(13)
ビクターはすぐさまジェドを下ろし、意識を確認する。
「ジェド!? てめぇ何すんだ!」
彼の威嚇もなんのその。魔女はライフルなど見向きもせず、フィオを穴が開くほど見つめている。
顎に食い込む爪の痛みに、フィオは悲鳴を漏らした。
「……大して使えない目だね」
フィオは何の話だと言いた気に、魔女の手に爪を立てて引っ掻き、藻掻く。
しかし、鱗が剥がれ落ちるばかりで、魔女の手が緩む様子はない。
ならばと、その腕に両手で掴みかかり、まるで木にぶら下がるように両足を上げると、魔女の腹を蹴ろうとした。
見兼ねた魔女はふと上昇し、そのままフィオを湖に叩きつける。
「フィオ!」
叫ぶビクターに魔女が向き直ると、呆れた溜め息を吐いた。
そして
「おいそこの獣……」
蛇のような目がジェドに向く。
腹を抑えながら身を起こす彼の姿をせせら笑いながら、続けた。
「見せてみろ……」
ジェドはよく分からない発言に困惑しながら、激痛で視界が狭まる中で魔女を睨む。
すると、森から獣の叫声が響き渡った。
ビクターとジェドは咄嗟にそこを振り返ると、ジェドが槍を投擲して仕留めた同じ獣が四頭も現れた。
それらは鋭い赤の眼光を放ち、太い牙を威嚇しながら剥き出す。
先端からは、青い血が滴っていた。
狂気に満ちたそれらは、ジェドとビクターに隙を与えんと攻め寄り始めた。
ジェドが槍を支えに立ち上がるところ、ビクターが背中を掴んで補助する。
魔女は、その光景を実に愉しそうに眺めた。
その時、視界が大きく揺れると体が傾く。
何事かと目を見開くと、沈んでいたフィオがローブの裾に飛び付いていた。
「こっち向きなさい!」
魔女は、これからという瞬間を見逃し、舌打ちする。
そして再びフィオに掴みかかろうとするが、彼女は透かさずナイフでその手を切りつけた。
魔女は短く悲鳴を上げ、右腕に負った切り傷から、あの下部達と同じ黒い血を流す。
「この魚眼がっ!」
怒りに任せ、フィオの髪を掴んで持ち上げた途端、魔女は背後に大きく傾いた。
「この化け物! 放しなぁ!」
傷が癒えたシェナが意識を取り戻し、魔女のローブを引っ張ると、更にその背中に乗り上げようとする。
そこへ、彼女の声に乗せられるように大風が吹きつけ、魔女を煽った。
ジェドとビクターが攻撃体勢に入る直後、突風が吹き荒れる。
獣達が森の入口まで飛ばされて横転し、激しい砂煙が上がった。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




