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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第七話 悲痛 
78/133

(5)




 「っ!? なっ! なんだこれ!?」




信じられない事に、圧しかかってこられた獣よりはるかに重い。

どんなに力を込めても、地面から僅か数ミリほどしか持ち上がらないではないか。




「このっ……!

どうっ……なっ……てっ……やがっ!」




疲労の影響だけではない。

これは明らかに、島の大人すら持ち上げられないだろう。

ジェドは想像しながら柄を手放した。

その時、ほんの僅かな高さから落としただけだというのに、それは地面に減り込み亀裂が走る。

皆はその現象に口をあんぐりさせた。

あんなにか細いリヴィアだが、かなりの剛力だというのか。




「どこにいるの!」




フィオは尚も叫び続けるが、やはり返事がない。




「ダメだ、一旦行くぞ!」




ビクターがシェナの治療を急いだ時だった。

彼の頭上から細く液体が零れ落ち、髪、額、鼻筋と伝う。

その光景と感触に、向かい合っていたジェドと共に虫唾が走る。




「……それ……何だ……」




ビクターの顔を伝った液体に、ジェドは恐る恐る指先で触れた。

青色でベタベタした手触りをしたそれは、続いて、ジェドの腕にコップの水をひっくり返したように多く流れ落ちる。

二人は悲鳴を上げ、必死に振り払いながら激しく真上を向く。

フィオも驚愕しながら、その声と動作に釣られた。






 黒く太い荊が木の幹を何周にも巻き付き、そのまま三人の頭上に伸びる枯れ枝に沿って絡んでいる。

荊を目で追い続けると、何やら物体を吊るしているように見えた。

認識できないそれに、皆は不気味に眉を寄せる。

フィオが背伸びをして目を凝らすと青い液体が再び、雫が滴るが如く頬に落ちて伝った。

目は、みるみる見開いていく。




「……リヴィア!?」




皆が彼女の姿形を確実に捉えるや否や、ビクターはシェナを地面に下ろした。

忙しなく幹を調べ始めると、太い荊が彼女の胴体と両腕に巻き付き、俯せに吊るされているではないか。




「切れ!」




ビクターが即刻ナイフを抜くと、後の二人も加わり、懸命に荊を切りつけていく。

しかしその太さと固さには敵わない。

舌打ちしたビクターは、更に周りを観察していくと




「登るっ!」




ジェドがそう言ってナイフを咥え、ビクターに担ぐよう手で促した。

ビクターは屈み、その両肩にジェドが乗っかる。

フィオが横から互いを支えた。

そのまま崩れないよう、ビクターは慎重に立ち上がる。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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