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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第二話 唸声
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(4)




挿絵(By みてみん)




 フィオは潜水に必要な道具の支度をしていた。

鉄の残骸、建物の骨組みなどのガラクタを再利用して手掛けたゴーグルや槍、銛は、島暮らしの必需品だ。

素潜りを徹底するが、長い潜水では酸素シリンダーも使う。

奇跡的に残っていたそれは短時間用のものがほとんどで、数少ない消耗品だ。

ジェットスキーに使用する燃料を、実際にこの島でも作っていた形跡もあった。

その為の化学薬品も残っていたとはいえ、今はまだ、それらを量産するところに至っていない。

大人達からは散々、機具の酷使を控えるよう言われているのだが




「おじさんごめん」




そう呟いて装備を整えると、家を出た。






 漁船が桟橋に着くと、碇が下りる重い音が胸にまで響いた。

雨は弱まり、あんなに冷たかった風も幾分か温かい。

人々は奇妙な変化に不思議に思うばかりだった。

そこに紛れて聞こえたのはまたしても、あの唸り声だった。




「!?」






 誰しもが驚く中、フィオは家で聞きつけた時よりも大きなそれに、持っていた装備品を落としてしまう。

鼓動はなかなか落ち着かない。

その傍ら、不気味で怖いながらもその謎を突き止めたい気持ちが高まる。

彼女は遠くからの人々の騒ぎ声を背に、落とした物を急いで拾うと、ジェットスキーを停めている桟橋へ駆けた。




 林を抜けた先に伸びるそこには、四台のジェットスキーが波に大きく揺れながら縁を擦っている。

海に出るばかりで倉庫に入れず、雨ざらしだ。

故障したと分かれば、大人達は何て言うだろう。

少々気にはなってもやはり、唸り声の好奇心に勝る事はなかった。




 桟橋の手前まで来ると、荷物を置いて武器の確認をする。

西の海の深海魚から身を守るため、ナイフと槍は必要不可欠。

手製の槍には工夫が施され、伸縮性のある優れもの。

ナイフを出すと、そこに映る自分の顔が、寒さのせいでか青白かった。






 漁船からは魚が多く下ろされている。

途中で切り上げたとはいえ、十分な収穫だ。

波打ち際に集まる人々は、唸り声の話で持ちきりになっている。

怯える子ども達はすっかり、自宅から出ようとしないそうだ。

そんな、不安と心配の声が飛び交う中




「まぁまぁ、言ってもすぐまた天気は戻るさ」




お気楽なレックスが下船し、何ともないだろうと更に加える。




「サッパリしてやがる」




カイルが持っていた縄をレックスに託した。




「こんな世の中だ。ポジティブでなきゃな」




船内をブラシで擦る音が聞こえるのを横に、レックスはカイルから受け取った太い縄を肩に担ぐと、次の作業に向かった。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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― 新着の感想 ―
[良い点] 景色、情景描写が分かりやすい。 ワクワクしてきたー! まさかの島が…おっと…。 景色が何しろ広く壮大に感じるのが、読んでいるのに開放感もあって良いですね。 この冒険心は輝いて見える。 [気…
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