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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第七話 悲痛 
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(14)




 魔女はどうにか浮力を保ちながら、シェナの噛み付くような声に耳を塞ぐ。

そして、赤い眼光を鋭利に放ちながら、焦燥混じりに彼女を睨みつけた。

未だ頭部を掴まれたままのフィオは痛みに暴れていると、魔女は彼女を再び湖に激しく叩きつけてはシェナを掴もうとする。

しかし、すばしっこいシェナはすぐさま潜り、その手を躱してみせた。




「このクソ餓鬼!」




取り乱す魔女の隙を捉えたビクターは、銃口でその顔を狙うが――




「愚かなっ」




魔女は彼を花で笑い飛ばしながら、彼に、流血する右手で小さく何かを放り投げる動作を見せた。

その横からシェナが勢いよく飛び出し、自分を掴もうとしていた魔女の手に飛び付くと、噛みつく。




「っ! おのれ忌々しいっ!」




シェナは呆気なく振り解かれ、湖に叩きつけられると、透かさず首から引き上げられる。






 ビクターは照準器を下ろし、見せられた動作が気がかりで辺りを忙しなく見渡した。

何も起こらない奇妙な状況に、不安が込み上げる。




「よそ見すんな!」




背中合わせになっていたジェドの怒号を耳にしても、ビクターは返事をせず辺りに集中する。

その様子を捉えたジェドは彼の肩を掴み、大きく揺さぶった時――見えた。




 ビクターは咄嗟にジェドの両肩を掴むと、共に激しく横転する。

陽炎が、彼らの顔を危うく擦り抜けかけた。




「立て!」




ビクターはジェドを掴む。

漁船での事が一気に蘇っていた。

何が何でも、それに接触する訳にはいかない。




「走れ! 絶対止まるな! ついて来い!」




攻撃手段が分からず、ただ逃げるしかない。

一方、ジェドは何も捉えられないが、漁船での彼を思い出し、信じて従い続けた。






 魔女は、陽炎から躍起になって逃げ回る二人を高笑いする。

その傍ら、フィオが水中から激しく飛び出し、遠くの彼らに目を剥いた。




「何したの!?」




フィオが魔女を睨みながらナイフを構えた矢先、真上から強い衝撃を受け、痺れが足先まで迸ると視界が閉ざされる。

魔女は杖で彼女の頭を殴打し、沈めた。




「フィオっ!」




首を掴まれたままのシェナが声を絞り出すと、森に渦巻く異臭と血の臭いが入り混じる生温い風が、魔女を再び煽った。




「……っ! おのれその声ぇっ!」




魔女はシェナを掴む手に力を込め、そこから漏れる苦痛の声を殺しにかかる。






 ビクターは、一瞬の風に舞う砂煙に視界を遮られ、足が遅れた。

それでもジェドに背中を向け、盾になる。




「何やってんだ逃げるぞ!」



「伏せろ!」




陽炎を捉えられるのは自分のみ。

再び生じた時は、決めていた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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