(7)
「行こう。多分、間違ってない。見たんだろ?」
ジェドの信じて疑わない眼差しが、フィオを捉える。
彼女は魔女の下部と戦った後、シェナとビクターの場所の特定ができたのだから。
「でも森……大丈夫なの?
あたしもう嫌よ引っ掻かれるの!」
ビクターは一点を見つめて考えた。
ここまで来るのに、何度命を落としかけた事か。
これから向かう先でも間違いなく、危険は起きるだろう。
滝壺や森でのような騒ぎは、できるだけ避けたい。
「霧の向こうって事は、水の向こうか?」
ビクターの問いに、フィオは定かでないと肩を竦める。
「泳ぐか……」
「流れが強くなるかもしれないのに!?
できっこないわそんなの!」
それもそうだろうと、ビクターはシェナの肩に手を置き、再び悩んだ。
そこへ、ジェドが真上に佇む竜の顔を仰ぐ。
「おい!」
じっと俯くだけの竜は、彼の声にハッキリと反応して目を向けた。
「女王の為だぞ。いいのか、そんなんで」
すると、竜の顔が勢いよく四人の目の前に下り、片目から煌々と青い光を放った。
急に浴びせてくる光は熱く、眩し過ぎて目が開けられない。
「止めろ! 眩しいだろうが!」
ジェドが怒鳴ると光は消え、竜は地面を踏ん張って体を起こす。
尻尾の方で砂煙が立つと、その先端が四人の前まで回り込み、止まった。
「え……乗るの?」
シェナが不安の目を向けると、低い唸り声がした。
岩肌に埋もれる赤い目が、尻尾の先端を示したように感じる。
「……ちゃんと連れてけよ!」
確信を得たジェドは最後に笑って見せると、真っ先に助走をつけて鬣を掴み、木登りの如く攀じ登った。
「ひっ!?」
シェナが立ち竦んだ途端、竜の髭が素早く彼女に巻き付く。
「おい、食うなよ!?」
ジェドの叫びに合わせて、按じたビクターが髭を掴もうとした。
しかしシェナは、先に頭上に登り着いたジェドの目の前にふわりと下ろされる。
フィオは見ていて胸が弾み、目の前の尻尾から上手く伝いながら登った。
ビクターはその姿を見届けると、竜の顔をもう一度窺う。
青く光る目は、睨み合ったリヴィアと重なった。
警戒の奥に潜む、灯のような心と美。
失うなど、決して許さない。
「……頼んだぜ相棒」
彼は竜の腹に拳を当てて笑いかけると、ジェドと同じように助走をつけて登った。
「落ちない…?」
シェナがどこを掴もうかと目を泳がせていたところ、追いついたビクターに角を指差され、全身でしがみつく。
四人が頭上に集まった事を感じた竜は、身を揺らしながら森に方向転換し始めた。
皆は掴みが甘かった影響で大きくバランスを崩し、咄嗟に傍の鬣に腹這いにしがみつく。
「ちょっと待て!」
未だこちらの体勢が整いきれていないと、ジェドが頭頂部から竜の目を見下ろすが――
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




