(6)
※次話より リヴィアの回想に入る為
救出シーンをここで区切ります
約1330字でお送りします
ジェドが手前の木を掴み、軽々よじ登るとナイフを再び握る。
最悪な事に、リヴィアの傍に進めば進むほど荊が太くなり、彼女を締め付けているようだ。
ジェドは歯を鳴らし、怒りにナイフの手が震える。
「切れるか!?」
「切るっ!」
必ず救ってみせる。
ナイフを扱う手は、勝手に速まっていた。
こんなに騒ぎ立てているというのに、リヴィアは微動だにしなければ声もない。
別れる際、やはり無理にでも一緒にいてやるべきだった。
ナイフをどんなに振り下ろしても浅くしか刺さらない。
手が痙攣している上、目前の変わり果てた彼女に恐怖している。
去り際の、寂しくありながらも微笑む姿が焼き付いている。
綺麗だと見惚れたために記憶しているのではない。
力が無いくせに、笑ったのだ。
グリフィンよりも、確実に小さくて弱い自分達に。
何ができるかも提示できないような自分達に。
島で大人が無理に笑ったり、体を張って守ってくれたように、彼女もまた、自分達に少しばかり心を開いてそうしてくれたのだ。
彼女がくれた些細な微笑みは、見かけだけの美しさではない。
彼女はまだ、本当の意味で呪われてなどいない。
空島の者として、また一種の守る者として、揺れる心の灯の美を保ち続けている。
ナイフでは間に合わないと見たジェドは、槍を引き抜いた。
最短の長さにしたまま、荊を潰すように突き刺し続ける。
削られた粉が降り注ぐ中、ビクターも木に登り始めた。
フィオが足を持ち上げた勢いで、素早くジェドに追いつくと、幹を伝ってリヴィアの背後に着いた。
荊は彼女の胴体を一周し、更に上の枝に絡んでいる。
目を凝らすと、真上に伸びていくにつれて細くなっていた。
ビクターはそこを重点的に切り始める。
フィオが両手を握りしめながら見上げていると、シェナの苦しむ声が聞こえた。
振り返ると、彼女の胸から腹にかけて負った傷は黒ずみ、皮膚は紫がかっている。
フィオはその異変を見るなり、彼女を素早く負ぶった。
「先に行くわ!」
頭上の二人に告げ、足元の斧を跳び越えては森の出口まで全力で駆けた。
「しっかりしろリヴィア!
呪いなんかに負けんな!」
ジェドは、未だ身動きしない彼女に必死で叫ぶ。
彼女の目からは、あの特有の青い光が失われていた。
ジェドから見た彼女の半顔は、岩肌に覆われている。
そこに埋まったような目から放たれていた真っ赤な光すら、ない。
「おい!」
ジェドは怒鳴りながら、骨ばった体を激しく揺さぶる。
すると、左腕がするりと抜けて垂れ下がった。
その光景に、二人は顔を合わせる。
しかし、反対側は何も変わらない。
片腕が垂れ下がった事で、リヴィアの体勢がやや下向きになる。
灰色の長髪も反動で垂れ下がると、ビクターが彼女の半顔を捉えた。
半眼で意識を失っている様子に背筋が凍る。
「死ぬな!」
ビクターは反射的に彼女の顔を持ち上げ、自分に向ける。
「戻ってこいリヴィア!」
その顔は青い液体に滑り、がくんと項垂れる。
そして明らかになった。
手や体に付着した青い液体は、この地に棲息する生き物達の血だと。
ビクターは怒りに血を握ると、ライフルを構えた。
「どけジェド!」
「おま……何やってんだよ!?」
「こんなんで間に合うか! ぶっ放してやる!」
「当たったらどうすんだよ! 仕舞え!」
「頭下げろ!」
「落ち着けよ!」
………
……
…
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




