出ていく事になったら困る訳で、対策はしてくれるはずだ。

「ありがとうございます。住民の反応は上々です。まず間違いなく提案は否決されることでしょう」

「それは良かったわぁ~」

「報酬は明日の結果を見てからという事でしたが、明日には町を発たれるのですよね?」

「できればそのつもりよぉ~」

「もう結果は見えておりますので、すぐにお支払いさせていただきます」

こりゃ気前がいいな。

物事に絶対はないし、普通ならちゃんと見届けてから金を出すものだ。

ただ今回の件で言えば、一応話し合って出した方法を既に実行している訳で、こちらは労働力を提供し経費を消費している。

貰っておいて問題はないだろう。

これで投票に負けるようなら、それは自身の責任と言う事で。

そんな訳で天冉は早々に報酬を貰い、次の日の朝早くには次の町を目指して出発するのだった。

2024年10月16日 言葉を一部修正

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