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異世界のチートな萬屋店長~一寸神アナザーアフター~  作者: 秋華(秋山華道)
法螺貝編
36/64

ボスドラゴンの森と北都尚成

忘れた名前は、忘れた頃に思い出す。

災害は、忘れた頃にやってくる。

情報は、探している時には得られないけれど、忘れた頃に突然入ってきたりする。

とはいえ、何もせず忘れていればいいというものでもない。

大切な事は、やはりしっかりと対処しておくべきだよね。


突然想香が言ってきた。

「なんとなくですが、僕は以前策也さんとどこかで会った事があるような気がするのです」

今日想香と初対面なら、これはマニュアル通りのナンパという事になるのだろう。

でも当然想香とはずっと一緒に旅をしてきた仲だ。

そうではない事くらいすぐに分かる。

となると記憶が戻ってきたのかもしれないという判断になり得る。

仮にそうだとして、想香はこの世界の人間に間違いはない。

異世界人を元の世界に戻す魔法に反応しなかったからだ。

猫蓮も反応しなかった事から、少なくとも体はこの世界にずっといた事になる。

普通に考えて、この世界の住人なのに俺と会った事があると感じるというのは、北都尚成と会った事があると捉える事ができるのではないだろうか。

しかし想香の今の年齢は十五歳で、生まれたのは丁度北都尚成が姿を消した辺りだ。

まず会っている可能性はゼロと言える。

となるともう一つの可能性としては、想香も猫蓮と同じような転生者である可能性だ。

日本やアルカディアで俺と会っていたか。

その場合記憶を失って転生してきたのは魂であり、しかも体本体も記憶喪失という状況だった事になる。

体の方が記憶喪失ってのはよくありそうだ。

俺がアルカディアに転生した時もそうだったし、猫蓮だって日本での記憶だけみたいだからね。

いや俺の場合、アルカディアに転生した際もみゆきの事を忘れていた訳で、転生した場合どちらの記憶も曖昧になる事は多々あるように思う。

誰もが『そこにいる』と認識しなければ、その人は『そこにはいない』事になる訳だし。

それに輪廻転生は、普通完全に記憶がリセットされる訳で、むしろ記憶が残っている方がイレギュラー。

案外天冉や狛里だって、前世では知り合いだったかもしれない。

おそらくその場合、どちらかが相手をそうだと認識した時点で、きっと両者とも記憶は戻るのだろう。

まあ深く考えても仕方がないな。

思い出す時が来るなら、いずれその時は訪れるさ。

「想香と会った事があるかどうかは分からないけど、想香は俺の知り合いに似ているんだよな」

「そうなのですか?」

「まあな。正確には何人か合わせたような感じだけどな」

召喚の時に想像しちまったもんな。

みゆきと、金魚と、兎白‥‥。

金魚が似たのは名字だけだけど。

「きっとその人たちは可愛い大人の女性だったに違いありません」

ん~‥‥。

むしろみんな子供だった気がするけれど、それは言わないでおこう。

「ところで、あの店なんかどうだ?美味しいものが食べられそうだし、十人でも大丈夫そうだ」

俺たちは今朝ホラの町を出て、昼にはクロチョウの町に到着した。

ここは極ありふれた町だけれど、森が近い割に魔物が出ない為か防壁が低いのが印象的だった。

他には特に何かがある訳でもなく、とにかくどこかで食事をしようという話になった。

つまり俺たちは今、食事ができる店を探して町を歩いている所だった。

「いいと‥‥思う‥‥美味しそうな‥‥匂いがする‥‥」

狛里の美味しいものレーダーがしっかりと反応しているようで、これは期待できそうな店だ。

「じゃあそうしましょう~」

「ならば我が入れるか聞いてこよう」

先日の一件、法螺貝王都の城で天冉が王様を殺っちまったあの時から、少し陽蝕の態度に変化が見られた。

これまでは概ね猫蓮に興味を示していたけれど、興味の対象が天冉へと移ったようだった。

不思議なモノが好きだと言うなら、確かに天冉は謎の姫だもんな。

それにそれだけでも無いように感じる。

まあ何にしてもそんな訳で、パーティーの隊列に少し変化があった。

先頭を歩くのは猫蓮と愛雪だ。

愛雪はようやく猫蓮のオーラにも慣れ、頑張って筆頭眷属を努めている。

その後ろを狛里と想香、そして真ん中が天冉と陽蝕だ。

積極的な陽蝕に、天冉もまんざらではない様子に見えるけれど、本心は流石に分からない。

その後ろを舞月と美花、最後方を俺と尾花が歩く形になっていた。

尤も町の中に入ると襲われる心配も減るので、その通りにはならないけれどね。

「十人大丈夫そうだ!」

「ようやく落ち着けるお!」

「とにかく‥‥美味しいもの‥‥」

「僕はとにかく沢山食べたいのです。すでにお腹が紙のように薄くなっています」

皆順番に店に入っていった。

しかし陽蝕がまさかのパシリ役とは。

世の中分からないものだ。

最年長だから仕切ろうとしているのかもしれないけれどね。

ちなみに俺の年齢は、この世界でも一応十八って事になっている。

陽蝕とは同い年だ。

「いらっしゃい!十人のパーティーとは凄いね。これくらいの人数は普通にあるものなの?」

店の店長らしき人がそう話しかけてきた。

背は低くて若そうには見えるけれど、おそらく三十代くらいの男だった。

「そうねぇ~。普通はもっと少ないかしらぁ~?」

「そうですね。普通は四人から五人じゃないかな?壁役とアタッカー、魔法使いとヒーラーってのがお決まりで、それプラス色々とできる人間がいると完璧かと」

なんだかこの集団のリーダーは、天冉と陽蝕って感じに変わったな。

「それでも五人くらいが普通かぁ。昔北都尚成が来た時は、子供の本人入れてたったの三人だったんだよ。それでも魔王を倒しちまうんだから、その時はそんなもんかと思っちまったもんだ」

えっ?北都尚成が来た?

「策也ちゃん‥‥」

「その話、僕はもっと聞きたいのです!北都尚成が来たってのは本当なのですか?」

狛里が俺の顔を伺い、想香が手を上げて俺の代わりに聞いてくれた。

「ああ。丁度その席に座ってたな。まだ小さいから食べづらそうだったけど、妙に大人っぽい子供だった印象が残っているよ」

店長らしき男は、俺が今座ろうとしている席を指さしていた。

俺はゆっくりと席についた。

この席で北都尚成が食事をした。

おそらく当時六歳で、俺がアルカディアに転生した当時と背丈は変わらないだろう。

あの頃の感覚を思い出すとこんな感じか。

目を閉じるとハッキリと想像できた。

なんだろう。

この店には見覚えがある気がする。

一瞬誰かの笑顔が見えた。

しかしそれはすぐに消え、眼の前には想香のとぼけた顔があるだけだった。

「一瞬寝ているのかと思いました。食べる前に寝ちゃ駄目ですよ」

「何か‥‥思い出せた?‥‥」

隣に座る狛里は少し心配そうだった。

「寝たりしねぇよ。まあ思い出す時がくれば思い出すだろ」

なんとなくだけれど、少しずつ前進している気はするんだよな。

そして改めてハッキリと確信できた。

俺は北都尚成としてこの世界に来た事がある。

何時来たのかは分からない。

でも二十一年前に俺はこの場所にいたんだ。

「北都尚成の事に興味があるのかい?だったら一つ面白い事を教えてやるよ」

「面白い事?」

「ああ。この町、割と森に近いのに魔物がほとんど近づいてこないんだけどさ。その理由が何やら北都尚成のおかげだって云うんだ。何でも森のボスと話をつけてきたからなんだと!尤もそれは単なる与太話と言われていたんだけど、北都尚成が魔王を倒した事でもしかしたら本当だったんじゃないかって話も出ている。まあ一部冒険者しか知らない噂話なんだけどな」

「そうなのか」

一部冒険者しか知らない単なる噂話。

この男は、ここで食事をする冒険者の話を聞いたに過ぎないのだろう。

でもその北都尚成がやったとされる行動は、日本からの転生者にはありがちな話でもある。

きっと本当だ。

ならばそのボスとやらに会いに行けば、何かが分かるかもしれない。

そんな訳で俺は、この日の夜皆が寝てからコッソリ会いに行く事にした。


そろそろみんな寝たかな。

俺は宿屋の部屋からコッソリ抜け出した。

「さて行くか」

「うん‥‥ボスって‥‥どんな魔物だろう‥‥」

「抜け駆けは許さないのです。それが僕のポリシーなのです」

「えっ?お前たち‥‥」

宿屋の屋根の上から飛び立とうとしたら、いつの間にか後ろに狛里と想香がいた。

俺が気づかないとは、こいつら成長したな。

まあ別にそこまで気配を窺っていたわけじゃないけどさ。

「ボスに‥‥会いたい‥‥」

「僕には冒険があっている気がするのです。やっぱりワクワクが必要なのではないでしょうか?」

「分かったよ。一緒に行くか」

天冉もそう簡単に殺られる奴じゃないって分かったし、尾花を残して行けば問題ないだろう。

それに法螺貝とも一応和解?した訳だし、暗殺者組織ワクチンも当分はやってこないはずだ。

「早く‥‥行く‥‥」

「策也さん遅いのです。ボスが待っているのです!」

全く、遊園地に行く時の子供かよ。

俺は二人のあとを追った。

町から森までは二キロも離れていない。

すぐに森へと入っていく。

そこからは注意してボス探しだ。

「ボスは何処にいるのでしょうか?」

「そりゃボスだから、こんな町に近い森にはいないだろ?」

「じゃあ‥‥山?‥‥」

「そうだな。きっと山だな」

俺も知らないんだけどさ。

「全然魔物がいませんね?」

「ボスが『この辺りには来るな』って言い聞かせているんだろうな」

「不思議‥‥全部狩られた‥‥可能性も‥‥」

「それはそれで凄いな」

狩られたとしても、この森なら別の魔物がすぐに住み着いてもおかしくはない。

やはりボスが言い聞かせているんだろうなぁ。

つかこんなペースで散策して見つかるのだろうか。

だいたいボスってのがどんな魔物かも分かっていない。

猿系の魔物を想像してしまうけれど、それだと弱そうだなぁ。

強い魔物と言えばやっぱり魔王か。

「なんとなく‥‥こっちにいる‥‥気がする‥‥」

「狛里店長偶然ですね。僕も今ビビッとそんな気がしました」

こいつらの勘は案外当たったりするんだよね。

「だったら行ってみるか」

でもなんとなく魔物がいそうな雰囲気じゃないんだよなぁ。

こっちの山は岩ばかりで木々が少ない。

魔物の餌になる動物も見当たらない。

それでも俺は二人の勘を信じて山へと入っていった。

進んでいくと、微妙な魔力を感じた。

なるほど、これに狛里と想香は反応したのかもしれない。

ただこれはおそらく意識阻害系の魔法。

それもアイテムによる永続魔法だろう。

俺の新能力『ドラゴンカウンター』でも『魔法』を無効化はできない。

ちなみにドラゴンカウンターは、『ドラゴンの英知』と『魔法無効化の腕輪』、それに『カウンターマジック』を合わせた魔法であり能力だ。

特別で強力な魔法や能力を打ち消すのと、受ける魔法効果を無効化できるのと、解析した魔法や能力を無効化するものとが合わさっている。

これでほぼすべての魔法や能力から逃れる事が可能となる。

異世界人を元の世界に戻すような、一部よく分からない魔法をどうにかする事はできないけれどね。

それにアイテムによる永続魔法は、無効化してもすぐに元に戻るから意味がない場合が多い。

今回もそんな感じだけれど、『自分に対しての効果』だけは無効化する事はできるようだ。

「これは意識阻害系の魔法だな。これで隠れ里的な場所を魔物が確保しているんだろう」

「入口は‥‥ないの?‥‥」

「神眼で解析しているけれど‥‥。普通に入れる入口は作られていないようだ」

というか凄くいやらしい魔法だな。

ある程度近くまではむしろ誘導してくれるけれど、それ以上は近づけないようにできている。

つまり狛里や想香がこちらに引き寄せられたのはその為か。

そしてその効果は人間に対してだけ‥‥。

「僕たちは入れないのでしょうか?それだとなんとなく悔しいです」

「入れるよ。とりあえずお前たち、お手!」

俺は二人に手のひらを見せて差し出した。

「どうした‥‥の?‥‥」

「いきなり手相を見てもらいたくなったのですか?ふむふむなるほど。策也さんは左右の手相が大きく違いますね。努力と自らの力で運命を切り開いてきたのでしょう」

そうじゃねぇよ!

つか占いは結構当たっているじゃないか。

だからそうじゃない。

二人とも俺の求めている事が理解できないようだな。

それにしてもなんだろうか。

ハッキリと言いづらいのだけれど?

少し照れくさいというか。

「手を繋ごうって言ってるんだよ」

「そういう‥‥事か‥‥迷子になったら‥‥困る‥‥」

「いきなり真夜中デートですか。仕方ないですね。少しだけなら付き合って上げます」

二人とも俺の手に手を乗せた。

ただどちらもその意味を理解してはいないようだった。

まあ良いけどさ。

「じゃあ魔物の隠れ里に入るぞ」

「入れる‥‥の?‥‥」

「デートコースに魔物見物とは、策也さんはちょっと頭がおかしいのです」

頭がおかしいのはお前だ!

と心の中でツッコミを入れつつ、俺は魔物の隠れ里的な場所と思われる中へと入っていった。

中に入ると、広大で美しい景色が広がっていた。

隠れ里にはアルカディアでも何度か入った事があるけれど、大抵驚かされる事になる。

ここも例外なく自然豊かな楽園といった感じだった。

「凄い‥‥綺麗‥‥」

「真っ暗なのに輝いている気がするのです」

二人は少し呆けていた。

さてしかし、部外者が入ってくればどうなるか。

警備の魔物がわんさか集まってきた。

「お前たち、魔物が集まってきた。だけどこちらから暴力は駄目だぞ!俺たちは話を聞きに来ただけだからな」

「分かってる‥‥でも‥‥攻撃してきたら‥‥ぶっ飛ばす‥‥」

「沢山集まってきます。僕は大丈夫ですが、策也さんは怖いと感じているのではないでしょうか?」

集まってきている魔物は、魔力の弱いモノから強いモノまで色々だ。

ただ強いのも多くて、想香が襲われたら自分だけじゃ対処はできない可能性がある。

そして更に強い魔力を持った魔物が、上空からやってきた。

こいつがボスなんだろうな。

「ドラゴンか‥‥。しかも固有種、或いは唯一種だな」

名前を持つユニーク種って事ね。

「大魔王に‥‥近い存在‥‥」

「大魔王ですか。思ったより大した事はないのです」

大した事はあるよ。

流石に想香の手からは緊張が伝わってくる。

手汗がひどいからな。

って、ずっと手を繋いだままかよ。

まあ安心してもらうにはいいよな。

俺はそのまま気づかないフリをした。

それにしてもドラゴンで大魔王並みの強さってのは、かなり飛び抜けた存在だ。

おそらく上級種って事になる。

ただ狛里が殺ったアスモデウスよりも魔力は小さいから、上級種の中では比較的下位の存在か。

当然あの千年竜よりも弱いだろう。

ドラゴンは俺たちの眼の前へと降り立った。

魔物たちは俺たちを取り囲むようにして更に集まってきた。

「人間が、どうしてここにいる?」

「ちょっと聞きたい事があってボスと呼ばれる者に会いにきた」

この場所に入れるのだから、こちらの力量は理解しているだろう。

暴走する魔物がいない限りは争いにはならないはずだ。

うちの狛里ちゃんは暴走しないよね?

「聞きたい事があるから会いにだと?ここには人が来ないという約束だったのだがな。尤も普通は入っては来られないはずなのだが」

そんな約束知らねぇよ。

「悪いが俺はその約束を知らない。もしかしたら北都尚成との約束だろうか?ならば申し訳ない」

さり気なく北都尚成の名前を出して様子を窺う俺。

賢いねぇ。

「その話を知っているのか。確かに北都尚成との約束だが。して、何が聞きたいのだ?」

特に話を上手く持って行く必要はなかったか。

このドラゴン、割と普通に話を聞いてくれそうだし。

「北都尚成の事だ。何時、この森のボスと言われる者と何があったのか」

「お前たちは冒険者じゃないのか?冒険者ギルドでその辺りの話はしてもらっているはずなのだがな」

えっ?そうなの?

じゃあわざわざ会いに来ただけ無駄だったとか?

「そうだったのか?悪いが聞いてないので教えてもらえると助かる」

意地でも来た事を無駄にはしない。

ギルドで聞けるならもう目的は達しているんじゃないかと思わなくもないけどな。

ボスドラゴンは少しダルそうに、だけど何処か嬉しそうに話しだした。

そんな訳でドラゴンから聞いた話。

まずこのドラゴンがボスで間違いなかった。

北都尚成のいたパーティー三人は、ギルドの依頼で森の魔物討伐に来たらしい。

しかしこの森は町が近い事もあり、人を食わなければならない尾花のような魔物が結構集まっていたそうだ。

この辺りはいくつか憶測にはなるけれど、仮に俺が北都尚成だったらという事で話す。

魔物の数が多く倒すのも面倒くさいし、倒してもどうせこの場所ならすぐに魔物が集まってくるだろう。

このままではクロチョウの町は常に魔物の脅威にさらされる事になる。

そこで北都尚成はボスに提案した。

『お前がこの辺りをまとめて人間を襲わないようにしてほしい』

そこでボスは決闘に勝ったらという条件をのんで尚成と戦った。

尚成には一瞬で負けたそうだ。

そこでボスは約束通りこの辺りをまとめる事になった。

人を食うような魔物は申し訳ないが排除してもらう。

その代わりこの隠れ里の楽園を尚成が造ってプレゼントしてくれたそうだ。

相手は人間で、しかもまだ六歳の子供だったのだから、その時の事は夢だったのではないかと今でも思うらしい。

「そうか。聞かせてくれてありがとう」

「いや、そちらに恐ろしい魔力を持った者もいるしな。話さない訳にもいかないだろう」

そういや狛里と想香がいたな。

すっかり忘れていたわ。

つか結局手を繋いだままかい。

でももう緊張は伝わってこなかった。

そんな訳で俺は無事北都尚成の情報を得た。

しかし全く何にも思い出す事はなかった。

ただやっぱり北都尚成は自分なんだと改めて思った。

明らかに自分ならやりそうだと感じたから。


そして次の日はギルドで森のボスについて聞いてみた。

するとボスから聞いたものとは少し違った話を聞くことができた。

森の魔物が町の近くに来て人々を襲ってこなくなったのは、パーティー名『ライガー(あんど)バニー』が、魔物を森の奥から山の方へ封印したかららしい。

ライガー&バニーは子連れの二人パーティー、つまり三人で、まだ低ランクの冒険者だったそうだ。

その子供が北都尚成だったのではないかという話はあるけれど、冒険者ギルドでは確認していないので分からないと云う。

尤も皆そうであったと内心では感じているようだ。

それで封印された森や山にはあまり入らないように伝えられているとか。

あの楽園に封印しているようなものだから、嘘とは言えないだろう。

薬草採取などで森に入る者はいるけれど、また魔物が出てきても困るので、魔力を感じるエリアには誰も近づかないようギルドでは言っているらしい。

北都村の友人と組んだパーティーは、ライガー&バニーって云うのか。

際どい名前だ。

際どいだけに俺が関わっていたのだと思える。

そして北都尚成が良い事をしていたのが嬉しかった。

魔物を殺さなかったのはどうしてだろうなぁ。

いや、殺していたかもしれないけれど、どうしてボスドラゴンに治めさせたんだろう。

魔物の数が多く倒すのが面倒くさい。

倒してもどうせこの森ならすぐに魔物が集まってくる。

クロチョウの町を魔物の脅威から開放したい。

理由は色々と考えられたけれど、何処か違う気もしていた。

だけどそれ以上考えても何も分からなかった。

「じゃあ次の町に向けて出発するわよぉ~」

狛里と想香は眠い目を擦りながら、ゆっくりと歩き出すのだった。

「策也ちゃん‥‥眠そうじゃない‥‥」

「チートですか?ズルいのです!」

そんな事言われてもねぇ。

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