(5)
「っ!? なっ! なんだこれ!?」
信じられない事に、圧しかかってこられた獣よりはるかに重い。
どんなに力を込めても、地面から僅か数ミリほどしか持ち上がらないではないか。
「このっ……!
どうっ……なっ……てっ……やがっ!」
疲労の影響だけではない。
これは明らかに、島の大人すら持ち上げられないだろう。
ジェドは想像しながら柄を手放した。
その時、ほんの僅かな高さから落としただけだというのに、それは地面に減り込み亀裂が走る。
皆はその現象に口をあんぐりさせた。
あんなにか細いリヴィアだが、かなりの剛力だというのか。
「どこにいるの!」
フィオは尚も叫び続けるが、やはり返事がない。
「ダメだ、一旦行くぞ!」
ビクターがシェナの治療を急いだ時だった。
彼の頭上から細く液体が零れ落ち、髪、額、鼻筋と伝う。
その光景と感触に、向かい合っていたジェドと共に虫唾が走る。
「……それ……何だ……」
ビクターの顔を伝った液体に、ジェドは恐る恐る指先で触れた。
青色でベタベタした手触りをしたそれは、続いて、ジェドの腕にコップの水をひっくり返したように多く流れ落ちる。
二人は悲鳴を上げ、必死に振り払いながら激しく真上を向く。
フィオも驚愕しながら、その声と動作に釣られた。
黒く太い荊が木の幹を何周にも巻き付き、そのまま三人の頭上に伸びる枯れ枝に沿って絡んでいる。
荊を目で追い続けると、何やら物体を吊るしているように見えた。
認識できないそれに、皆は不気味に眉を寄せる。
フィオが背伸びをして目を凝らすと青い液体が再び、雫が滴るが如く頬に落ちて伝った。
目は、みるみる見開いていく。
「……リヴィア!?」
皆が彼女の姿形を確実に捉えるや否や、ビクターはシェナを地面に下ろした。
忙しなく幹を調べ始めると、太い荊が彼女の胴体と両腕に巻き付き、俯せに吊るされているではないか。
「切れ!」
ビクターが即刻ナイフを抜くと、後の二人も加わり、懸命に荊を切りつけていく。
しかしその太さと固さには敵わない。
舌打ちしたビクターは、更に周りを観察していくと
「登るっ!」
ジェドがそう言ってナイフを咥え、ビクターに担ぐよう手で促した。
ビクターは屈み、その両肩にジェドが乗っかる。
フィオが横から互いを支えた。
そのまま崩れないよう、ビクターは慎重に立ち上がる。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




