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異世界のチートな萬屋店長~一寸神アナザーアフター~  作者: 秋華(秋山華道)
旅立ち編
15/64

料理の試食と王子との出会い

人は、一を知ると十を知りたくなるものだ。

中には一を知って全てを知った気になっている者もいるけれど、少なくとも俺の暮らしていた日本の人は探究心が強かった。

戦国時代には、入ってきた鉄砲をただ使うのではなく分解し研究して量産した。

幕末に黒船が来れば、実際に自分たちで作ってしまった。

そしてその後、大日本帝国海軍はロシアを艦隊戦で圧倒した。

今の日本もおそらくそうだろう。

海外から新しいものが入ってくれば、それを更に良い物に変えて行く。

できるかできないかはともかく、人間とはきっとそういうものなのだろうと思う。


今日ものんびりと俺たちは歩いた。

向かうのは湖の村だ。

そこは以前魔物肉の生姜焼きを振る舞いレシピを伝えた所。

まだ一ヶ月も経っていないが、なんだか遠い昔のように感じる。

「みんな生姜焼き作って食ってるかな?」

「アレは美味しい‥‥絶対食べてる‥‥」

狛里の所に生姜があったのは、姜好が持ち込んだからなんだよなぁ。

そう考えると、この辺りは感謝するべきなのかもしれない。

しかし召喚の魔法を悪意を持って狛里に教えたのだとしたら、或いは中央村の連中に盗賊紛いの事をさせていたのだとしたら、それは正直許せない気持ちになる。

仮にそうだったとして、姜好は一体何故そんな事をしたのだろうか。

冒険者だとしたら、そういう風にするように依頼されたのだろうか。

何にしても本人を見つけて聞くしかないな。

そんな事を考えながら歩いていると、昼過ぎには村へと到着した。

村は前に来た時と同じはずなのだが、少し雰囲気が違っていた。

「なんだか祭りをしているみたいなんだお?」

なるほど祭りか。

いきなり村の雰囲気が変わる訳ないよな。

「何か食べているみたいです。良い匂いがしてきました!」

「確かにな。でもあまり嗅いだことのない匂いだ」

「これは絶対‥‥美味しいヤツだ‥‥」

狛里は少しヨダレをたらしていた。

全く‥‥子供じゃないんだから。

俺は狛里の手をとって、袖の所でヨダレを拭いてやった。

袖は無いけどな。

とは言え狛里の言う通り確かにこれは美味しいに違いない。

でもどういう事だろう。

前に来た時にはこんな匂いは全く無かったぞ。

「あれ?策也さんじゃないですか!」

「本当だ。どうしたんですか?」

話しかけてきたのは、俺が生姜焼きを振る舞った村人たちだ。

「いや、これから旅にでるんだけどさ、その途中に寄らせてもらったんだ。今日は祭りなのか?」

俺は感じたまま尋ねてみた。

「祭り‥‥ではありません。前に策也さんに教えてもらったレシピを元に、みんな色々な食べ方を開拓していったんですよ」

「その発表会をしようって話になりまして。こうしてみんなの料理を食べ比べているんです」

「もし良かったら、是非策也さんたちも食べていってください!」

あのレシピから新たな料理の開発かぁ。

「それはいいな。迷惑でなければ食させてもらうよ」

「どうぞどうぞ」

出店が立ち並ぶ感じで、各所で試食できるようになっているようだった。

様子を見ている間にも、既に天冉と狛里は食い始めていた。

「これ何かしらぁ~?」

「それは狼魔獣の肉をミンチにして‥‥」

出店ごとにレシピも説明してくれるのか。

自分が考えたものをみんなで共有する。

そういうのって良いよな。

転生前の世界じゃ著作権とか色々あって、それはそれで考えた人の権利を守る為に必要なのかもしれない。

でも本当はみんなで共有した方が幸せだ。

それで利益を得ない限りは自由って考えはあったんだけどな。

パソコンのフリーソフトなんて正にそれ。

俺が転生した頃もまだ残ってはいたけれど、今もまだあるのだろうかねぇ。

俺は少しだけ日本の事を思い出した。

さてしかし、今回のこれらのレシピには価値があるだろう。

みんなの反応は上々だし、村人男Aのような奴はこれらを他の地域で売る可能性がある。

それが世界中に広がるというのならそれも良いが、権利を主張しないとも限らない。

だったらこの財産を活用させてやりたいよなぁ。

とは言え俺が出過ぎた事はできないよ。

なんせ異世界の神だからな。

此処は猫蓮を上手く誘導して、こいつにやってもらうしかないか。

猫蓮はオタク転生者だから、当然転生後の定石を知っているはずだ。

転生前の知識を生かして商売とか、単純に商人をするのはよくある話で。

「猫蓮、どれも美味かったよなぁ。こんなに美味けりゃ店を出しても行けそうじゃね?」

「確かに美味しかったお。こんな料理を出してくれる店があったら食べに行くお」

「だよなぁ。でもこれはこの村の家庭料理になるんだろうか。他では食えないのは残念だ」

「確かに残念なんだお。でもそれが家庭の味だお」

これはどう考えても家庭の味じゃないだろ。

こんなに工夫した料理は、毎日は作れないぞ?

「家庭の味ってよりは、高級料理屋じゃないかな?」

「そうでもないお。オデのいた世界じゃこんな料理でも簡単に作れるようになってたお」

そりゃ日本には『なんちゃらの素』とか『冷凍食品』とか色々あったからな。

「そ、そうなんだ。それは凄いな。でもこの世界じゃ無理だよなぁ」

「確かにそうだお。だったらもっと簡単に作れる料理を開発してもらうんだお」

ちーがーうーだーろー!

簡単に作ったら魔獣肉なんて不味いんだよ。

前に自分でちょっと試してみたけど、マジで食えたもんじゃなかったわ。

魔獣肉はしっかりと手を加えなきゃ駄目。

そのレシピをこのまま埋もれさせたり、誰か関係の無い奴の利益にしたくないんだよ。

「いや俺は今ここにある料理が、何処でも食べられたらいいなって思ったんだよ」

「だったら作ってもらった料理を冷凍魔法で保存するか、異次元収納にしまっておくんだお」

こいつわざとはぐらかしているんじゃないだろうな。

『違うのね。こいつアホなのね』

『単純に出店とかの発想がないだけなのです』

まあ少女隊の言う通りなんだよなぁ。

猫蓮にやらせようとしたのが間違いだったか。

「こんなに魔獣肉が美味しく食べられるのなら、店を出したらどうかしらぁ~?」

おっ!思わぬ所から援護射撃が来たぞ。

「アレ?あんた‥‥もしかして新巻鮭の姫さんじゃねぇのか?」

あっ、村人が今頃気が付いたぞ。

そりゃそうか。

旅に行くって事で、服装は動きやすい女冒険者の恰好だもんな。

それに姫さんを拝める時なんてそうそうないだろうし、普通気づけなくて当然か。

ちなみに猫蓮も旅に出てからは、学ランのような軍隊服のような格好に戻している。

和服よりもそっちのが動きやすいもんな。

それにもう想香とは上手く行く欠片もないし。

でも最初に見たのとは少し違っていて、今のは長ランって感じだ。

猫蓮の中身じゃなければ割と格好いいよね。

「そうよぉ~!それでぇ私が出資するから、国内の全ての町で魔物肉料理店出してみない?」

ナイスだ天冉。

転生者の猫蓮よりもよっぽど使えるじゃねぇか。

「本当ですか!それが出来れば、余っている魔物肉の使い道ができます!」

「なら王都からその辺りの話が出来る人を数人呼ぶわね。その人達と相談して、是非儲けてくださいなぁ」

「ありがとうございます!」

話が早いな。

せっかくこの役を猫蓮にさせてやろうと思ったのに、こいつは何の為に異世界転生してきたのだろう。

まさかハーレムを作るとか、モテモテ冒険の旅を期待していたんじゃないだろうな。

いや、俺も他人(ひと)の事は言えないんだけどさ。

最初はハーレムを作ろうと思っていた訳だし。

黒歴史はとっとと忘れたいぜ。

『菜乃たちは忘れさせないのです』

『そうなのね。妃子たちが覚えていたら策也タマも忘れられないのね』

時々こうやって少女隊はテレパシーツッコミをしてくるんだけど、かまってほしいという気持ちも伝わってくるので割と嫌ではない。

『お前ら後で卍固めの刑な』

『できるものならやってみるのです』

『そうそういつもやられないのね』

全く、ドエム少女隊だな。

少女隊がドエムなのはまあ良いとして、記憶を消すとなるとそれも嫌だったりするんだよね。

失敗もあったからこそ、今の俺がある訳だからさ。

「策也ちゃん‥‥もしかして‥‥猫蓮ちゃんに‥‥やらせようとしてた?」

「まあな。でも天冉がやるならそっちの方がいいだろう」

よく考えたら猫蓮はまだ金を持ってないし、冒険者をやめて商人っていうのも困るからな。

俺の目的は猫蓮を鍛える事だから。

「儲け話を一つ逃してしまったのです。僕が出資していれば左うちわだったのです」

「確かにそうなんだお。オデが出資者になりたかったんだお」

想香はともかく、お前には良いパスを何度も出してやっただろ!

こいつは転生前何をしていたんだ。

こりゃ領主もあまり上手くはやれてなかったんだろうな。

それで婆さんにこっぴどくやられていたに違いない。

マジでただの厨二病(ちゅうにびょう)オタクだったか。

天冉は村人との話で盛り上がっていた。

まあこれはこれで良かったな。

王家と領民の信頼関係が深くなるよ。

十五分ほど天冉と村人の会話を聞きながら、俺たちは適当な所で座って休憩をした。

僅かな時間だったが、俺たちは日向ぼっこを楽しんだ。

天冉と村人の話が終わると、俺たちはすぐに村を出た。

今日中には王都イワオコシに着きたいからね。

尤も、遅くなっても普通に走れば十五分くらいで到着するんだけどさ。

でもこの冒険の旅の目的には『楽しむ』って所もあるから、出来る限りのんびりと歩いてゆくのだ。

そんな訳で結局王都イワオコシに到着した時には、太陽は少し傾き始めていた。

天冉は一応王様たちに挨拶してくるらしい。

一旦別行動をして、明日の朝に北西側の防壁門の所で待ち合わせる事となった。

俺は狛里たちとも別行動をとって、少女隊たちと町をブラブラと歩いた。

「策也タマ、何処に行くのです?」

「明日の待ち合わせ場所を確認しておこうと思ってな」

異世界での俺はかなりチートだ。

だから別に待ち合わせ場所を確認なんてしなくても、まず問題なんて起こり得ない。

だけど転生前の癖というか、前もって待ち合わせ場所を確認しておかないと落ち着かないんだよ。

「ところで卍固めはまだなのね?」

そんなワクワクしたような顔するなよ。

こいつら本当にプロレス好きだよな。

でも十分に自重しないと、俺たちが本気でやったら辺り一帯が荒野と化す。

町中でマジでやったら町が崩壊しかねない。

尤も、手を抜いてやるのも慣れたもんだけどさ。

偶にヒートアップした時が恐ろしいだけで。

「やるなら町の外に出てからな。今丁度門へ向かっている訳だし、外に出てからがゴングでいいだろう」

「分かったのね。卍固めが楽しみなのね」

最初から技をかけられるのが楽しみとか、やっぱりドエムだよこいつ。

「とうとう卍固め返しをやる時が来たのです」

ほう、そんなのがあるから楽しみにしているのか。

でも喋っちゃっていいのか?

「菜乃、それは内緒なのね」

ほらやっぱり喋っちゃダメじゃん。

「大丈夫なのです。あの返しは策也タマには止められないのです」

そんなに凄い返しなのか。

こりゃ楽しみだ。

という訳で、気が付いたら門の所まで来ていた。

そこには何やら人が集まっていた。

とりあえず門の外へと出ようとすると、門番に止められた。

「今は危険だ。魔物がこちらに向かってきている。冒険者以外を町から出す事はできない」

魔物がねぇ。

一応冒険者だし、冒険者カードを見せれば出られるだろう。

だけど出れば魔物退治に参加させられかねないよなぁ。

俺はそのまま引き返そうとした。

しかしそれを少女隊は許してくれなかった。

「控えおろう!この冒険者カードが目に入らぬか!なのね」

「菜乃たちは冒険者なのです!」

この二人、町から出る気満々かよ。

プロレスがしたいのか、それとも魔物退治がしたいのか。

或いは両方なんだろうなぁ。

ちなみに冒険者カードは、アダマンタイトで作られた割としっかりとしたものだ。

レベルが上がると、魔法でその部分だけが書き換えられる仕様となっている。

「今日は狼魔獣に加えて赤目も交じってるって話だ。ランク十程度の冒険者じゃかなり危険だぞ?」

普通に考えればそういう見方にもなるのだろう。

でも俺たち普通じゃないんだ。

「大丈夫なのね。魔物は誰かに倒してもらうのね」

「菜乃たちは外で遊びたいだけなのです」

ずこっとなー!

おいおい魔物を倒したいんじゃないのかよ。

それにそんな事を言ったら出してもらえないだろうが。

「そうか。ならば通っていいぞ」

ええんかーい!

「親切な門番さんありがとうなのです」

「この恩は三十秒は忘れないのね」

やれやれ、でも町の外に出たら魔物と戦う事になるんだろうなぁ。

俺たちは門を通って外に出ようとした。

すると門番が後ろから声をかけてきた。

「ちょっと待て!本当に行くつもりなのか?」

やっぱり通って良いって言ったのは冗談だったのかな。

「ん?あなたは誰なのね?」

「知らない人なのです」

三十秒どころか十秒も覚えてませんでした。

門番はショックだったのか、もう何も言わなかった。

門の外には大勢の冒険者が集まっていた。

ウイロウの町で魔物の軍勢を迎え撃った時に少し似ているが、此処には王族に仕える騎士の姿も多く見受けられた。

その中に一際大きな魔力を持った者がいた。

見るとどうやら王族か貴族といった感じだ。

身形(みなり)からおそらくは王子か。

どうも異世界ってのは分かりやすくできているようだな。

それとも、どの世界も同じって事なのかもしれない。

王子って事は天冉の兄弟か。

何にしても身内だろう。

でもこれだけ強い奴がいるなら、天冉は何故狛里のいるナマヤツハシの町に逃げてきたのか。

或いはどうして鬼海星の言いなりになるような事になっていたのだろうか。

耳をすませて王子たちの会話を聞く所によれば、どうやら冒険者としての旅から帰ってきた所のようだった。

そう言えば王族貴族は、冒険者レベルが五十必要だったな。

その為に冒険に出ていたのだろう。

戻ってきたのは、天冉が狛里を連れて旅に出て行くからのようだった。

尤も、王族に必要な冒険者レベルランク五十は既にクリアしているものと思われる。

普通に見れば圧倒的に強そうだからな。

「策也タマ、早く卍固めをお願いするのね」

「そうなのです。その為に来たのです」

「いやお前ら、魔物退治はいいのか?」

なんだかんだそっちも結構やりたいと思っていたのだけれどな。

「この世界の魔物には魔石が無いのです」

「それに魂もないのね。倒してもつまらないのね」

素材や肉もあるから何も集められない訳じゃないけれど、こいつらは基本コレクターな所があるからなぁ。

魔石も魂もないと、魔物退治の魅力も半減するか。

「じゃああっちの人気のない所でやるか」

「早くするのね」

「ワクワクしてきたのです」

俺たちは防壁沿いに北側へと歩いて行った。

周りに誰もいなくなった所で、俺たちはプロレスを始める事にした。

「じゃあいくぞ!俺の卍固め、返せるものなら返してみやがれ!」

俺は二人に襲い掛かった。

アッサリと菜乃に卍固めをきめる事ができた。

「どうした?返してみろよ!」

「キャー!襲われるのねー!」

「変態なのですー!強姦なのですー!」

「おいちょっと待て!こんな所でそんな事言ったら人が集まってくるだろうが!」

俺は知らないフリをするために技を解いた。

すると妃子がいきなり俺に卍固めをかけてきた。

「かかったのね!必殺卍固め返しなのね!」

「おい今のは反則だろ!しかも二人で」

「いつも二対一なのです。これが少女隊の返し技なのです」

クッソまさかこんな卑怯な手を使ってくるとは。

いや、卑怯な手は想像通りじゃないか。

でもこいつら見た目は可愛い少女だから、この返しは有効だ。

俺がこいつらに何かしている所を見られたら、百パーセント俺が悪者と判断されるだろう。

こういう時世間は必ず女の味方になるのだ。

男は辛いよ。

だけどな、いつも二対一じゃないんだよ!

「行け!妖凛!」

「タマー!」

妖凛が菜乃をジャーマンスープレックスで地面に沈める。

「うげげっ!」

そして更に妃子をヘッドロックで俺から引きはがした。

「ぐるちぃ~‥‥」

「まさか妖凛にやられるとは思わなかったのです‥‥」

「妃子たちよりも少女がいたのね‥‥」

女の武器は強力だが、それプラス子供の武器も持っているのが妖凛なのだ。

常に妖凛が俺の味方である以上、俺に女の武器は通用しないのだよ。

こうして今日も、俺たちは勝利した。

「さてじゃあ戻るか。そろそろ戦闘が始まっている頃だろう」

「仕方ないのね。魔物狩りで憂さ晴らしなのね」

「可哀想だけど菜乃たちは止まらないのです」

「お前ら、あまり本気だすなよ。目立つと俺たちの活動にはマイナスだからな」

俺は新たな神の誕生を助ける神だ。

あまり強いのがバレると、この世界の神に警戒されかねない。

そうなると仕事が困難になるのだ。

「分かっているのね」

「指先一つでダウンさせるのです」

そういうのも逆に目立つんだけどな。

俺はゆっくりと少女隊の後をついて門の所へと戻った。

そこでは魔物の群れと冒険者たちの戦いが繰り広げられていた。

こういう乱戦だと怪我人どころか死人も多くでそうだな。

教会の人間や回復魔法が使える冒険者、或いは国家の救護班が必至に負傷者を助けていた。

この世界、やっぱり全体的にレベルが低い。

国家の維持も大変だし、冒険者稼業もマジで命がけだな。

だからこそ、助けてやりたくても助けられない。

目立つ度合いが大きすぎる。

なんて思っていても、少女隊はやはり助けてしまうのか。

優しい奴らめ。

「冒険者を攻撃の弾にして投げるのね!」

「それなら菜乃たちが倒した事にはならないのです」

またとんでもなく優しくない戦いをしているな。

黒子のように冒険者を動かし魔物を倒しているぞ。

あいつらの動きを目で捉えられる奴なんてそうそういないから、結果だけ見たら冒険者が倒したようには見える。

でも分かる奴がいたら、こいつらの強さが百パーバレるんだけど。

俺と妖凛は念力で冒険者を操って魔物を倒させていった。

ちなみに少女隊も念力は使えるよ。

でも自分たちで動く方が楽しいんだろうね。

俺たちが参戦?した途端に、魔物退治は一気に片付いていった。

赤目も交じっていたとはいえ、狼魔獣程度が相手なら瞬殺だよな。

この世界の普通の人間にとってはこれでも大変なんだろうけどさ。

「さて、そろそろどこかゆっくりできる所に行くか」

「素材や肉は回収しないのね?」

「別に必要ないだろ。この程度の魔獣は腐るほど確保してある」

「だったら早く美味しいものを食べにいくのです」

「まずは飯か」

そんな訳で俺たちは、町へ戻ろうとした。

すると目の前に一人の男が立ちふさがった。

王子様だった。

もしかしてこいつ、さっきの見えていたのだろうか。

天冉の身内だろうし、あまり関わりたくないんだけど。

さてどうしたものか。

俺たちはしばらくの間、無言で向かい合うのだった。

2024年10月14日 言葉を一部修正

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