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*完結* 大海の冒険者~空島の伝説~  作者: terra.
第六話 空島
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(17)




 睨み合うビクターとリヴィアの影が、激しく青に揺れる。

ジェドはビクターの横顔から、リヴィアの態度にしつこさを感じているのを捉えた。

それを表に出さず、冷静に話そうと努めている事も。

それを心で理解しながら、警戒心に満ちたリヴィアに向く。




 すると彼女は、鋭利な目を緩めるとあっさりシェナの隣に腰を据えた。

シェナは、リヴィアの目深に被るローブを少しばかり覗く。

髪で厚く覆われた隙間から、群青色の目に影が落ち、すっかり昏い瞳に変わっているのが見えた。




 「……お前達は、命を捧げに来たのか」




リヴィアの冷ややかな発言に、四人は顔だけ驚く事しかできなかった。




「悪い事は言わん……私が手を打つ……

だから、帰りなさい……」




四人が何かを言う前に更に続けた彼女は、これまでの物言いと少し違う。

言い終わりは寂寥を含むが、柔らかく、優しさを感じた。

そして今、瞼を閉じてしまっている。




「嫌っ!」



「手を打つって、どういう意味?」




シェナとフィオの咄嗟の言葉に、リヴィアは虚空で冷たく佇む体を溜め息に揺らす。




「助けに来たなどと戯言は要らん……」




誰もが耳を疑った。

ジェドは無言を維持するも、不愉快に小さく歯を鳴らす。

彼の握る拳が微かに震えた時、フィオがそれを見兼ね、彼に落ち着けと言わんばかりに首を横に振る。

彼の拳は、地面に力無く叩きつけられた。

そこへビクターが、肩に立てかけていた槍の麓に視線を落とし、暫し考えてから口を開く。




「拗れたな……

君は多分、そんなじゃなかったと思うけど?」




リヴィアは彼を射抜くような眼差しを向けると、青い眼光を灯し始める。

こうも容易く乱れてしまう己にもまた、独り苛立ち、ひっそりと悲しみに暮れていた。




「この島を何とかしねぇ限り、俺達の世界も危ない。

君はどうやら、大事な事を忘れちまってるようだから教えてやる」




その言葉に、彼女は目を一層鋭くさせる。

随分と偉そうな口振りだが、これもまた、先に来たグリフィンと似たものを感じてならない。




「自分の居場所や仲間が危険に晒されっと、どうにかしたいって思うもんなんだよ。

それがどんな相手であろうとな」




リヴィアは静かに嘲笑を浮かべる。

端に座るシェナが、不安気な表情のまま見守っていた。

態度が大きく変化する彼女は、本当はどういう存在なのだろうか。

先程の優しい声をしていた時とは、今は別人になっている。




「グリフィンに何しでかしたか知らねぇけどよう、君も油断すんな。

同じ事は俺達には効かない」




言い終えるとビクターは悪戯な笑みを浮かべた。

途端、リヴィアの眼光はふわりと消え、読み取り難い、硬い表情になる。









大海の冒険者~空島の伝説~


後に続く

大海の冒険者~人魚の伝説~

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって完全閉幕します




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