(4)
シェナとフィオは、二人の光景を見ながら寄り合う。
ジェドの背中が、僅かに震えていた。
彼らの小さ過ぎるやり取りは、こちらには聞こえない。
フィオはジェドの背中に、いつか思い切って彼に詰め寄った日の事を重ねた。
不愛想で、全く相手にしてくれなかった。
いつも何かに苛立っているかと思えば、寂しそうな表情を浮かべるなど極端だった。
そんな何も楽しそうでなかった彼に、大丈夫と言ってしつこく接近した。
大人ばかりの島で、一番近くにいた同じ子ども。
気難しい性格で、散々煙たがられ、怒鳴られもした。
しかし気付けば、互いに追いかけ合って、笑っていた。
そして、怖くて近寄り難かったビクターを仲間にする計画を共に立てて実行した、最初の友達。
「もう吐きそうだっ……」
ジェドは言いながら、地面に崩れ落ちるようにしゃがむ。
顔は未だ伏せたまま、精神的苦痛に溺れていく。
「持つかよっ……フィオもっ……
お前もシェナもっ……俺だって今っ……」
ビクターの、彼を引き寄せていた腕が自然に緩むと、その肩の上で額に手を当てた。
何かを言えと己を鞭打っても、焦りと困惑に邪魔される。
そもそも何かを言う前に、零れそうになるものを堪えるのがやっとだ。
こっちこそもう、ずっと悔しく胸が痛いままだ。
けれども勝手に、自分が一番しっかりリードしてやりたくて、無事に連れて帰ってやりたくて堪らない衝動に駆られている。
その一心で平常心を保とうと、今も尚努力している。
良い判断をしていたんじゃないか。
そんな風に言ってもらえた事なんてなかった。
出会って間もないグリフィンがくれた言葉を真っ直ぐ受け止め、信じてここにいる。
いつもならば叱られてばかりで、共にいる三人にすら、一時は尖った態度を取っていた。
過去では、誰かに気を配るよりも、島や生活を立て直すために協力するよりも、気ままに好き勝手して過ごす自分に精一杯だった。
両親はおらず、どこの誰かも分からない大勢の者と島で生きていても、どこか孤独を感じてきた。
それでも、仲間はそんな自分を認めてくれていた。
島の家族との間に何となくあった距離は、いつの間にかここにいる皆が縮めてくれていた。
フィオとシェナが寄り添う隣で、疲れ果てた竜が顔を地面につけると、そのまま体も下ろしてしまう。
髪や服が、弱い息に靡いた。
光を失った群青色の目には、苦しみが滲んでいる。
「大変! シェナ来て! 水運んで!」
フィオは急いで、湖の水を掬って運びぼうと駆けた。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




