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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第七話 悲痛 
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(4) 




 ジェドは耳と鼻に集中した。

滝壷であれば、水の流れやその匂いがするだろうと探り始める。

けれども羽虫の音や、先程の獣の声が再び遠くから聞こえ、なかなか求めている音が聞こえない。

少々苛立ちながら頭を振ると、今度は景色に目を這わす。

暗くてよく見えないが、必ず明るいところが見つかるだろう。

否、見つけて見せる。

そう言い聞かせながら、懸命に葉や枝の隙間の隅々まで調べ続けた。






 そしてようやく、遠くの方で淡い白い光が差し込むのを捉えた。

ジェドはそこを指差し、皆で先を急ぐ。

その時、彼は何かに大きく躓き、転倒した。




 不意に立ち止まるビクターに背後のフィオが衝突し、危うく皆が転びかける。

ビクターの背中から落ちかけたシェナをフィオが慌てて支えた時、胸が止まりかけた。




「シェナ!?」




とうとう何の反応もしなくなった彼女の呼吸を確かめようと、フィオは顔に耳を近付ける。

弱々しく細い息を立てているが、今にも聞こえなくなるような気がしてならず、ビクターと共に一気に顔を青褪めた。




 ビクターは先を急ごうと、ジェドの背後を横切り森の出口を抜けようとした。

だがまたしても、足止めを食らう。

ジェドが躓いたものについ、目が留まった。

見覚えのある銀色の長い柄のようなものが、もの寂しく横たわっている




「これは……」




ビクターが呟く傍ら、ジェドはそれに指先だけでそっと触れてみた。

冷たくて太いそれには、鱗の模様が綺麗に並んでいる。

途中には群青色の石が埋め込まれ、先を辿ると、青と黒をした茂みに隠れてしまっていた。




「斧だ!」




ビクターが、リヴィアが振り下ろしたもので間違いないと声を上げる。

しかし、何故ここにあるのだろう。




「リヴィア!?」




嫌な予感がしてならず、フィオが焦りに声を放つ。

しかし返事は無い。

この辺りにいるのではないかと、三人は草陰や乱立する木の向こうに向かって、彼女を呼び続ける。




 落としたままいなくなるなど、ありえるのだろうか。

ジェドは顔を顰めながら、これまでの事を振り返る。

自分達が化け物に襲撃されている傍ら、彼女の身にも何か起きていたのか。

しかし、この場所は通常で考えると、最後に彼女が立ち去った方角とは真逆の位置にあたる。

ジェドはますます疑問を抱きながら、その斧を拾い上げようとした。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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