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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第七話 悲痛 
79/133

(6) 




※次話より リヴィアの回想に入る為

 救出シーンをここで区切ります

 約1330字でお送りします







 ジェドが手前の木を掴み、軽々よじ登るとナイフを再び握る。

最悪な事に、リヴィアの傍に進めば進むほど荊が太くなり、彼女を締め付けているようだ。

ジェドは歯を鳴らし、怒りにナイフの手が震える。




「切れるか!?」



「切るっ!」




必ず救ってみせる。

ナイフを扱う手は、勝手に速まっていた。

こんなに騒ぎ立てているというのに、リヴィアは微動だにしなければ声もない。

別れる際、やはり無理にでも一緒にいてやるべきだった。




 ナイフをどんなに振り下ろしても浅くしか刺さらない。

手が痙攣している上、目前の変わり果てた彼女に恐怖している。




去り際の、寂しくありながらも微笑む姿が焼き付いている。

綺麗だと見惚れたために記憶しているのではない。

力が無いくせに、笑ったのだ。

グリフィンよりも、確実に小さくて弱い自分達に。

何ができるかも提示できないような自分達に。

島で大人が無理に笑ったり、体を張って守ってくれたように、彼女もまた、自分達に少しばかり心を開いてそうしてくれたのだ。

彼女がくれた些細な微笑みは、見かけだけの美しさではない。

彼女はまだ、本当の意味で呪われてなどいない。

空島の者として、また一種の守る者として、揺れる心の灯の美を保ち続けている。






 ナイフでは間に合わないと見たジェドは、槍を引き抜いた。

最短の長さにしたまま、荊を潰すように突き刺し続ける。




 削られた粉が降り注ぐ中、ビクターも木に登り始めた。

フィオが足を持ち上げた勢いで、素早くジェドに追いつくと、幹を伝ってリヴィアの背後に着いた。

荊は彼女の胴体を一周し、更に上の枝に絡んでいる。

目を凝らすと、真上に伸びていくにつれて細くなっていた。

ビクターはそこを重点的に切り始める。






 フィオが両手を握りしめながら見上げていると、シェナの苦しむ声が聞こえた。

振り返ると、彼女の胸から腹にかけて負った傷は黒ずみ、皮膚は紫がかっている。

フィオはその異変を見るなり、彼女を素早く負ぶった。




「先に行くわ!」




頭上の二人に告げ、足元の斧を跳び越えては森の出口まで全力で駆けた。






 「しっかりしろリヴィア!

呪いなんかに負けんな!」




ジェドは、未だ身動きしない彼女に必死で叫ぶ。

彼女の目からは、あの特有の青い光が失われていた。

ジェドから見た彼女の半顔は、岩肌に覆われている。

そこに埋まったような目から放たれていた真っ赤な光すら、ない。




「おい!」




ジェドは怒鳴りながら、骨ばった体を激しく揺さぶる。

すると、左腕がするりと抜けて垂れ下がった。

その光景に、二人は顔を合わせる。

しかし、反対側は何も変わらない。

片腕が垂れ下がった事で、リヴィアの体勢がやや下向きになる。

灰色の長髪も反動で垂れ下がると、ビクターが彼女の半顔を捉えた。

半眼で意識を失っている様子に背筋が凍る。




「死ぬな!」




ビクターは反射的に彼女の顔を持ち上げ、自分に向ける。




「戻ってこいリヴィア!」




その顔は青い液体に滑り、がくんと項垂れる。

そして明らかになった。

手や体に付着した青い液体は、この地に棲息する生き物達の血だと。

ビクターは怒りに血を握ると、ライフルを構えた。




「どけジェド!」



「おま……何やってんだよ!?」



「こんなんで間に合うか! ぶっ放してやる!」



「当たったらどうすんだよ! 仕舞え!」



「頭下げろ!」



「落ち着けよ!」




………


……










大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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