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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第六話 空島
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(18)




 「なぁリヴィア……もう一人で戦うな」




先程まで怒りを握っていたジェドが、そっと投げかける。

これまでの彼女を見て、何となく苦しんでいるのを、どうしてよいか迷っているのを、肌で感じ取っていた。




 ジェドが指先で地面を叩きながら、ずっと俯いたままのリヴィアを眺めている。

笑っているのか、泣いているのか、痛みに苦しんで震えているのか分からないが、何か言って欲しかった。




「大体、あんな奴に大事なもん渡すなよ」




続けざまに飛ぶジェドの声に、リヴィアは少し顔を上げる。




「仲間、いんだろ? 会いてぇだろ?」




彼女の弱り切った細い手に、力が入る。

彼の言う通り、仲間がいた。

すっかり容姿が豹変してしまい、また、そのまま消されてしまった愛しい存在。

こうして身を潜め、僅かながらに力を残していても何もできない自分が、憎たらしい上に醜く、助けようにも先に負の感情に呑まれそうで怖い。

それすら言葉にできず、おもむろに震える手を口元にやる。




「取り返そうぜ……もう一人じゃねぇんだから」




彼の言葉は温かい。

温かいのだが、同時に逆撫でしてくる。

リヴィアは歪む心情を滾らせながら睨んだ。




「人間に何ができるっ……」




フィオの顔が更に曇る。

先程から、震えてばかりいるリヴィアの黒い背中を見ていた。

そこからは、怒りよりも悲しみが大きく滲み出ているように感じた。

素直でない様子に、首を小さく傾げる。

周囲の枯れゆく森を眺めては、その情景をそのまま彼女の姿に重ねた。

このままでは彼女自身が壊れてしまい、魔女にされるがままになるのではないかと、心で慌てる。




「お前達は来た……もう、奴の手の内だ……

今に闇に落ちるだろう……」




震える声は低く、裏で涙を呑むように擦れていた。

シェナは肩を下ろし、じっと聞いている。

自分もまた、言葉をかけたい。

しかし、ビクターやジェドのようにいいものが浮かばない。

もどかしさが小さな指先に集まり、触れ合う。




「彼のように消されるっ……」




リヴィアは、過るグリフィンの影に、怒りと悲しみに満ちた目を震わせる。

そこへ、フィオが口を開いた。




「私達にできる事は、今に分かるわ」




そう言ってジェドに本を寄越すよう、手を伸ばす。

リヴィアはそれを見るなり、表情が一変した。




「グリフィンもこの本も、この島を助ける為に色々教えてくれた」




リヴィアは目を見張り、それに釘付けになる。




「……どうしてそれを」




彼女の骨ばった指が、自然と本に触れようとする。




「私が……捨てた……」




リヴィアの声は高く、優しい囁きに変わっていた。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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