(22)
ジェドが立ち上がると同時に槍を伸ばすと、先頭の敵を大きく薙ぎ払った。
後の敵陣にそれが衝突すると、群は一気に倒れていく。
敵が表を上げると、ローブの奥に佇む赤い眼光を強め、歯笛のように空気を漏らす音で威嚇し、更に襲いかかる。
ジェドが間一髪横切る鎌を躱すと、透かさず敵の顔を蹴っては言い放った。
「走るぞ!」
森に引き返そうと言うが、その隙が生まれない。
近くにいたフィオが槍を握り、そのまま脇まで迫っていた一体の顔を捉えると、恐怖に目を閉じたまま力いっぱいに振り下ろした。
黒く、温い血しぶきが上がると、悶える声に鼓膜が破れそうになる。
「フィオ!?」
「嘘だろ……」
彼女は素早く接近する敵に見事、攻撃を命中させ、シェナとジェドが目を剥いた。
しかしフィオはそれどころではなく、返り血と自分がした事に震え、荒い息を立てている。
そこへ一発、銃声が轟いた。
シェナに飛びかかろうとしていた一体が悲鳴を上げて崩落する。
衝撃と共に散る黒い血に、シェナが絶叫を上げた。
「行け! 止まるな」
ビクターが急かすところ、錆びた鉄の矢が数本、視界を横切る。
彼の銃撃は、鎌を持つ一体の手を放っていた。
構造が分からないその手からは白煙が上り、宙に消えていく。
武器の音を雑に立てながら、敵の群はより一層襲撃にかかる。
ジェドがフィオの槍を手早く回収して渡すと、フィオとシェナの手を取り、森の中へ駆けた。
ビクターはライフルを背に、再び槍に持ち替えて三人を追う。
入れ替わりに、一本の矢が彼の元居た幹を射止めた。
「ビクター!」
シェナの声が瞬時、空気に振動を生む。
一時的に吹いた風は、敵の群に真正面から襲いかかり、みるみる足止めを食らわせた。
その隙にビクターは三人に追いつく。
「二手に別れる! 絶対蛇行すんな!」
風が味方をするのも束の間。
じきに迫る敵の数は四体。
赤い眼光を直視すれば視界が眩み、目の奥に痛みまで伴う。
「でも!」
フィオが不安に叫んだ。
視界が悪い森の中で別行動をし、再び出会えるのか。
しかし、迷ってなどいられない。
ジェドがフィオの手を取ると、方向転換する。
「絶対落ち合え!」
ビクターはシェナを引き、後の二人に返事をする間も無く、反対側の森の中へ走り去った。
大海の冒険者~空島の伝説~
後に続く
大海の冒険者~人魚の伝説~
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




